岡崎あたりのソメイヨシノが満開です。
ヤマザクラはすでに散ったものもあれば,満開のものもあります。
エドヒガン,シダレザクラは満開状態です。
ソメイヨシノが一斉に咲きだすのと違い,ヤマザクラは開花時期に個体差がかなりあります。
現在,花見の桜といえばソメイヨシノが主流ですが,ソメイヨシノは江戸時代末期に現れ明治以降に急速に普及した品種です。
それ以前の花見の対象はヤマザクラだったので,昔の花見は今よりはもっと長い期間楽しめたのではないでしょうか。
ヤマザクラは花が咲くのと同時に,赤褐色をした若葉が伸びるのが特徴です[写真1]。(オオシマザクラも花と同時に若葉が出ますが,オオシマザクラの若葉は緑色をしています。)
萼や花柄は無毛,萼筒は細長く下部はふくれていません。[写真2][写真3]
『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,ヤマザクラについて次のように書いてありました。
葉は有柄で互生,倒卵形,長い鋭尖頭,ふちには針状の重きょ歯があり長さ10Cm内外,葉身葉柄は無毛,上面は緑色,裏面は白味をおびた淡緑色。葉柄上部に通常2腺がある。4月はじめ,花は通常赤褐色の新葉と同時に出て,花軸の短い散房花序または散形状の花序を作って淡紅白色の3~5花をつける。花柄は細長く無毛,長さ2cm 基部に小さい包葉がある。花軸は長さ2Cm内外。基部は鱗片でおおわれる。がくは5,水平に開出し,筒部は円柱形で下部がふくれず,がく片とともに無毛。花弁は5,凹頭,水平に開出。雄しべは多数,雌しべは1,子房花柱ともに無毛。
[写真4]は,3月21日に写したものです。
すでに満開状態だったこのサクラは,エドヒガンです。
4月9日時点でもまだきれいに咲いていました。
エドヒガンは他のサクラより一足早く咲き,萼筒の下部がふくらんでいるのが特徴です。[写真5]
『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,エドヒガンについて次のように書いてありました。
3月末に葉より早くまた他種に先がけて淡紅色の花を開き,散形状に数個の花が集る,花柄は長く,がくや花柱とともに毛でおおわれる。がくは筒状であるが,下部がややふくらみ,上端で5裂する。花弁は5。凹頭で水平に開出する。雄しべは多数。雌しべは1本。夏に小豆粒ぐらいの実がなり,紫黒色に熟する。
エドヒガンは,『牧野新日本植物図鑑』ではウバヒガンの名で載っています。
ウバヒガンの由来について,次のように書いてありました。
姥彼岸ウバヒガンザクラの略。姥(老婆)は普通歯が抜けてしまって無いものが多いが,本種も3月末に葉の無いうちに花が開くので歯無しと葉無しをかけて,ウバの名をつけた。江戸彼岸,東彼岸は,東国(関東)のヒガンザクラという意味。これをヒガンザクラというのは誤りである。
葉の無いのを「歯が無い」にかけて,歯の抜けた老婆にたとえるのは,現代ではやはり不適当な表現ということになるのでしょうか。
ウバヒガンよりエドヒガンの名の方が使われることが多いようです。
カーテンを開けると,久しぶりに雨が降っていました。
ジョギングをどうしようかと思ったのですが,歩くことにしました。
長靴をはいて,傘をさして。暖かい朝です。
岡崎の歩道わきに咲いていたスミレを見つけました。
ウイオラ・ソロリア?
以前,若王子神社の境内でも咲いていた外来種です。(→2007年04月09日)
その時調べた「山渓ハンディ図鑑6 増補改訂 日本のスミレ」(2004年)では,ウイオラ・ソロリアとなっていました。
ウイオラ・ソロリアは学名「Viola sororia」の日本語読みです。
その時は何とも思わずにそのまま「ウイオラ・ソロリア」と記してしまいましたが,何か変です。
どうして「ヴィオラ」ではなくて「ウイオラ」なのでしょう。
索引にも「ウイオラ」で載っています。誤植でしょうか。
「ウイオラ・ソロリア」とGoogle検索すると,6件だけしかヒットしません。(そのうち2件は「九条山自然観察日記」)
珍しい花でもないようなので,試しに「ビオラ・ソロリア」でGoogle検索すると,8,150件もヒットしました。
ビオラ・ソロリアが一般的な呼び名のようですね。
園芸用としてかなり人気の品種らしく,通信販売サイトもたくさんあります。
どのサイトを見ても,「丈夫」「すごい繁殖力」の語句が踊っています。
これではすぐに花壇から逃げ出して雑草化してしまいます。
そのうちに,いたるところで見られる,ありふれた花になるのかもしれません。
外来植物が定着すると,環境に何らかの影響がでるのは避けられません。
やはり一番影響を受けるのは在来種のスミレなのでしょうか。
花が紫色のものをパピリオナケア,中心が紫色で白花のものをプリケアナといいます。
白一色のスノー・プリンセスという園芸種もあるそうです。
前書には,Viola sororiaについて次のように書いてありました。
近年よく見るようになった外来種。性質が強く,よく花をつけるため,急速に広まった。北アメリカの原産で,根茎がスミレサイシンのように太くなるので,アメリカスミレサイシンとも呼ばれる。
英名はCommon Blue Violet。原産地ではふつうに見られるスミレのようだ。かつては,花が紫色のものをパピリオナケアと呼び,中心が紫色の白花のものはプリケアナと呼ばれていたが,近年の研究では,両者ともV.sororiaに含まれるとされる。
<2009/4/17追記>
「朝日百科 植物の世界」(1997年)では,スミレ属の名を「ウィオラ」で統一してありました。
属名ウィオラについて次のような解説が載っていました。
属名の「ウィオラ」はラテン語で,ギリシャ語の「イオン(ion)」に由来する。ギリシャ神話によると,天帝ゼウスは雌牛に変えられた女神官イオのために,彼女の食べ物として牧場一面にスミレの花を咲かせたという。属名はこの女神官の名が転じたものとの説もある。スミレにまつわる伝説がほかにも世界中に残されており,枚挙にいとまがない。
「ウィオラ・ソロリア」でGoogle検索すると2,400件ヒット。
「ウイオラ」ではなく「ウィオラ」と,小さなイにしなればならなかったのですね。
4年間わからなかった,白いスミレの花の正体がようやくわかりました。
→2005年4月24日
→2006年4月22日
北アメリカ原産のビオラ・ソロリアの園芸品種でスノー・プリンセスといい,各地で野生化しているそうです。
何年間も名前がわからなかったものが,結局は外来植物だったということが今までも何回かありました。
ツタバウンラン,マツバウンラン,ノハカタカラクサ,モンツキウマゴヤシ・・。
名前がわかったことはうれしいのですが,外来植物だったということには複雑な気持ちがします。
ビオラ・ソロリアは,根茎が太くなっているのでアメリカスミレサイシンとも呼ばれています。
[写真4]を見ると,根茎がわさびのように太くなっているのがわかります。
スミレサイシン類は発達した地下茎が特徴で,すりおろして食用にする地方もあるそうです。
ビオラ・ソロリアの根茎も同じようにして食べることができるのでしょうか。
試したくなるのですが,致命的な有毒植物というのは結構多いので,へたに試さない方が良いようです。
土手の草地に,草々の間からニョイスミレが小さな花をのぞかせていました。
花の大きさは,タチツボスミレの半分ほどしかありません。
いがりまさし著『増補改訂 日本のスミレ』(2004年)によると,ニョイスミレの特徴は次のようになります。
・茎を斜め上にのばし,草丈は5~ 25センチ。
・花は白色で,直径1センチ前後と小さい。…[写真1][写真2]
・唇弁には緻密な紫色のすじがあり,側弁の基部には毛がある。…[写真3]
・距は短く,ぽってりしている。色は白色~淡緑色。…[写真4]
・花柱は上部がすこし左右にはりだす。…[写真3]
・葉は幅2~4センチの心形~腎形。…[写真5]
・葉はふつう無毛で,両面ともとも緑色だが,まばらに毛があるものや,裏面が紫色を帯びるものもある。…[写真5]
・托葉は全縁またはまばらな鋸歯がある。…[写真6]
ニョイスミレの別名はツボスミレといいますが,ツボスミレをニョイスミレに改名したのは牧野富太郎のようです。『牧野富太郎植物記1』(1973年)には,次のように書いてありました。
ツボスミレの「ツポ」ということばの意味については、むかしからいろいろいわれていますが、わたしは、「ツポ」とはむかしのことばでいう「庭」のことだと思っています。
広い意味では庭先から野辺へかけての地域を「ツポ」とよんだものと解釈されます。
ですから、ツボスミレの「ツボ」は「庭先」という意味だと解釈されます。ツボスミレはつまリニワスミレ、あるいはニワサキスミレという意味だと思われます。 ツボスミレは、はじめ庭さきにはえているスミレをそうよんだものでしょうが、野辺に咲いているスミレのこともツボスミレというようになったものだと思われます。
ふつうのスミレと、このツボスミレとは平安時代から別の種類として区別されていて、万葉集でもスミレとツボスミレの二つのよび名があらわれています。
「堀川院百首」というむかしの歌の本に出てくる歌には、「はこね山うす紫のツボスミレ ニしほ三しほ誰が染めけむ」「浅茅生の荒れたる宿のツボスミレ 誰が紫の色に染めけむ」というのがあります。この歌をみてもわかるように、ツボスミレはむらさき色の花をもち、染めものに用いたことがわかります。
ツボスミレの花は、むかしの歌にもよまれているようにむらさき色の花でなければなりません。ですから、今日、ふつうの図鑑に出ているツボスミレは、むかしのツボスミレではないことになります。 それではほんとうのツボスミレは、どんなスミレなのでしょうか。今日ひろくタチツボスミレとよばれているスミレこそ、むかしのツポスミレなのです。タチツポスミレにはむらさき色の花が咲き、むかしの歌に出てくるツポスミレとぴったりします。ですから、タチツボスミレというよび名はまったく不用で、これをむかしからのよび名であるツボスミレにもどすべきなのです。しかし、タチツポ スミレという名がぶつう用いられているので、タチツポスミレでもよろしいが、むかしのツボスミレはこのタチツポスミレなのです。 ところが、やっかいなことには白い花をつけるツポスミレという名のスミレがほかにあるのです。このスミレはむらさき色ではなく小さな白い花をつけるスミレで、名は同じですがむかしのツボスミレではありません。そこで、わたしは、この小さな白い花をつけるスミレをニョイスミレ(如意スミレ)と命名し、混乱をふせぐことにしました。
ツポスミレというよび名は、むかしの人が着た衣のかさねの色目にもつかわれています。これはこの花の色素で衣を染めたからです。この衣のかさねの表はむらさきで、裏は青か、うす青だったようです。このことからもむかしの人がよんだツポスミレはむらさき色の花をもっていたもので、今日誤ってよばれている白花のツボスミレ(ニョイスミレ)ではないことは明らかです。
南禅寺山門前の石畳にカゲロウがとまっていました。
前ばねに紋があり,尾肢が3本という特徴からモンカゲロウ(亜成虫)だと思うのですが,はっきりわかりません。
調べようにも,昆虫の図鑑というのはよい図鑑が少ないですね。
昆虫は種類が多いので,全種類というのは無理なのはわかりますが,もうすこし網羅的なよい図鑑は出版されないものでしょうか。
干からびた不鮮明な標本の写真が載っている図鑑なんて役に立ちません。
一番使いやすいのは児童用の図鑑NEOですが,掲載されている種類が少ないので,これの10倍くらい種類の載っている,きれいな標本写真の図鑑がほしいです。
カゲロウという名前がつく虫には,カゲロウ目のものとは別に,アミメカゲロウ目のものがいます。
幼虫がアリジゴクの名で有名な,ウスバカゲロウはアミメカゲロウ目に属し,カゲロウとは全く別の種類です。
カゲロウ目のなかまは不完全変態で,幼虫から羽をもつ亜成虫となり,さらに脱皮して成虫となります。
一方,アミメカゲロウ目は完全変態で,幼虫から蛹となり,羽化して成虫となります。
カゲロウ目とアミメカゲロウ目があるだけでややこしいのに,古い図鑑を見ると,カゲロウ目のなかにアミメカゲロウ科というのがありました。
オオシロカゲロウなどが属しますが,紛らわしいので現在ではシロイロカゲロウ科と呼ばれているそうです。
北隆館『日本昆虫図鑑』(1950年)には,モンカゲロウについて次のように書いてありました。(原文は旧漢字です。)
大形のカゲロウで体は黄褐色,雄の頭部は黒褐色,顔面は黄色,胸背は暗褐色,黒色縦条がある。肢は黄色,前肢は基節及び転節以外は黒褐色で,ふ節・末節のみ黄白色である。翅は暗黄色透明,翅脈は太くて黒褐色,前翅中央部には前縁より肘脈まで達する暗褐色の横帯紋あり。前翅第2肘脈は基部近くにおいて第1臀脈に向かって強く湾曲し,第1臀脈は分岐せず多くの横脈によって後縁に連絡せられる。腹部は黄褐色,各側両側には黒褐色の斜条があって,その背面にあるものは太くて側縁に達し,腹面にあるものは細くて側縁に達しない。尾は3本,黄褐色。環節接合部は黒色,把持子は褐色,4節,第1節は太く,第2節は大きく曲り,交尾器は短くてその先端は広く左右に開いて2片に分れる。雌は体翅共やや淡色である。体長雌16mm内外,前翅長16mm内外,尾長33mm内外,雌はやや大形である。本州各地及び北海道に分布し,晩春羽化する。北海道では6月下旬出現する。幼虫は河川中流の砂泥底に埋れて生活する。又朝鮮に分布する。
タグ: | モンカゲロウ
家の周りにある木で,秋には赤い実がなります。
長い間ガマズミだと思っていましたが,よく調べてみるとコバノガマズミでした。
『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,コバノガマズニについて次のように書いてありました。
関東地方から西の日本各地,朝鮮,支那に分布し,日当りのよい山地に多い落葉低木。高さ1.5~2.5mになり,小枝に細毛がある。葉は対生し,長さ3~5mmの毛のある短柄があり,葉身は長卵形または卵状長楕円形で先は鋭くとがり,へりには低三角形のきょ歯があって長さ3~10cm,幅2~5cm,表裏ともに細毛がはえている。葉柄のつけ根には細小な托葉がある。初夏に1対の葉がある短枝の上に散房花序をつけ多数の小白花を開く。花冠は5裂し,長い5本の雄しべがある。花後に赤色で球形,長さ6~7mmの核果を結ぶ。本種もはなはだ変化が多く,やはり果実が黄熟するキミノコバノガマズミや葉身が広皮針形で先が目立ってとがるナガバガマズミ,葉にやや深い切れこみのあるサイゴクガマズミ,葉の表面に毛がなくて光沢があるテリハコバノガマズミなどがある。
・短い枝に「葉は対生」して生えます。[写真3]
・葉柄は「長さ3~5mmの毛のある短柄」です。[写真4]
ガマズミの葉柄よりかなり短く,見分けるポイントとなります。
・葉は「長卵形または卵状長楕円形で先は鋭くとがり,へりには低三角形のきょ歯があって長さ3~10cm,幅2~5cm,表裏ともに細毛がはえて」います。[写真3]
ガマズミより小形で,細長い形をしています。
・「葉柄のつけ根には細小な托葉」があります。[写真4]
ガマズミには,托葉はありません。
・葉の両面には星状毛・腺点が多く,葉身下部に1~2対の腺体があります。[写真5]
ガマズミの葉にも多数の腺点が散らばっていますが,腺体はありません。
・「初夏に1対の葉がある短枝の上に散房花序をつけ多数の小白花を開」きます。[写真1]
京都では4~5月に開花します。
ガマズミは少し遅く,5~6月に開花します。
・「花冠は5裂し,長い5本の雄しべ」があります。[写真2]
同じスイカズラ科のヤブデマリやムシカリの花には,花序のまわりに装飾花があり華やかですが,ガマズミ類は白い小さな両性花のみなので質素な感じがします。
・「花後に赤色で球形,長さ6~7mmの核果を結」びます。[写真6]
実の付き方はガマズミよりまばらですが,ガマズミと同様に食べることができます。
写真は10月9日(2005年)に写したものです。
ガマズミの名前について,同書には次のように書いてありました。
〔日本名〕語源はわかっていないが,スミは染の転訛で,この類ことにミヤマガマズミの果実で古く衣類をすり染めしたことと関係があろう,一説に神ッ実でオオカメノキとともに桃の渡来及びその説話と関係があろうという。