京都九条山の自然観察日記

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2009年05月28日 (木)

ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ

写真1  »写真を拡大する
左:クサイチゴ
中:ヤブヘビイチゴ
右:ヘビイチゴ
写真2  »写真を拡大する
ヘビイチゴ
写真3  »写真を拡大する
ヤブヘビイチゴ
写真4  »写真を拡大する
左:ヤブヘビイチゴ
右:ヘビイチゴ
写真5  »写真を拡大する
左:ヘビイチゴ
右:ヤブヘビイチゴ
写真6  »写真を拡大する
ヤブヘビイチゴとクサイチゴ
の断面

クサイチゴとヤブヘビイチゴとヘビイチゴ
ヘビイチゴ
ヤブヘビイチゴ
ヤブヘビチチゴとヘビイチゴ
ヤブヘビイチゴとヘビイチゴ
ヤブヘビイチゴとクサイチゴ
今の時期,見かける野イチゴ3種。
[写真1]左からクサイチゴ,ヤブヘビイチゴ,ヘビイチゴ。

クサイチゴは,名前に「草」と付いていますが,木本でキイチゴのなかまです。
大粒で,甘酸っぱくて,おいしいキイチゴです。
クサイチゴについては→2007年5月27日の記事

ヘビイチゴとヤブヘビイチゴは,名前に「蛇」と付いていて,名前を知っていれば食べる気がしないと思います。
私が子どもの頃は,ヘビイチゴには毒があるとか,蛇が食べるとかいわれていたので,誰も口にしませんでした。
(ちなみにヘビイチゴは食べてもおいしくないだけで,毒はありません。)

ヘビイチゴとヤブヘビイチゴはよく似ています。
相違点をまとめると,次のようになります

・実も葉も,ヘビイチゴの方が小さい。
→[写真5]は,実のなっている様子を,同じくらいの縮尺で並べたものです。

・ヘビイチゴの実には艶がなく,ヤブヘビイチゴの実には艶がある。
・ヘビイチゴの痩果(実に付いている粒々)の表面は凸凹でしわがあるのに対し,ヤブヘビイチゴの痩果はつるりとしていて艶々している。
→[写真4]は,実のアップを同じ縮尺で並べたものです。

・ヘビイチゴもヤブヘビイチゴも萼片の下に副萼片があります。ヘビイチゴの方はあまり目立ちませんが,ヤブヘビイチゴの副萼片は萼片より大きくて,よく目立ちます。
→[写真1]の真ん中,ヤブヘビイチゴの実の下に,緑色の葉のようなものが垂れ下がっています。これが副萼片です。右側のヘビイチゴの副萼片は小さく目立ちません。

・ヘビイチゴは日当たりのよいところ,ヤブヘビイチゴは日陰に生えることが多い。

『牧野新日本植物図鑑』(1970年)にはヘビイチゴについて,次のように書いてありました。

至る所の原野や道端にはえる多年性のほふく草本。茎は長い軟毛をかむり,花が咲く頃は短いが,結実する頃は長く地上をはい,節から新苗を生じて繁殖する。葉は互生して長い柄があり,3出複葉。小葉は卵状楕円形または楕円形,荒い歯牙状のきょ歯がある。長さ2~3cm,幅1.5~2cm,先端は鈍形,基部はくさび形,表面はやや無毛であるが,裏面は葉脈に沿って長毛がはえる。托葉は卵状皮針形,全縁,長さ7mmぐらい。春早く葉腋から,長い花柄をもった黄色花を1個出す。がく片は広皮針形,先端は鋭尖形,副がく片は倒卵状のくさび形で,先端は3裂し,がくよりもやや大形で,長い毛をかむる。花弁は広い倒心臓形,がく片とほぼ同長,そう果はごく小さく,赤色で粒状。表面に凹凸があって,熟すると,球形にふくらんだ海綿質で無味の淡紅色の細毛ある花托の表面に散在する。〔日本名〕漢名の蛇苺にもとづいて,つけられた名であろう。蛇苺は人間がこれを食べないで,蛇が食うものと考えたからであろう。俗説ではこの果実は有毒であると考えられいるが,実際は無毒である。ヤブヘビイチゴに似ているが,全形はやや小型で,果実(花托)も真紅色でなく短毛があり,そう果の表面はしわよる等の点で異なる。〔漢名〕蛇苺

ヤブヘビイチゴについては,次のように書いてありました。

至る所の藪の側,山地の林のふちなどにはえる多年生のほふく草。
茎は地上をはって長くのび,全体に絹毛をかむる。長柄をもった葉をまばらに互生する。ヘビイチゴに似ているが全形はさらに大形で,濃緑色,小葉も大きく長さ3~4cmにもなり,側小葉はさらに2裂する。小葉は卵形,先端はやや鈍形,基部は鋭尖形,支脈は斜めに平行してふちにとどき,ふちにはきょ歯がある。葉柄基部には先のとがった卵形の膜質の托葉がある。花は春に開き,葉腋から出る有毛の花柄上に1個つき,黄色。がく片と副がく片はそれぞれ5,目立って大きい。がく片は卵状皮針形でとがり,副がく片は広い倒卵形で浅く5裂し,ともに緑色。花弁は5,水平に開出し,長楕円形。雄しべは多数で黄色。花が終ってから花托は球状にふくらんで光沢のある真紅色となり,径2cmぐらいになって無毛。ヘビイチゴの色が淡く,小形で細毛があるのと異なる。その面に散在するそう果は真紅色で表面にはしわがなくなめらかである。この点でもヘビイチゴではしわがよっているのと異なる。〔日本名〕藪蛇苺。通常藪の辺りにはえるからである。
〔漢名〕鶏冠果。もとヘビイチゴに使った学名は本種に属すべきであったので改めた。

[写真6]は,ヤブヘビイチゴとクサイチゴの切断面を比較したものです。

ヤブヘビイチゴの中身は,肥大した花床部で満たされています。
栽培種のイチゴ(オランダイチゴ)と同じ構造で,食用になるのは花床の部分です。
外側にはりついている種のようなもの一つ一つが,多数のめしべが結実した果実です。
果皮と種皮の間に何もないので,痩せた果実,痩果(そうか)と言われています。

クサイチゴの実は,中が空洞です。
クサイチゴの花にも多数の雌しべがあり,受粉するとそれぞれの雌しべの子房の壁がふくらんで果実となります。
モモやウメのように,果肉の中に核があり,その中に種子があるものを核果(かくか)といいます。
クサイチゴの粒々一つ一つが核果です。

タグ:  | クサイチゴ  | ヘビイチゴ  | ヤブヘビイチゴ

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