ゴキヅルに実がなっていました。[写真1]
実が熟すると,お椀の蓋を取るように上下に分かれるので,御器(合器)ヅルの名があります。[写真2]
(実の上半分を残して下部が落下するので,お椀の蓋を取るようにというよりは,蓋を残してお椀が落ちるでしょうか)
「朝日百科 植物の世界」(1997年)には,ゴキヅルについて次のように書いてありました。
低地の水辺や湿地に生えるつる性の一年草。葉はふつう長い三角形で3裂または5裂し,切れ込みの深さには変化がある。切れ込みの程度によって,ハンモミジゴキヅル,モミジゴキヅル,ツタバゴキヅルと区別されることがあるが,現在ではすべて種内変異とされる。花は黄緑白色で単性花とされてきたが,最近の研究で雄花(おばな)と両性花からなることがわかった。長さ2センチほどの卵形の果実は果皮が肉質であるが,ウリ科では例外的な蒴果(さくか)となる。熟すと果皮が裂けて上下に分かれ,2個の種子が落ちる。
[写真3]は実の中にある種子です。
[写真4]は雄花。
雄花は総状花序(そうじょうかじょ)で,花軸に柄をもつ花がいくつもついて,順次咲いてゆきます。花弁は5つに裂けて細長くとがり,がくも同じ形をしているので,花びらが10枚あるようにみえます。
[写真5]は両性花(雌花)です。
両性花は雄花序の基部に一つだけつきます。
白い放射状の花は,同じウリ科のカラスウリの花にすこし似ています。
ゴキヅルの属名Actinostemmaはギリシャ語で「放射状の冠」を意味し,花被片,がく片が細長く放射状に伸びることにちなむそうです。
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カラムシに花が咲いていました。
カラムシの花は単性で雌雄同株。
茎の上方に雌花の穂が,下方に雄花の穂がつきます。
[写真1]が雌花,[写真2]が雄花です。
おばなは黄白色でがく片4個,つき出したおしべが4個ある。めばなは淡緑色で小球状に集まり,それぞれ筒形のがくにつつまれ,花柱が1個ある。(牧野新日本植物図鑑1970年)
雌花は球状をしていて,白い棘のようなものがたくさんついていますが,上記の説明を読むと,棘のようなもの一つ一つが花柱で,それぞれが一つの花ということです。
雄花も雌花も花びらがなく地味な姿をしていて,どう見ても虫たちを誘惑しているようにはみえません。
カラムシの属するイラクサ科は,花粉が風によって運ばれる風媒花です。
風媒花の花粉は大量に飛散すると,花粉アレルギーの原因となります。
やはり,カラムシの花粉も花粉アレルギーの原因となることがあるそうです。
長崎県に比較的多いとか。
ちなみにイラクサ科には多くの種がありますが,みな地味な姿をしており,観賞用に栽培される種はほとんどありません。
「朝日百科 植物の世界」(1997年)には,カラムシについて次のように書いてありました。
ヤブマオの仲間には,葉が対生(たいせい)する上記の種のほかに,葉が互生(ごせい)するカラムシB.nivaがある。カラムシは葉の裏に白い綿毛がある点で,他のヤブマオの仲間から容易に区別できる。日本産のカラムシは,毛が斜上するクサマオと毛が開出するナンバンカラムシに分けられることがあるが,変異は連続しており,両者は区別できない。カラムシの茎は発達した繊維組織をもつので,日本から東南アジアにかけて繊維をとるために利用される。栽培される系統は,ラミーあるいはチョマ(苧麻)とよばれる。ナンバンカラムシの一部は,栽培されたラミーが野生化し,在来のカラムシと交雑することによって生じたものと考えられる。
[写真4]はカラムシの葉の裏側です。
白い綿毛が密生しています。
[写真5]はカラムシの葉につくられた,アカタテハの幼虫の巣です。
この辺りのカラムシは年に2回,きれいに除草されてしまうのですが,すぐに伸びてきて,葉を茂らせ,アカタテハが卵を産みつけます。
[写真6]は巣の中にいた,アカタテハの幼虫です。
カラムシの語源については,「牧野新日本植物図鑑」(1970年)には次のように書いてありました。
茎蒸の意味で,皮のある茎(カラ)を蒸して皮をはぎ取るからである。一名マオは真麻で真正の麻という意味である。
ヤブマオに花がついていました。[写真1]
ヤブマオの花は単性花で雌雄同株です。
茎の上部に雌花を,下部に雄花をつけますが,ふつうは雄花をつけず雌花だけで無性的に種子をつくるそうです
「朝日百科 植物の世界」(1997年)には,ヤブマオについて次のように書いてありました。
白く見える穂は,小型の雌花が密集した花序。ふつう雄花はつけず,無性的に種子をつくる。葉は,卵形から円形のものまであり,変異が多い。中部・関東地方以北にはラセイソウとの雑種と思われるものが多い。藪の縁に生えることが多いため「藪苧麻(やぶまお)」の名がある。
ヤブマオ Boebmeria japonica var. longispica は,本州の関東地方以西,四国,九州の山地や平地の路傍に見られる高さ1~1.5メートルの多年草である。7~8月に,小型の花が穂状花序(すいじょうかじょ)に密生する。通常,雌花(めばな)だけをつけ,受精せずに無性生殖によって種子を生産する。このため繁殖力が旺盛で,雑草的な植物である。染色体数のうえで,3倍体,4倍体,5倍体が知られており,変異に富む。葉の鋸歯(きょし)は細かいものから粗いものまであり,葉の厚さや毛の多さなどの点でも,変異に富む。
[写真1]を見ると,葉が対生となっているのがよく分かります。
ヤブマオによく似たカラムシの葉は互生です。
動物園南の疎水際には,カラムシとヤブマオが一緒に生えていて紛らわしいですが,この違いは見分ける際の重要な相違点ですね。
葉の縁の鋸歯もカラムシに比べて粗く[写真5],カラムシの葉裏に密生している白い綿毛もヤブマオにはありません。
またヤブマオは茎を折ると割と容易にとれるのですが,カラムシは,さすがに麻繊維の原料なだけあって,茎表面の繊維が丈夫でなかなか折りとることができません。
[写真2]は雌花序の拡大写真。
白い毛のようなものが花柱です。
雌花は筒型のがくに包まれ,1本の花柱があります。
子房は1室で,胚珠は子房の基底に1個つきます。
[写真6]はヤブマオの葉を食べるフクラスズメの幼虫。
フクラスズメの幼虫は,ヤブマオやカラムシの葉でよく見かけます。
ヤブマオやカラムシを食草とする幼虫としては,アカタテハも有名です。
しかし以前,カラムシについたアカタテハの幼虫を飼育していた時に,間違えてヤブマオの葉をあたえたことがあるのですが,その時はヤブマオの葉は全然食べませんでした。
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1週間ほど前から,動物園南の疎水でカワウを見かけるようになりました。
今日は7羽が,近くにあるヤナギの木にとまっていました。
ここのカワウは冬になると姿を現し,暖かくなるといつの間にかいなくなっています。
カワウはどこからやってくるのでしょうか。
ネットで調べていると,「バードリサーチニュース 2006年7月号」が目に留まりました。
カワウの季節移動を衛星で追跡調査するという記事のなかに,次のように書いてありました。
各府県などが実施している調査などから,琵琶湖の周辺では夏に個体数が多く,他の地域では冬に個体数が多いという傾向が見えてきています.これらの情報から,関東では東京湾を中心に,中部近畿では琵琶湖を中心にカワウが季節的に移動しているのではないかと,想像が膨らみます.
滋賀県の「カワウ対策について」という文書の中には,次のように書いてありました。
カワウは2月に県外から琵琶湖に飛来し、営巣、繁殖を行い、9月末から10月初めに一斉に県外に飛び去る。カワウの繁殖力は旺盛であり、他府県で再び営巣活動、繁殖を行い、個体数を増す。
竹生島ではカワウの幼鳥に足環を付けて移動範囲を調べる標識調査も行われているそうです。
カワウ総合対策計画(骨子案)の検討資料(2006年)によると,足環を装着したカワウが確認された場所は,西は広島県から東は千葉県まで広い範囲にわたっています。
»図を拡大する
どうやらここのカワウは,琵琶湖から来ているようですね。
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