歩道に野鳥のものと思われる,小さな卵が落ちていました。
2cmほどの大きさで,白い地に赤褐色の斑点があります。
小さな黒い糞がこびり付いています。
そばにサクラの木があるものの,枝の間に巣は見あたりませんでした。
こんな卵を,遠い記憶の向こうで手にとったことがあるような気がします。
世界文化社「日本の野鳥 巣と卵図鑑」(1999年)で調べてみると,これはツバメの卵でした。
同書によると,ツバメの卵の特徴について次のように書いてあります。
長径約1.9cm,短径約1.4cm。白色の地に赤褐色や淡紫色の斑がある。
同じく,ツバメの繁殖について次のように書いてありました,
九州以北,北海道まで繁殖する。人口の建造物を利用して営巣する鳥で,4~7月頃,人家の軒下などに泥と枯れ草の茎などを混ぜ合わせてお椀のような巣を作る。古巣を再利用することが多い。小さな斑のある白色の卵を4~6個産み,主に雌が約14~16日間抱卵する。孵化後は約17~22日で巣立つ。餌としてハチ,カ,ガなど飛翔中の虫を捕らえる。
周りに巣などないこんな場所に,何故ツバメの卵が落ちていたのかは分かりません。
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毎朝横を通るたびに,ハナズオウの花が豆へと変化してゆきます。
[写真4]つぼみ(2008年4月13日)
[写真3]花(2008年4月27日)
[写真2]子房がふくらみ始めた花(2008年5月2日)
[写真1]花弁がほとんど落ちた状態(2008年5月8日)
「朝日百科 植物の世界」でハナズオウの頁をみると,マメ科ではなくジャケツイバラ科になっていました。
同書のマメ科の分類についての解説を読んでみると,次のように書いてありました。
このシリーズでは,クロンキストの分類体系に従い,マメ類を3科からなるマメ目としている。花弁よりも長い雄しべと雌しべをもつ放射相称花をつけるネムノキ科,旗弁(きべん)が内側にあるジャケツイバラ科,そして,蝶形花(ちょうけいか)をつけるマメ科だが,これらをそれぞれ亜科にして,マメ科にまとめることも多い。
マメ科植物の祖先は,形のよく似たバラ目のマメモドキ科やクリソバラヌス科と共通すると考える研究者が多い。最近では,含有成分,胚(はい)発生,種子の特徴などからムクロジ目との関連も指摘されている。3科のなかでは,ジャケツイバラ科が最も原始的と考えられ,白亜紀(約1億4300万~6500万年前)後期の地層から花粉と木材の化石が発見されている。ネムノキ科植物の化石は白亜紀後期と第三紀(約6500万~170万年前)初期に,マメ科植物の化石はさらに新しい時期に現れる。マメ科もネムノキ科もジャケツイバラ科から進化したと考えられる。原始的な現生種スウァルトジア属Swartziaは,マメ科とジャケツイバラ科との中間に位置する。マメ目の祖先は,約9000万~7000万年前に現在の熱帯降雨林に似た環境のもとで生まれ,乾燥地や暖帯,温帯へと生育地を広げながら,それぞれの環境に適応して進化してきたのだろう。
たしかに花はマメ科の蝶形花とすこし異なります。
旗弁が翼弁より内側にあり,旗弁と翼弁が後方に反り返っています。
日本へは江戸時代に渡来し,文人好みとされていたそうです。
私は,花が枝や幹にへばり付いたように密集して咲いているので,もうすこし花柄が長ければきれいだろうにと思うのですが。
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ヒメウズの実が割れて種が見えています。[写真1]
[写真2]は,割れる前の実。
3個の袋果がついていますが,袋果が4個ついているものもありました。
ヒメウズの雌しべの数は一定していないので,袋果の数にもばらつきがあります。
[写真3][写真4]はヒメウズの花。
一見,白い花びらのように見えるものは萼です。
萼の内側で黄色い筒状になったものが花びらです。
花の構造を調べようと花を探したのですが,さすがにもう咲いていませんでした。
[写真5]は,昨年3月2日に撮った花の写真です。
触っていたら萼も花びらもパラパラと取れてしまい,雄しべ,雌しべがよく見えます。
散る間際だったのでしょうか。
「朝日百科 植物の世界」には,ヒメウズについて次のように書いてありました。
ヒメウズSemiaquilegia adoxidesは1属1種で,日本の関東地方以西,朝鮮半島,中国の暖帯の道端や石垣の間などに見られる。トリカブト(鳥頭うず)に似ているが,小型なので「姫鳥頭ひめうず」。属名は,オダマキに似るが小さくて花が目立たないことにちなむ。
春,塊茎(かいけい)から細く分岐する茎を伸ばし,先に直径約5ミリの白い花を数個つける。初夏,果実をつけると地上部は枯れる。花弁は短い柄があり,基部は筒状で,嚢状(のうじょう)の短い距がある。距のないアクィレギア・エカルカラタと比べると,ヒメウズの花は非常に小さく,輪生状態は不完全で,雄しべ,雌しべが退化した膜状の鱗片や雌しべの数は少なく,数も一定していない。
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スミレの実が割れ,種子が見えています。[写真1]
スミレの実は,種子が未熟なうちは下向きになっていますが,熟するにしたがい上向きとなります。
[写真4]は,花から実になりかけの頃。(2008年5月2日)
[写真3]は,裂開寸前。(2008年5月17日)
果実は割れると,3つの果皮片に分かれます。
果皮片は舟形をしていて堅く,なかに2,3列の種子が入っています。
ぎっしりと入った種子はつまむと簡単に抜けそうですが,果皮片のはさむ力は以外に強く,ピンセットで引っぱっても引き抜けません。
[写真3]の実をテーブルの上に放置して3時間後にみると,実が開き全ての種子がはじき飛ばされていました。
果実は乾燥により収縮し,種子を弾き飛ばすようです。
スミレの実が種子をはじき飛ばすメカニズムについて,中西弘樹著「種子(たね)はひろがる」(1994年)には次のように書いてありました。
種子が飛散するのはボート型の果皮片の両側が内側に湾曲し,その圧力で種子をはじき飛ばすからである。果皮片が湾曲するのは,果皮片が構造の異なった3層の細胞群からなり,これらの異なった乾燥化によって外側の層がより収縮をおこすためである。種子を強く押すために,果皮は種子が熟す頃にはかなり堅く,丈夫になっている。
スミレの種子には,エライオソームと呼ばれる,アリが好む物質がくっついています。[写真2}
エライオソームについて,同書には次のように書いてありました。
アリを誘引する物質を含んだ種子の付属体は,カルンクルcaruncle,種沈(しゅちん)あるいは種阜(しゅふ)とよばれ,珠皮(しゅひ)に由来し,種子が発生時に胎座(たいざ)に付着していたへそと呼ばれる部分にできる。一方,果実がアリに運ばれるものは,果皮あるいは花床に由来する付属体が果実にでき,同じようにアリを誘引する物質が含まれている。したがって,これらの付属体を総称してエライオソームelaiosomeとよんでいる。
エライオソームの成分の化学的分析は一部の植物で行われている。アリを誘引する主成分としてオレイン酸,リノール酸,パルミチン酸,ステアリン酸などいくつかの脂肪酸が知られており,その他水溶性成分としてグルタミン酸,アラニン,ロイシンなどのアミノ酸やフルクトース(果糖),グルコース(ブドウ糖),ショ糖(スクロース)などの糖が検出されている。
スミレ属の散布形式については,純粋アリ散布型,二重散布型(自動散布+アリ散布),自動散布型の3種類があるとされています。
スミレの散布形式は二重散布型となります。
種子は実からはじき飛ばされた後に,アリによってさらに運ばれます。
スミレの二重散布型について,同書には次のように書いてありました。
二重散布型は種子がはじき飛ばされた後,アリによって散布されるものをいう。このタイプのスミレは果梗が一般に長く。蒴果の位置は植物体から抜き出る。蒴果の壁は堅く,木質となっており,食害を防いでいる。種子が熟すと果実は上向き,三つの果皮片に分かれる。果皮片は堅く,舟型をしており,その中には2,3列の種子が入っている。果皮片のはさむ力は大きく,アリがそれを見つけても運び去ることはできない。やがて種子は次々に飛ばされ,その距離は2~5メートルに達する。種子は一般に小さく,光沢があり,小さいエライオソームが付着している。したがって,はじき飛ばされた後にアリに運ばれる。アオイスミレとエゾアオイスミレを除くすべての日本産のスミレは二重散布型であると考えられる。
昨夜は,雨が激しく降る音で目が覚めてしまいました。
一夜あけた今朝,南禅寺の石段にできた水溜りのなかに,イシガメがいました。[写真1]
じっと気持ちよさそうに,体を水に浸しています。
イシガメはクサガメ,スッポンとともに日本のカメの代表のようなカメです。
しかし近年は状況が変わってきているようですね。
(財)日本自然保護協会が,2003年7~8月に「NACS-J自然しらべ2003~日本全国カメさがし~」として実施した調査によると,全国46都道府県・802箇所から寄せられた5,966頭の情報のうち,6割以上(3,708頭)が外来種であるミシシッピアカミミガメでした。
続いてクサガメ1,257頭,ニホンイシガメ590頭,スッポン135頭となっています。
ニホンイシガメは目撃例の1割にもみたない数字です。
イシガメは4種に分けられ,単にイシガメという場合はニホンイシガメM.haponicaをさします。
ニホンイシガメは本州,四国,九州および周辺の島々に分布し,日本固有種です。
日本には他に,ミナミイシガメM.muticaがトカラ列島,八重山列島に分布するそうです。
平凡社「世界大百科事典」には,ニホンイシガメについて次のように書いてありました。
ニホンイシガメM.japonicaは単にイシガメということもあり,子ガメはゼニガメ(銭亀)と呼ばれてペットにされる。日本特産で本州,四国,九州および周辺の島々に分布し,池沼や渓流にすんでいる。甲長13~18cm,背甲の後縁は鋸歯状をしており若い個体ほど著しい。産卵期は6~7月ごろで,雌は水辺の軟らかい土に,後肢で深さ15cmほどのL字型の穴を掘り,4~10個ほどの楕円形の卵を産む。子ガメは2ヵ月ほどで孵化する。10月末から4月ごろまで水中の泥や落葉の中で冬眠する。なお,背甲に緑藻類が密生したものをミノガメ(蓑亀)と呼び,古くから吉兆として珍重される。
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テーブルの上に変な虫が。
気づいた時にはテーブルの上で体をくねらせていました。
家族の誰かが知らないうちに,服に付けて持ち込んだようです。
背中には大きな繭があり,苦しそうに身をくねらせています。
何に寄生されているのでしょうか。
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ムラサキケマンの種子。[写真1]
ムラサキケマンの種子にも,スミレの種子と同じようにエライオソームが付いています。(黒い種子についている白い部分)
エライオソームとはアリを誘引する物質を含む付属体のことで,甘い餌でアリに種子散布してもらおうという植物の生き残り戦略のひとつです。
エライオソームについて,中西弘樹著「種子(たね)はひろがる」(1994年)には次のように書いてありました。
スミレやキケマンのようにエライオソームとよばれるアリを誘引する物質を含んだ付属体がついた種子をつくる植物がある。このような種子が落下するとアリがすぐに見つけ,それを巣に運ぶ。運ばれた種子は巣の中でエライオソームの部分だけが食べられ,その後は,アリの種類によって異なるが巣の中のごみ捨て場に捨てられたり,巣の外に土といっしょにほうり出されたりする。いずれにしても種子は発芽能力を失うことなく,植物にとっては種子が運ばれることになる。アリの方でも栄養に富んだエライオソームを獲得できるので,双方が利益を得ることになり,アリとアリ散布植物はいわば相利共生の関係にあるといえる。これが真のアリ散布myrmecochoryであり,この方法で種子が散布される植物はアリ散布植物myrmecochoreとよばれ,広く分布している。
ここで「これが真のアリ散布であり」としているのは,アリによる散布にはエライオソームによるものの他に,収穫アリによる散布や甘い果肉をもつ種子がアリによって運ばれるケースがあるためです。
ムラサキケマンの種子散布は,純粋なアリ散布ではなく自動散布をあわせておこなう二重散布型です。
前著には,ムラサキケマンのアリ散布について次のように書いてありました。
ケシ科のキケマン属もアリ散布植物であることが知られているが,私はこの属の散布の適応と捕食者に対する防御の面からその形態と生態について調べたことがある。その結果,はっきり二重散布(アリ散布+自動散布)型,栄養繁殖+アリ散布型,純粋アリ散布型の3グループに分けられることがわかった。
二重散布型はムラサキケマン1種で,多くのスミレ属植物で見られるように自動散布された後に,アリによって散布される。自動散布は種子を広くばらまくことによって種子捕食者を避ける効果があると考えられる。この型のエライオソームは小さく,種子は平滑で,種子が飛散するのに適している。種子生産量はふつうで,托葉(たくよう)は最も大きく,小果梗(しょうかこう)は長い。托葉が大きく,小果梗が長いことは捕食者に対する防御に効果的であると考えられる。
自動散布とは,外からの作用を受けて散布する受動散布に対するもので,果実が熟すると裂開して種子を飛ばす散布のしかたです。機械的散布ともいわれます。
ムラサキケマンの果実は熟するとはじけて,果実の壁が内側に巻き込まれます。[写真3]
この仕組みはツリフネソウの実がはじける仕組みと同じです。
前著ではツリフネソウ属の果実がはじける仕組みについて,次のように書いてありました。
ツリフネソウ属の果実の壁は2~3層からなり,内側は小さい厚壁(こうへき)細胞が並んでいるが,外側は細胞壁が薄く,大型の細胞からなる。果実の壁は膨圧(ぼうあつ)によって突然内側に巻き込み5つの心皮に分かれ,その時の力で種子が飛んでいく。
5月28日にアカタテハが羽化しました。[写真1][写真2]
なかなか翅を開いてくれないので,[写真2]は中途半端な写真になっています。
以前に撮ったこちらの写真の方が表側の斑紋がよくわかります。→2007年12月08日
タテハチョウのなかまは前あしが退化し,4本あしに見えます。[写真3]
ピンセットで前あしを引き出してどうなっているか観察すればよかったなと,今思っているのですが,既に外に離してしまったので観察できません。
次の機会にしたいと思います。
幼虫は5月8日に採取(4齢?)。[写真5]
食草のカラムシを巻いて中に隠れていました。[写真4]
蛹になったのは5月20日でした。[写真6]
羽化の連続写真→2006年6月15日
アカタテハの幼虫について,学習研究社「日本産幼虫図鑑」(2005年)には次のように書いてありました。
(終齢幼虫の大きさ)40mm内外。(終齢幼虫の齢数)5齢。(発生回数)南西諸島では周年発生。九州以北では成虫越冬で5~11月に2~4回発生。
特徴:地色は黒褐色で,背面の黄色の模様が顕著,黒褐色の背線は明瞭。棘状突起の数は044・7,7,7.7.7.7.7.7.2.2=68本。幼虫は造巣性が強く,若齢は葉面に吐糸して隠れ家とし,中齢以降は葉柄に噛み傷をつけた後,葉を内側に折りたたんで柏餅形の巣を作る。巣とした葉を食べ,次々に新巣を作っていく。蛹化は食痕のない新巣中でなされることが多い。卵は1個ずつ食草の新芽や若葉表に産みつけられる。
食物:イラクサ科カラムシ,ヤブマオ,イラクサほか,ニレ科ケヤキ,ハルニレほか。ヤナギ科,アサ科の記録もある。
分布:日本全土。本州中部の発生域は標高0~1500m。移動性については未詳。
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