ノボロギクが咲いていました。
咲いているのか,まだつぼみなのか,分らないような地味な花です。
キク科の花は,1個の花のように見えるのは花序で,数個から数百個の小花(しょうか)が集まったものです。
小花には,花びらが細長く管状になっている管状花(かんじょうか)と,花びらの一部が伸び広がって舌状になっている舌状花(ぜつじょうか)があります。
ツワブキのような典型的なキク科の花は,中心部に管状花,周辺部に舌状花がありますが,タンポポのように舌状花だけ,アザミのように管状花だけといった花もあります。
ノボロギクは管状花だけの花です。
管状花だけでもアザミのように華やかな花もあるのですが,ノボロギクは花びらをつけ忘れたようなつつましい花です。
ノボロギクは明治時代に渡来した帰化植物。
ボロギク(サワギク)に似て野に生えるのでノボロギクの名があります。
サワギクは沢菊で,名前のとおり山間の低湿地にはえますが,ノボロギクは道端や空き地が棲みかです。
「牧野新日本植物図鑑」(1970年)には,ノボロギクについて次のように書いてありました。
ヨーロッパ原産で明治の初めごろ(1870前後)日本に渡来した一~二年草。繁殖力が強く,道ばたや空地でしばしば群落を作って密生することがある。
頭花は少数で腋生の散房花序状に着き,黄色の管状花(まれに少数の小舌状花がある)からなる。総包は先がやや細まる円柱形で長さ約7mm, 基部に小形の総包片が数個あって,長い総包片をささえている。花冠は5裂,花柱分枝の先端には乳頭状突起毛があり,子房はわずかに毛があるが,そう果は無毛で縦線がある。
長田武正著「原色日本帰化植物図鑑」(1976年)には,ノボロギクについて次のように書いてありました。
欧州原産。明治初年ごろに渡来。大正時代には全国的に普通であったが,今は所によって少なくなりつつある。大沼は”欧州ニテ此花ヲ以テカナリヤ鳥ヲ飼ウニ甚ダ嗜ミテ啄ムト云ウ。故ニドイツ国ニテ鳥草ト名ク”と記し,久内は”セネキオニンSenecionin,セネキンSenecin等の塩基およびイヌリンを含むという。したがって利用価値も考慮されている”と記す。
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動物園南の疎水にいたカワウ。
ヤナギの木に4羽止まっていました。
この場所では冬にしかカワウの姿を見ません。
春になり繁殖期になると,琵琶湖へ帰るようです。
今の時期,すでに婚姻色が出ている個体も多いのですが,[写真1][写真2]の個体は婚姻色がでていません。
胸のあたりが白いので,まだ幼鳥なのかもしれません。
カワウは繁殖期になると,頭部と腿部に白い綿毛状の生殖羽が生え,足の付け根に大きな白斑が出ます。
また婚姻色として,嘴(くちばし)の付け根(通常は黄色)が黒くなり,眼の下が紅色になります。
[写真3]の個体は,頭部に白い生殖羽が生え,眼の下も紅くなりかけています。
[写真5]は,翌日に撮ったもの。頭部の生殖羽と足の付け根の白斑がよくわかります。
此処のカワウが戻って行く先の琵琶湖では,生息数が倍増しているそうです。
京都新聞(2008年11月11日)の記事。
カワウの2大繁殖地の竹生島(長浜市)と伊崎半島(近江ハ幡市)で,今秋のカワウの生息数が前年に比べて倍増し,過去最多の約7万4000羽になったことが10日,滋賀県の調査で分かった。県が「効果が薄い」として銃器駆除を止めたのか要因とみられ,漁業や樹木の被害がさらに広がる恐れも出ている。
生息数の内訳は,竹生島が約5万8000羽,伊崎半島か約1万6000羽といずれも前年の調査に比べ倍増した。
県は2004年度から春秋2回,両地域の生息数調査を行っており,毎回計4万羽前後が続いている。繁殖前の今春調査では約3万7000羽だったが,繁殖後の今秋の調査では倍増した形となった。
増加要因について,県は「銃器駆除を昨年から止めたことも背景にある」としている。
県はカワウによる漁業被害を約20億円と見積もり,昨年度,2012年度までに県内で約4000羽にまで減らすなどの目標を盛り込んだ総合対策計画を策定した。しかし,財政難に加え「広城で活動する鳥のため効果が薄い」として,銃器駆除を中止していた。
県目然環境保全課は「被害を考えると危機的な生息状況だ。銃器駆除の復活も含めて個体数調整の対策を検討したい」としている。
また,琵琶湖のカワウが移動する距離が伸びているという記事も載っていました。
京都新聞(2009年3月10日)の記事。
全国最大規模のカワウ繁殖地の竹生島(長浜市)で巣立ちしたカワウが,九州地方にまで飛来していたことが滋賀県などの調査で分かった。移動距離は約584キロで,これまでに確認した約380キロ(直線距離)を大きく上回る。県は,全国各地で異常繁殖する恐れがあるとして,広域での抑制対策を訴えている
竹生島で巣立ち前後の幼鳥に足環を付ける県と環境省の標識調査で昨年9月,2003年に巣立ったカワウが約584キロ離れた熊本県相良村で確認された。続けて同10月に約512キロ離れた宮崎県延岡市で見つかったカワウは,4カ月前に標識を取り付けたばかりだった。
これまでの標識調査で,確認地点の西端は広島県の372キロ,東端は千葉県の380キロだった。昨年11月末までの集計で,竹生島で02年から標識を付けた523羽のうち51羽の足環を回収。半数近い23羽が200キロ以上移動しており,北海道と東北地方を除く24都府県に飛来したことを確認している。
竹生島を飛び立ったカワウは,各地で定着し,繁殖しているとみられる。県自然環境保全課は「滋賀県で生息数が倍増したので,飛び立つカワウも増える。今後,全国規模で異常繁殖が広がる恐れがある」と指摘。「県だけでは効果が薄い。全国一斉に追い払いや捕獲などの対策をとるべき」として,国主導の抑制対策を訴えている。
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このところ暖かい日が続き,3月19日には京都でサクラの開花宣言がでました。
「京の桜開花宣言 早さ過去2番目」の見出しで,京都新聞(2009年3月20日)に記事が載っていました。
京都地方気象台は19日,サクラ(ソメイヨシノ)の開花を宣言した。1953年に統計を取り始めて以来,2002年の3月18日に次いで2番目に早く,平年より12日も早い。満開は1週間後を見込んでいる。
気象台によると,京都市内の最高気温は今年最高の23.9度まで上がり,平年を10.5度上回る5月中旬並みの陽気となった。南から暖かい空気が流れ込んだためで,最高気温の20度突破は3日連続となった。
中京区の気象台にある京都の標本木のソメイヨシノは,午前中からつぼみが膨らみ,午後3時前,五輪ほどの花が咲いているのを職員が確認した。
今後1週間は雨の日もあり,最高気温は20度に達しない見込みだが,それでも平年より暖かく,桜の開花は一気に進みそうだ。
しかし今日は一転して,最低気温2.4度という寒い朝になりました。
しばらくは気温が上がらない日が続くので,サクラの開花も足踏みしそうです。
[写真1]は,蹴上のソメイヨシノ。
今朝の状況では,こうした開きかけのものはごくわずかで,ほとんどがまだ蕾でした。
[写真2]は,南禅寺山門脇のサクラ。
この木だけ満開です。ソメイヨシノではなく早咲きの品種でしょうか。
サクラだけでなく,たくさんの木々に春の花が咲いています。
[写真3]は,モクレン。
[写真4]は,ハクモクレン。
モクレンはハクモクレン(白木蓮)に対して,シモクレン(紫木蓮)ともいわれます。
[写真5]は,シキミ。
シキミから発見されたシキミ酸(shikimic acid)はインフルエンザ治療薬タミフルの原料です。
→ここに少し詳しく書いています
[写真6]は,トサミズキ。
よく似た花のヒュウガミズキも咲いていました。
[写真7]は,ヒサカキ。
小さくて目立たない花ですが,臭い匂いで咲いたのがわかります。
[写真8]は,カンヒザクラ。
→ここに少し詳しく書いています
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岡崎付近のソメイヨシノ,今朝時点の開花状況は3分咲きといったところでした。
3月19日に開花宣言が出たものの,寒の戻りで,開くのを躊躇しているつぼみが多いようです。
通常,開花宣言から1週間後頃が満開の時期とされているのですが,満開にはまだ日がかかりそうです。
今週末あたりが見ごろかもしれません。
岡崎付近の街路樹は古いものはソメイヨシノで,比較的新しく植えられたものはオオシマザクラのようです。
『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,ソメイヨシノについて次のように書いてありました。
葉は有柄で互生,倒卵形,長い鋭尖頭,ふちには針状の重きょ歯があり長さ10Cm内外,葉身葉柄は無毛,上面は緑色,裏面は白味をおびた淡緑色。葉柄上部に通常2腺がある。4月初め,新葉より先に散形状に密集した淡紅白色の数個の花を開き,全枝が花でうずまり美しい。花柄は長く細毛がある。がくは短い筒形で下部がふくれ細毛があり, 5がく片は水平に開出する。花弁は5,楕円形,凹頭,雄しべは多数。花柱には微毛がある。
オオシマザクラについては,次のように書いてありました。
葉は有柄,互生し倒卵状長楕円形あるいは倒卵状楕円形,先は長く伸びてとがる。基部は円形,長さ10Cm内外。ふちには先がのげ状にとがったきょ歯があり,両面とも無毛でなめらかで裏面は白色をおびず,緑色。花は4月に淡緑色またはやや赤褐色の新葉と同時に出て開き,大形で径3~4cmにもなり,芳香を放つことがある。白色あるいはかすかに紅色をおび枝上一杯につく。花序の花軸はヤマザクラよりも長く,がくとともに淡緑色で紫色をおびず,毛もない。がく筒は筒状,下部はふくらまず,がく片は皮針形で水平に開き,多少ともきょ歯がある。花弁は5,水平に開き,楕円形,凹頭 雄しべは多数,雌しべは1本。子房,花柱ともに無毛,核果は球形,ヤマザクラよりも大形で紫黒色に熟する。
ソメイヨシノは「4月初め,新葉より先に散形状に密集した淡紅白色の数個の花を開き,全枝が花でうずまり美しい」ですが,オオシマザクラは「花は4月に淡緑色またはやや赤褐色の新葉と同時に出て開き」ます。
[写真1]のソメイヨシノは花だけが開き,[写真2]のオオシマザクラは花と同時に葉も伸びています。
花と葉が同時に伸びるのは,ヤマザクラの特徴でもあります。
仁王門通りの植えられているサクラの木は,花と葉が一緒に出ていたので,はじめヤマザクラだろうと思っていました。
しかし,よく調べてみるとヤマザクラではなくオオシマザクラのようです。
ヤマザクラの若葉は赤褐色をしていますが,このサクラの若葉は緑色をしています。
オオシマザクラの若葉は「淡緑色またはやや赤褐色」で,「ふちには先がのげ状にとがったきょ歯があり,両面とも無毛でなめらかで裏面は白色をおびず,緑色」です。
[写真7]はオオシマザクラの若葉。
表裏とも緑色で無毛です。葉の鋸歯は細く鋭くて,先はのぎ状になっています。
写真にある「腺体(せんたい)」とは,蜜液を分泌する突起です。
ここから蜜を出してアリを誘引し,葉を食い荒らすガの幼虫などから守ってもらっているといわれています。
[写真3]は,オオシマザクラとソメイヨシノの花を並べたところ。
[写真4」は,切断面を並べたもの。
一見して,オオシマザクラの花の方が大きいですね。
写真ではよくわかりませんが,花の色はオオシマザクラのほうが白く,ソメイヨシノは少し紅みを帯びた,いわゆるサクラ色をしています。
花をたくさんつけている状態をみると,ソメイヨシノは萼やつぼみも紅みを帯びているので一層サクラ色の印象が強まります。
オオシマザクラの方は花びらが白く大きくて,薄緑色の若葉も一緒に出ているので,色としてはサクラ色という印象はうけませんね。
[写真5]はソメイヨシノの萼と花柄,[写真6]はオオシマザクラの萼と花柄。
ソメイヨシノは「花柄は長く細毛がある。がくは短い筒形で下部がふくれ細毛があり」ます。
オオシマザクラは「がく筒は筒状,下部はふくらまず,がく片は皮針形で水平に開き,多少ともきょ歯があ」ります。
ソメイヨシノは萼,花柄ともに細毛がありますが,オオシマザクラには毛がありません。
オオシマザクラは葉にも毛がなく,柔らかく食べやすいので,塩漬けにした葉をサクラモチに使用します。
萼筒の形もよく見ると違います。
ソメイヨシノは萼筒の付け根部分がふくれていますが,オオシマザクラはふくれずにそのまま細くなって花柄につながっています。
ソメイヨシノの名前について,前書には次のように書いてありました。
染井吉野。はじめ東京の染井の植木屋から世にひろがったためである。 元来植木屋では本種を吉野と呼んで桜の名所,吉野山の桜になぞらえていたが,単に吉野といったのでは,吉野の山桜と混同するので,明治5年(1872)にはじめて染井吉野の名がつけられた。 本種は明治維新直前頃にはじめて東京に出現したもので,江戸の桜ではないであろうから, これにyedoensisの種名をつけたのは適切ではない。 朝鮮の済州島に本種が自生することがわかっているが,一般に栽植されているものは,系統を異にしているであろう。 ウバヒガンとオオシマザクラの雑種であろうというのが一番可能性がある。
(ソメイヨシノの系統については2007年に,DNA解析に結果,コマツオトメのようなエドヒガン系品種を母親に,オオシマザクラを父親として起源したことを示唆している,との研究結果が発表されています。→ここに少し詳しく書いています)
オオシマザクラの名前については,次のように書いてありました。
大島桜は伊豆大島に産するからである。 ヤマザクラに近縁であるが,葉のきょ歯の先端がのげ状にとがること,葉の裏が白色をおびないこと等によって区別することが出来る。 ソメイヨシノは本種とエドヒガンの雑種であるという。 本種から園芸品としていろいろな品種ができたのが,サトザクラである。