1月ほど前からベランダにかけた巣箱で,シジュウカラが子育てをしています。
はじめてこの巣箱にシジュウカラが巣を作ったのは10年ほど前になります。
それから巣箱は利用されることなく月日がたち,今回がようやく2回目の巣作りです。
なぜ10年もの間,この巣箱が利用されなかったのでしょうか。
今回調べて分かったのですが,巣箱の中の巣をそのままにしておいたのがよくなかったようです。
親鳥の巣作りの手間を省いてやろうという親切心からそのままにしておいたのですが,巣箱の中の巣は,利用されたあとはきれい片づけなければならないそうです。
巣をそのままにしていたら今も巣作りされることはなかったのですが,たまたま2年前の夏休みに,子供たちが巣箱から巣を取り出しました。
それが今回の巣作りに結びついたのだと思います。
●今までの経過は次のとおりです。
・5月初旬に,苔をくわえて巣箱に出入りするシジュウカラを目撃。
・5月7日に巣箱の蓋をあけて中を確認すると,親鳥の姿はなく,巣には卵が2個あります。[写真1]
・翌日,卵が1個増えています。親鳥の姿はありません。[写真2]
・5月11日には,卵は5個に増えています。[写真3]
卵は一度には産まないのですね。親鳥の姿はありません。卵を温めなくてよいのでしょうか。
・数日後,巣箱の蓋をあけると,親鳥がいてびっくり。すぐ蓋を閉めました。
シャーという音を出して威嚇しています。(鳴き声ではなく,広げた羽が巣箱の壁をこすった音かもしれません。)
これ以降,巣箱の蓋を開けるのは控えました。
親鳥が出入りする姿も見かけません。
・5月27日,親鳥が餌をくわえて頻繁に出入りするようになりました。
巣箱の蓋を開けてみると,生まれたばかりの雛がいます。[写真4](写真で確認してみると雛が8頭。かえっていない卵が1個。)
3頭は黄色い口を開けて餌をねだりますが,他の雛は動きません。
シジュウカラの抱卵日数は13日前後だそうです。最初の卵を産んでからは20日ほど経っていますが,抱卵しだしてからはそのくらいの日数だと思います。
・5月28日,昨日動かなかった雛も,元気に口をあけています。[写真5]
・5月30日,体が黒っぽく感じます。[写真6]
羽根が生え出したようです。
・6月1日,巣箱の蓋を開けても,雛たちは口を開けず,身動きひとつしません。
体は大きくなっているのですが,元気がないように見え,親鳥の姿もあまり見かけません。
・6月2日,一日中雨で,親鳥の姿を見ません。雛が心配です。
・6月3日,朝から親鳥が頻繁に餌を運んでいます。
親鳥が去ったあと,巣箱からはまだ雛の鳴き声がにぎやかに聞こえでいます。
ところが,巣箱の蓋をあけて中をのぞくと,雛たちはぴたっと動きをとめて声をだしません。[写真7]
生まれたばかりのときは,本能として口をあけて餌を催促していたものが,今は外敵から身をまもるために気配を消しています。これも本能でしょうか。
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シジュウカラのつがい。
餌をくわえて来ても巣箱へ直接入らず,一旦近くの電線にとまって辺りをうかがいます。
シジュウカラは胸にネクタイのような黒い模様がありますが,雌の方が雄よりも模様の幅が狭く,雄雌を見分ける際のポイントとなっています。
[写真1]左が雄,右が雌。
保育社「原色日本鳥類図鑑」(1989年)には,シジュウカラについて次のように書いてありました。
形態 頭と喉漆黒で頬の白いのが目立つ活発な鳥。嘴峰9~11mm,翼長65~70mm,尾長56~66mm,?蹠17~22mm,頭上黒,背は暗緑色,腰以下灰青色。頬は白い。下面は腮,喉以下は黒いがそれ以下は白く,腹の中央には幅広い黒帯が縦走している。♀はこの黒帯の幅が少しせまい。
生態 平地から低山地にかけ各地にきわめて普通に繁殖す。秋,冬には小群をなして市街地にも漂行する。挙動活発でピーツッ,ジュク,ジュクとなく。
シジュウカラの名前の由来について,柏書房「図説 鳥名の由来辞典」(2005年)には次のように書いてありました。
平安時代から”しじうからめ”の名,室町時代から”しじうから”の名で知られている。”しじうから”の語源に関し,柳田国男は,”から”は小鳥の総称,「しじう」は鳴声としている(「野鳥雑記」)。”しじうからめ”の「め」は鳥を表す接尾語と思われる。シジュウカラの鳴声に関し,蒲谷鶴彦は,囀りはツツピーッツピーだが,地鳴きがチ・チジュクジュクなので,地鳴きを「シジュウ」と聞き做したのであろうと述べている(野鳥46)。
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倉庫の床にヒメスズメバチの死骸が落ちていました。
入り込んだものの,ガラス窓のために外に出ることができなかったようです。
スズメバチはみな黄色と黒色の縞模様をしています。
これは,私を食べたら危険だと捕食者に知らせるための,警告色です。
ヒメスズメバチの腹部も黄色と黒色の縞模様なのですが,他のスズメバチと異なり腹部の終端が黒色で終わっています。
[写真1]は背中側からみたところ。
[写真2]は腹側からみたところ。
[写真3]は腹部を横からみたところ。
[写真4]は頭部。
[写真5]は,左右の複眼の間にある単眼です。
単眼は3個あり,対象との距離をはかる働きをしています。
[写真6]は大アゴ。スズメバチは狩りをするとき,毒針で相手を刺すのではなく,大アゴで相手に噛みついて仕留めます。
スズメバチ属の学名はVespaといいます。
Vespa?どこかで聞いたことがある名前だと思ったら,イタリアのオートバイ,ベスパです。
Vespaはイタリア語でもスズメバチを意味し,オートバイの名前もやはりスズメバチからとったそうです。
ヒメスズメバチについて,中村雅雄著「スズメバチ」(2007年)には次のように書いてありました。
ヒメスズメバチ V.ducalis Smith
体長はオオスズメバチに次いで大きく36mmであるが,性質はおとなしい。アシナガバチの巣を襲い幼虫や蛹を専門に狩る。普通,コロニーの規模は小さく,働きバチ数も数十頭にとどまる。ヒトに対してはカチカチと大アゴを鳴らして威嚇するが刺しにくることは少ない。営巣期間は短く6-9月で,家屋の隙間や地中,樹洞などに営巣する。腹部の先が黒いので,他種と区別できる。
ヒメスズメバチでは,餌のすべてをアシナガバチの幼虫や蛹に依存します。ヒメスズメバチは都会ではよく見られますが,ひとつのコロニーの働きバチ数が数十頭と少なく,巣は地中や家の壁のなかなど,外からは見えないところにつくるので,巣が見つかりにくいのです。ヒメスズメバチは活動する期間もスズメバチの仲間のなかではもっとも短く,6月に巣づくりを開始し,9月中旬ころに解散します。これは,アシナガバチの蛹や幼虫を餌にするために,アシナガバチの活動期間と合致している時期しか活動できないためなのです。
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6月11日,シジュウカラの雛が巣立ちました。
[写真7]は,6月11日朝の様子。
大きく育った8羽の雛が,身を寄せ合っています。
生えそろった羽が艶やかで,いつでも飛び立てそうな感じです。
翌朝,巣は空っぽになっていました。[写真8]
6月11日のお昼に巣立ちしたようです。
隣家によると,巣の近くに親鳥がとまり,盛んに鳴いて巣立ちを促していたそうです。
実にあっけなく,シジュウカラの子育て観察は終わりました。
日にちをかけて徐々に巣立ちしてゆくと思っていたので,巣が空っぽになっていたときには,軽い喪失感がありました。
孵化したのが5月26日か27日なので,巣立ちまでの日数は16日か17日でした。
山渓カラー名鑑「日本の野鳥」には,シジュウカラについて次のように書いてありました。
繁殖期にはつがいで縄張りを持ち,樹洞や石垣のすき間などに,大量の蘚類を運び込んで椀形の巣を作る。巣箱をよく利用し,またブロック塀や郵便受けなどに営巣することもある。産卵期は4~7月,卵数は普通7~10個,抱卵日数は12~13日位,巣立ちまでの日数は16~20日位である。
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巣立ちしたシジュウカラの巣箱を掃除しました。
使用済みの巣箱は,巣をそのままにしておくと,次の巣がつくられません。
前回はそれを知らなかったので,10年以上の間利用されませんでした。
(でも,自然の樹洞に巣を作る場合はどうなのでしょう? 一度巣をかけられた樹洞は再利用されないのでしょうか。)
取り出した巣は,巣箱の形そのままの四角い形をしています。[写真1]
厚さ8cm~6cmにコケを積み上げ,上に白い犬の毛が乗せてあります。
シジュウカラの巣の特徴について,柿澤亮三・小海途銀次郎著「日本の鳥 巣と卵図鑑」(1999年)には次のように書いてありました。
巣の特徴:樹洞などに穴全体を埋めるようにして蘚苔類を積み上げ,その上部を覆うように産座の巣材をのせる。産座には獣毛,糸状に裂いたスギの樹皮,綿,毛糸,蘚類のさく柄などを多量にのせ一部をくぼませて産座とする。
大きさ:外径約15×12cm,厚さ約8cm,内径(産座)約4×4cm,深さ約4cm。
シジュウカラの属するスズメ目の鳥の巣は,外装と内装の二重構造になっています。
外装は巣の土台となるもので木の枝や草などで頑丈につくられます。
内装は保温性の高い柔らかい素材で作られています。
スズメ目の鳥の巣が二重構造になっている理由について,柴田佳秀著「鳥の雑学がよーくわかる本」(2006年)には,次のように書いてありました。
スズメ目の鳥が外装だけでなく内装もつくる理由は,ヒナの生まれ方にあるようです。スズメ目のヒナは,羽毛がなく赤裸で生まれます。そのため体温が奪われやすいので,保温性の高い内装が必要なのでしょう。ですから,内装は,羽毛や獣毛,コケ,枯れ草,樹皮などが使われ,寒くないようにできています。
[写真6]は,生まれたばかりのヒナです。
確かに赤裸で,温かそうな毛に覆われた巣に体を沈めています。
身を寄せ合っているのも,お互いの体を温めるためでしょうか。
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室内の床にハチが死んでいました。
キアシナガバチです。
セグロアシナガバチとよく似ていますが,キアシナガバチは[写真5]の矢印の部分に黄色の2本線があるのが特徴です。
保育社「原色日本昆虫図鑑(下)」(1977年)には,キアシナガバチについて次のように書いてありました。
体長21~26mm。次種とよく混同されるが,体の斑紋は鮮黄色であること,前伸腹節に2縦紋をもつこと,前胸背は全体黄色であることで区別できる。巣は次種に似るが,背面は水平でなく,巣柄を中心にして傾斜する。北海道南端より東南アジアに広く分布する。
文中の「次種」とはセグロアシナガバチのことです。セグロアシナガバチについては,次のように書いてありました。
体長21~26mm。体は黒く,斑紋は黄褐色,前伸腹節に黄斑がなく,ある場合でも前胸背の前・後縁は淡褐色,残りは赤褐色である点で他種と区別するのがよい。巣の背面は柄のちかくがすこし突出するが,あとは水平である。分布:本州・四国・九州。奄美大島。
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セグロセキレイの幼鳥が,疎水べりをよちよちと歩いていました。
セグロセキレイの成鳥は名前のとおり背が黒く,黒い顔に白い眉班がありますが,幼鳥は頭から背にかけて灰色をしています。
先回りしてカメラを構えていると,どんどん近付いてきて,私の足元を通り過ぎてゆきました。
手で捕まえれそうなくらいまで近づいても,なかなか逃げません。
あまり逃げないので,飛べないのかなと心配したのですが,1m程の段差を飛び上がったので,飛べないわけではないようです。
近くに巣がある(あった)のでしょうか。
セグロセキレイの巣について,「山渓カラー名鑑 日本の野鳥」には次のように書いてありました。
川岸の植物や岩の下,崖地などの物陰に,枯れ草や細い根で椀形の巣を作る。建物の屋根のすき間などもよく利用し,その方が巣立ちに成功する率が高いという。産卵期は3~7月,卵数は4~6個,抱卵日数は11~13日位,巣立ちまでの日数は約14日である。
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