部屋の中にハチが入ってきて飛び回っています。
刺さないだろうと思っていますが,刺すかもしれないと妻が横から言うと,少し不安になってきます。
壁に止まったところに,凍らせるタイプの殺虫剤を吹きかけました。
真っ白に凍っていますが,溶けると元の姿を回復します。
他の殺虫剤は油分で汚れてしまうので,死んだ虫をしげしげと見ることはありませんが,凍殺するとじっくりと観察することができます。
(バルサン「氷殺ジェット」は2年前に自主回収騒ぎがあり,店頭から姿を消しました。その後フマキラーから同じような商品の「瞬間凍殺ジェット」が出ています。我が家によく出没するムカデには,凍らせるタイプの殺虫剤が一番よく効くので助かります。)
このハチはジガバチの仲間で,ルリジガバチでした。
飛んでいるときは黒色にしか見えなかったのですが,よく見ると全身青い金属色をしています。
この色を瑠璃と表現したのですね。
ジガバチの「似我」の名は,大あごで巣を掘り起こすとき「ジガ,ジガ,……」と聞こえる翅音(はおと)をたてることに由来するそうです。
保育社『原色日本昆虫図鑑(下)』(1977年)には,ルリジガバチについて次のように書いてありました。
体長約20mm。体は黒く青藍色の光沢があり,まぎれることはない。巣は竹筒や木の穴につくられ,一室にクモ類の幼虫が10数匹つめこまれ,室間は泥で仕切る。産卵は巣外で行なわれ,完成された巣の入口は,鳥糞の白い部分や石灰で上塗りをする。東京付近では年1世代のことと2世代のことがある。
写真で,ルリジガバチの横に写っているのは100円玉です。
大きさを比較するために,一緒に写しました。
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〔↑ 写真をクリックすると,大きくなります。〕
アジサイの花で,近頃よく見かけるカミキリムシ。
名前を調べると,フタオビミドリトラカミキリでした。
小さなカミキリムシで,活発に動き,花から花へ飛びまわっています。
保育社『原色日本甲虫図鑑(Ⅳ)』(1984年)には,フタオビミドリトラカミキリについて次のように書いてありました。
15mm.体表の黒紋・黒色横帯は退化して全く認められないものまでの変異がある.6~8月,暖帯~温帯樹林帯の花上に集まる.黒潮の洗う沿海地方をずいぶん北まで分布する海岸気候性カミキリムシの指標種である.
海沿いに多い種類のようです。
京都府自然環境目録(鞘翅(コウチュウ)目)では,
「フタオビミドリトラカミキリChlorophorusmuscosus 府内南部では未記録 」となっていました。
京都市は「府内南部」なのかどうか,どうなのでしょうね。
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ススケヤマドリタケが出ていました。
毎年同じところに出ているのですが名前がわからなくて,一昨年ようやく名前がわかりました。(→2007年6月30日)
いつもキノコの名前を調べる時に使っている,「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」には載っていません。
保育社「原色日本新菌類図鑑(Ⅱ)」によると
傘は濃こげ茶またはほぼ黒色で,初め表面は短密毛がありビロード状。柄は初めはほぼ白~淡黄色,のち赤褐色~暗褐色となり,ほぼ同色の網目でおおわれる。
「煤け」の名前の通り,傘は「濃こげ茶またはほぼ黒色」です。
傘の表面は「短密毛がありビロード状」をしており,優雅な感じがします。
傘の裏面はイグチ科特有の管孔で,幼時白い菌糸で覆われ[写真5],成菌は黄色をしています[写真3]。
柄は「初めはほぼ白~淡黄色,のち赤褐色~暗褐色」で,網目模様が浮き出しています[写真4]。
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路上にいたベッコウヒラタシデムシ。
一瞬ホタルかなと思ったのですが,よく見ると平べったくてゴキブリのような形をしています。
オレンジ色の部分がテカテカと艶があり目立ちます。
「シデムシ」とは「死出虫」で,動物の死体やごみなどに集まります。
「ヒラタ」は,体が平ったいことから。
「ベッコウ」は,前胸部が「べっ甲」色をしていることから。
『学研生物図鑑 昆虫Ⅱ』(1990年)には,ベッコウヒラタシデムシについて次のように書いてありました。
黒色であるが,前胸背は橙赤色で,ふつう中央が暗色。上翅は黒褐色で間室は光沢が鈍く,その側片と腹部,ときに頭は藍色を帯びる。前胸背周縁・上翅間は点刻が密にある。翅端は雄では切断状,雌では会合部が角をなして突出し,その両側は斜め。平地から山地にかけてすみ,越冬した成虫は春からあらわれ,ヘビなど動物の死体やごみために集まる。
前胸部は「ふつう中央が暗色」らしいですが,この個体は黒くなっていません。
またこの個体は,翅端が切断状ではなく丸みを帯びているので,雌のようです。
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前輪を壊して不時着した飛行機のように,オナガサナエが路上に横たわっていました。[写真1]
完全に死んでいるわけではないのですが,アリが少し寄ってきています。
北隆社『日本昆虫図鑑』(1956年)には,オナガサナエについて次のように書いてありました。(原文は旧漢字)
中大にしてやや細形。黒色と黄色の斑をなすが成熟雄は緑がかる。頭部黒色,前額上部と前頭楯は黄色,前者は時に中央で切断せられることがある。上唇及び後頭楯側方には各2個の黄紋がある。胸部黒色,襟紋は黄色,「ハ」字状の黄紋がある。胸側は黄色で中央に幅広い1黒帯がある。この中に3個の黄紋を含む。腹部黒色,3-6節に黄帯を有し,7-9は雄に於いては著しく膨大する。雄の尾部上附属器は長大,最後の2腹節と等長,先端下方に屈曲し,下附器は基部で二叉し平行して延び,上附器を超え,上方に曲がって終わる。雄は体斑雌にほぼ一致するが尾部附属器は黄色,腹端節の膨出は少ない。生殖弁は三角形ですこぶる小さく第9節の1/3長,深く2叉する。緑紋はやや大型,5,6室を覆い褐色を呈する。腹長40mm内外,後翅35mm内外。本州・九州・四国(?)に産するが多くない。後翅絡室は2室から成ること本属の特徴である。
「成熟雄は緑がか」りますが,今の時期はまだ成熟していないのか,緑がかった感じはしません。
[写真6]は,2008年9月9日に捕まえたオナガサナエです。
全身がかなり緑っぽくなっています。
[写真4]は,附属器です。
附属器とは,交尾の際,雄が雌の頭部をつかんで固定するための器官です。
雌にはなく,代わりに尾毛があります。
上附属器(じょうふぞくき)と下附属器(かふぞくき)に分かれ,オナガサナエの下附属器は上附属器より長いのが特徴です。
オナガサナエは附属器が大きいため「尾長」という名前が付いています。
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南禅寺のハスが満開です。
ハスの花というのは,多くの花の中で別格の趣があります。
極楽の池に咲き乱れているイメージであったり,仏様が蓮華座に座っているイメージであったりして,犯しがたい高貴な花の印象があります。
花をこっそりと切り取って,部屋に飾るといったことは,できそうにありません。
ハスの花について,「朝日百科 植物の世界」(1997年)には次のように書いてありました。
インドの最高神のひとりであるヴィシュヌは,原初の水の中で,大蛇を寝台として眠っていた。四千ユガ(宇宙世紀)の眠りの後,彼は創造の志を起こした。その意欲はハスの形(世界蓮・ローカ・パドマ)をとって彼の臍から成長し,そのハスが花開くとそこにブラフマー(梵天)が生じ,花の台(うてな)に座して天地万物を造化した。
この壮大な世界蓮の神話において,ハスは生命発生いや世界創成の神秘的ポテンシャルをもつ原初の植物である。仏教芸術で仏が蓮華座に座し,また日本の信心深い仏教徒が死後は浄土におもむいて「蓮の台に生まれる」ことを切に願った背景には,こうした古いインド神話があることを忘れてはならない。
ところで,なぜ,蓮華なのか。
原初の世界蓮にせよ,母胎としての蓮華にせよ,三千大千世界である蓮華にせよ,また心臓としての蓮華にせよ,花あまたあるなかで,なぜハスがこれほどまでに奥行きの深い,力強い象徴となり得たのだろうか。
泥土の中から,汚れなく美しい花を咲かせるから,とはよくいわれる。だから肉に対する魂,現世に対する永遠の象徴となり得るのだ,と。それもあろう。しかしそれだけではない。ハスの花弁が著しく数多く,しかもそれが整然と並び重なって,ある確かな秩序,美しいひとつの総体,要するにひとつの「宇宙」の印象を与えるからである。しかもこの完壁に美しい秩序は,それ自体ひとつの生きものであって,硬い蕾の状態から,徐々に幾葉もの花弁を広げて開花する。収縮した心臓が膨張するように,宇宙がいくつもの劫(カルパ・非常に長い時間)を経て収縮から膨張へ向かうとされるように,未敷蓮華は人類の若かりし日の神話と宗教の形而上学のすべてのみずみずしい朝露を含んで開敷する。その花芯は大字宙の中心であり,宇宙発生の母胎であり,森羅万象を流出せしめるエマナティオ(根源的流出)の源にほかならないのである。
う~ん,何かハスってすごいな,という気がしませんか。
またその高貴な花の根が,庶民的なレンコンだというところに大きな落差を感じると同時に,ただの根っこでないところに,また偉大さを感じてしまいます。
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歩道にマユタテアカネ(雌)がとまっていました。[写真1]~[写真3]
人の目があるので,歩道に這いつくばるわけにはいかず,遠慮しながら撮っていると,すぐに飛んで行ってしまいました。
マユタテアカネについて,保育社「全改訂新版 原色日本昆虫図鑑(下)」(1977年)には次のように書いてありました。
体長35mm。♀♂とも顔に明瞭な黒斑があり,♂上付器は上にそり,♀の産卵弁は大形で腹端にとどき,先は円くて2裂する。♀の翅端は透明な形と褐色のいわゆるノシメ型とがある。池沼に発生し,成虫期6~11月。
・「顔に明瞭な黒斑」……額前面に,「眉立」の名前の由来ともなった,1対の眉斑があります。[写真5]
・「♀の翅端は透明な形と褐色のいわゆるノシメ型とがある」……雌の翅の先端は,透明なものと,褐色の斑紋を持つもの(ノシメ型)がいます。
今回の個体は,透明型。
[写真4]がノシメ型です。(2007年08月16日)
・雄は成熟すると腹部が紅色に変わり,いわゆる赤トンボとなります。雌は赤くなりません。
タグ: | マユタテアカネ
石垣の隙間で,ヤマナメクジが交尾していました。[写真1]
今までも数回ヤマナメクジの交尾シーンを目撃しているのですが,少し気持ち悪いかと思い画像を載せるのは控えていました。
ユー・チューブで少し前に,ナメクジの交尾シーンが話題になったこともあり,今回は載せてみました。
→ You Tube - Slug Sex
上記のビデオに出てくるのは,マダラコウラナメクジ(学名:Limax maximus)というヨーロッパ原産のナメクジです。
枝からぶら下がりながら,2匹のナメクジが体をからみ合わせる様は官能的です。
それに比べて,在来種のヤマナメクジの交尾はおとなしいものです。
2匹が巴形にからみ合い,互いに精子をやり取りしています。
ナメクジやカタツムリなどは雌雄同体で,1匹のナメクジのなかに雄の性器と雌の性器を持っています。
交尾の際はお互いのペニスを相手の生殖孔に挿入して精子を交換します。
巴形になって交尾しているところを見ても,どういう仕組みになっているのかよく分かりません。
2匹を離して,どこがどう接続されているのかじっくりと観察したい気もするのですが,そこまでやる勇気はありません。
[写真2]は,シイの樹幹上。(2008年9月1日)
[写真3]は,山道の地面上。(2002年9月8日)
保育社「原色日本陸産貝類図鑑」(1982年)には,ヤマナメクジについて次のように書いてありました。
ヤマナメクジ Incilaria fruhstorferi(COLLINGE,1901)
軟体は巨大で,13~16cmに及ぶ個体もある。灰褐~黒褐色で,その両側に幅広く黒縦帯があり,足部近くで淡くなる。背上の中央に黒い斑点が縦にあり,背面から側面にわたり黒~灰色の顎粒状隆起で縞模様を現している。山地性で冬期は老樹の洞穴内深くに潜入して越冬している。原産地は対馬である。本州・四国・九州に分布する。
生殖器:輸卵管の基部は著しく肥厚し,中ほどからは一様に細い。輸精管は細長く,陰茎本体の始部で陰茎牽引筋に付着する。陰茎本体はメラニン色素のところを通り反転し,透明なところを経て陰茎に移る。陰茎はやや短く,生殖腔膨大部を通り生殖腔にいたる。受精嚢柄部は腔から分岐して,始部は肥厚し,やがて細くなり,その嚢部は著大となる。
普通見かけるナメクジが4~5cmなのに対し,ヤマナメクジは10cm以上あり巨大です。
体の色もまだら模様のある褐色で,かなり不気味です。
乾燥して道に落ちていると,犬の糞そっくりです。
図鑑を見ると,ダイセンヤマナメクジもよく似ています。
ダイセンヤマナメクジは体色が淡い橙褐色で,大触覚が少し短いそうです。
写真を見ても区別がよくつかないのですが,ダイセンヤマナメクジは原生林に生息するとあるので,この辺りで見かけるのは普通のヤマナメクジだと思います
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ケヤキの根元に,ナラタケモドキが発生していました。
きれいな株で,おいしそうです。
ナラタケモドキはナラタケと同様に食用とされるキノコですが,消化が悪いため,たくさん食べると胃腸系の中毒を起こします。
「フィールドベスト図鑑14 日本の毒きのこ」(2003年)には,次のように書いてありました。
ほんのり甘いきのこ臭があり,味もよいため,食用としている地域もある,ときに消化不良を起こすことがあるので,熱を十分に通し,多量に食べないなどの注意が必要である。
ナラタケモドキはナラタケと同じく土壌伝染性病原菌で,樹木の根系に感染し,徐々に樹勢を弱らせ枯死させてしまいます。
[写真2]を見ると,ナラタケモドキが発生している部分の樹肌が黒ずんでいるのがわかります。
このケヤキもかなり弱っているのでしょうね。
ナラタケモドキはナラタケに似ていますが,柄につばがないのが特徴です。[写真4]
「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」(1995年)には,ナラタケモドキについて次のように書いてありました。
ナラタケに似ているが,柄につばがない点で区別される。傘は径4~6cm,蜜色で中央部に小鱗片が密集する。柄は長さ5~8cm,繊維状,傘とほぼ同色であるが,下部は暗色。
夏~秋,広葉樹の倒木や生立ち木の根際に多数が束生する。
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