アカヤマドリが出ていました。[写真1]
周りにはコナラやシイなどが生えています。
2003年に初めて1本生えているのを見つけて以来,毎年7月中旬になると同じ場所に発生します。
その後,少し離れた場所にも出るようになり,しだいに発生数が増えています。
3本のうちの1本は傘の径12cm,柄の長さ10cmでした。[写真2]
[写真3]は切断面。かなり虫食いがあります。
[写真4]は傘の表面。ナメクジに食べられた痕が,溝になっています。
[写真5]は傘の裏面。
[写真6]は,2006年7月30日の発生状況です。
左下の半球形のものが幼菌です。
傘は半球形からまんじゅう形を経て,ほぼ平らに開きます。
「山渓カラー名鑑 日本のキノコ」には,アカヤマドリについて次のように書いてありました。
傘は径7~20(25)cm,初め半球形のちまんじゅう形からほぼ平らに開く。表面はビロード状,濃黄土色~帯褐橙色,初め脳のしわ状,のちしわは伸び表皮がひび割れて淡黄色の肉をあらわす。縁部は管孔部より膜状に突出する。管孔は上生し,黄色のちオリーブ黄色,孔口は同色で小さい。柄は5~15cm×25~50mm,表面は黄色の地に黄~黄褐色の細点が密布する。肉はきわめて厚くち密でほとんど白色または帯黄色,空気に触れると時にやや淡紅色となる。
食用になるキノコですが,今回のものは虫食いがあるため,食べることができませんでした。
虫食いのないものは,白い緻密な肉質をしており,ずっしりとした重量感とともに食欲をそそります。
オリーブオイルなどで炒めると,サフランのような黄色い色がでます。
和食よりはイタリア料理などの洋食にあうキノコだと思います。
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毎年,夏になると外壁を這い登ってくるやっかいな蔓。[写真5]
今まで花をつけたことがなく,雑草だと思っていつも根元から切って取り除いていました。
今年初めて花をつけて,この蔓がアメリカノウゼンカズラであることがわかりました。
アメリカノウゼンカズラはノウゼンカズラより花筒が細長く,花全体が小ぶりです。[写真1][写真2]
([写真7]がノウゼンカズラの花。)
たしかに10年以上前に一度,ノウゼンカズラの苗木を買ってきて植えたことがあります。(苗木の品種がノウゼンカズラではなくアメリカノウゼンカズラだったようです。)
何年たっても花が咲かないので,あきらめて根元から切ってしまいました。
それ以降周りは雑草に埋もれ,植えたこと自体をを完全に忘れていました。
それが,こんなところに生き残っていたとは。
「牧野新日本植物図鑑」(1970年)には,ノウゼンカズラについて次のように書いてありました。
夏,枝の先に円錐花序を作って黄赤色の大きな美しい花を開く。がくは鐘形で5裂して稜があり長さ約3cm。花冠は漏斗形で下部筒となり,先は5裂してやや唇形となり径約6cm,2本づつ長さの異なる4本の雄しべをもつ。柱頭はへら形で2片にさけ,裂片は開花しているとき上下に開いているが,さわると急速に閉じる。花蜜が目に入ると目がつぶれるといわれ,有毒植物にされるが俗説にすぎない。
柱頭は2つに割れていて,触ると急速に閉じると書いてあるので,試してみました。
[写真3]上が触る前。へら形で2片に裂けています。
[写真3]下が触った後。閉じています。
[写真4]は,つぼみを縦に切った断面。
[写真5]は,花の中いたアリ。
つぼみにも花にもアリがたくさんいます。
花にアリが集まっている時にはアブラムシが発生している可能性が高いそうなので,ちょっと目にはわかりませんが,花にはアブラムシもたくさんついているのだと思います。
ノウゼンカズラの「ノウゼン」とはどういう意味なのか想像がつきませんね。
深津正著「植物和名の語源」(1999年)には,ノウゼンカズラの語源について次のように書いてありました。(ノウゼンカズラは漢名では凌霄花と書きます。)
凌霄花の霄は空の意味で,蔓が木にまといつき,天空を凌ぐほど高く登るので,この名前がついたものという。古くは「のしょう」または「のしょうかずら」といい,この「のしょうかずら」が転じてノウゼンカズラとなった。「のしょう」は凌霄(りょうしょう)の音読みのなまったものである。
江戸時代の俳諧歳時記『改正月令博物筌』をみると,「凌霄花之詞」という,次のような大意の詩を引用している。
「昔素娥(そが)という仙女がいて,仙女仲間の酒席で酒に酔って,髪を傾けた拍子に,髪に挿した玉の簪(かんざし)が抜け落ちてしまった。いくら探しても見つからない。彼女がなくした玉の簪こそ,化して凌霄の花となったものである。」
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ヤブカンゾウの花が咲いています。[写真1]
ノカンゾウの花[写真4]が一重咲きなのに対し,ヤブカンゾウの花は八重咲きで,見るからに複雑な花をしています。
花を縦に切断して,構造を見てみました。[写真3]
花のなかから花筒が伸びて,また花が咲いている感じで,二重になっています。
雄しべのなかには花びらに変化しているものもあり,雌しべもどこにあるのかわかりません。
これでは実は結べそうにありませんね。
ヤブカンゾウについて,「牧野新日本植物図鑑」(1970年)には次のように書いてありました。
雄しべ雌しべは不規則に花弁化し時々3~4重になっているから果実は出来ない。根茎から横につる枝を出して繁殖する。若葉は食用になる。
ヤブカンゾウの遺伝子は3倍体で種子をつくることができません。
通常,生物の遺伝子は親から半数ずつの染色体を受け継いだ,2倍体(2n)です。
子孫を残す時には,減数分裂して染色体の数が半分になった配偶子を作ります。
3倍体というのは,突然変異により4倍体ができ,その減数分裂した2nの配偶子と,正常なnの配偶子が受精して3nとなったものです。
3倍体は正常な減数分裂ができないため,種子をつくることができません。
ヤブカンゾウは,別名をワスレグサともいいます。
前書には次のように書いてありました。
〔漢名〕この植物の基本形が(ホンカンゾウH.hulva L.)で萓草の本体であるが,支那ではこの花を見て憂いを忘れるという故事があり,「忘れる」に萓の文字を宛てることから萓草と称する。
〔日本名〕漢名の意訳である。ヤブカンゾウは藪にはえるためで,ノカンゾウよりも人の集落に近く生ずることをうまく表現している。
深津正著「植物和名の語源」(1999年)には次のように書いてありました。
萓草(わすれぐさ)わが紐に付く香具山の
故(ふ)りし里を忘れむがため
大伴旅人が,大宰師として任地にあり,藤原宮時代に大伴邸のあった香具山の故地を懐古して詠んだ歌である。
カンゾウ(萓草)を古く「わすれ草」といい,『万葉集』には,右のほかこれを詠んだ歌が3首ある。
『詩経』に,「諼草,令人忘憂」とあるのによるもので,本来は諼草(けんそう)といい,諼は忘れるの意。萓(けん)はこれと同音のため,代わりに用いられたもので,萓草には忘憂草の別名がある。
萓草はユリ科の多年草で,本来は中国産のホンカンゾウの名であるが,わが国では,この語をヤブカンゾウに当て,ノカンゾウをはじめ,広くこの仲間の植物の総称として用いられる。
昔はこれを拗音でクヮンゾウと呼んだので,漢方ではお馴染みの甘草(カンゾウ)(マメ科)とは区別できたが,今では両者に発音上の区別がなくなり,萓草と甘草とが混同されることしばしばである。
道に横たわるトンボの下に,アリが巣を作っていました。[写真1]
トンボの腹には,扇状の特徴的な突起があります。[写真2]
このトンボはウチワヤンマといい,うちわのような突起が特徴です。
ヤンマの名が付いていますが,ウチワヤンマはヤンマではなくサナエトンボのなかまです。
ヤンマ科とサナエトンボ科の大きな違いは,サナエトンボ科は複眼が離れているのに対し,ヤンマ科は複眼がくっついていることです。[写真4]
平凡社『世界大百科事典』(1988年)には,ウチワヤンマについて次のように書いてありました。
トンボ目サナエトンボ科の昆虫。日本にいるものではこの科のうちもっとも大型で,体長約8cm。雄の第8腹節には半円形の葉片がついているのでこの名がある。雌ではこれは小さい。青森から鹿児島まで,平地の池沼,あるいは湖にふつうに見られる。
『学研生物図鑑 昆虫Ⅲ』(1990)には,次のように書いてありました。
雌雄とも第8腹節にうちわ状の付属突起をもつので顕著。うちわの基部には黄色紋がある点でタイワンウチワヤンマと区別できる。平地の池沼や湖に発生し,幼虫はかなり遊泳することがある。成虫期は近畿地方で5月中旬~9月中旬,6月上旬~8月上旬に多い。水面を活発に飛び,垂直に水面から突き出たものの先に止まり,なわばりをもつのが見られる。体長:70mm内外。分布:青森以南の本州,・四国・九州。琉球列島からは知られない。
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南禅寺南陽院の門脇にハスの花が咲いていました。[写真1][写真5]
ハスの花はよく見ると不思議な構造をしています。
花の中心に,ろうと状の構造物がにょきっと突き出し,その周りをたくさんの雄しべが取り囲んでいます。[写真2][写真3]
「朝日百科 植物の世界」(1997年)には,ハスの花について次のように書いてありました。
花は2~5枚のがく片があり,花弁は20~30枚で螺旋状に配列し,雄しべは200~300本もある。雌しべには2~30枚の独立した心皮がある。ろうと形の花床が特徴的で,子房は花床の中に大部分が埋没している。果期になると花床が肥大して子房の周りは大きな穴になり,蜂の巣状に見える。ここからハスの古名「蜂巣(はちす)」が生まれ,それが略されたのがハスの名の由来といわれる。
「牧野新日本植物図鑑」(1970年)では,ハスはスイレン科に分類されていました。
しかし現在は,ハスとスイレンは近縁とは考えられていないようです。
前書には次のように書いてありました。
ハスの花は花弁,雄しべ,雌しべを多数もち,水草であることからスイレン科に近種であると考えられてきた。しかしハスに含まれるアルカロイド類は,スイレン科よりキンポウゲ科に近い。またハスの花粉は3溝粒(こうりゅう)で,単溝粒(たんこうりゅう)や周溝粒(しゅうこうりゅう)のスイレン科とは異なっている。ハスと同様にがく片,花弁,雄しべ,雌しべが螺旋状に配列する花の構成をもち,類縁であると考えられてきたモクレン目の植物も花粉が単溝粒のものが多い。最近の遺伝子の塩基配列による被子植物全体の系統解析の結果は,3溝粒の花粉をもつ植物群は真性双子葉植物として,単系統群であることが示されている。ハスも,このグループに入るとされ,現在ではスイレン科やモクレン科との直接の類縁関係は否定されている。
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