近所の藪のなかに白い小さな花を群生させている木があります。[写真4]
ありふれた常緑の木で今まで気にしていなかったのですが,名前を聞かれてはたと困りました。
モチノキかネズミモチだろうと思っていたものの,花を調べてみると両方とも違います。
モチノキの雄しべは4本,ネズミモチの雄しべは2本なのに対して,この花の雄しべは20本ほどあります。
5枚の花弁に多数の雄しべはバラ科?
バラ科で捜すと,カナメモチが該当しそうです。
『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,カナメモチについて次のように書いてありました。
あかめもち(そばのき,かなめもち) 東海道以西の温暖の地にはえる常緑性の小高木。また生垣として人家に栽植される。葉は有柄で互生,倒皮針状長楕円形,長さ5~10cm,鋭尖頭,基部は鋭形,ふちには細きょ歯があり,葉面は緑色,革質で光沢があり,なめらか,下面は黄緑色で主脈は隆起する。葉柄は1~1.3cmぐらい。托葉は針形で早落性。新薬は紅色をおびて美しく,落葉前にはまた紅葉する。5~6月頃,枝頂に横に7~13cmもひろがる円錐花序を作って,小さな白花が群生する。花軸は無毛でなめらか,皮目がない。がく筒は短かい倒円錐形,がく裂片は三角形,花弁は広楕円形あるいは円形,基部には綿毛があって,花爪となり花が開く時にはそりかえる。雄しべは20本ぐらい。子房は半上位で2室 2本の花柱が並んで立ち基部ではゆ着している。黄色の密腺がある。果実は楕円状球形,径は5mmぐらいで先端に永存性のがく片をのこし,秋から冬にかけて紅色に熟する。〔日本名〕赤芽モチは,新葉の赤いモチノキという意味。要モチはこの材で扇のカナメを作るからであるというが,これは誤りで恐らくアカメの転訛と思われる。蕎麦の木は,この花序の白さをソバの花序になぞらえたもの。そばを稜の意味にとるのは誤りであろう。
・「花軸は無毛でなめらか,皮目がない。」
→[写真2]を見ると,花軸はなめらかです。
・「花弁は広楕円形あるいは円形,基部には綿毛があって,花爪となり花が開く時にはそりかえる。」
→[写真1]を見ると,花弁が反り返り,花弁基部に綿毛が生えているのがわかります。
・「雄しべは20本ぐらい」
→[写真3]の花の雄しべは19本。
・「2本の花柱が並んで立ち基部ではゆ着している。」
→[写真3]を見ると,2本の花柱がくっついて立っています。
・葉は「倒皮針状長楕円形,長さ5~10cm,鋭尖頭,基部は鋭形,ふちには細きょ歯があり,葉面は緑色,革質で光沢があり,なめらか,下面は黄緑色で主脈は隆起する」
→[写真5][写真6]
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5月30日夜,テングチョウの蛹が黒く変色していました。[写真2]
羽や触角が透けて見え,羽化間近です。
翌朝6時前に起きると,すでに羽化した後でした。[写真1]
(以前にテングチョウが羽化した時の様子→2006年6月10日
テングチョウ(天狗蝶)の名は,下唇鬚(かしんしゅ)と呼ばれる器官が大きく発達し,鼻が長く前に突き出しているように見えることから名づけられています。
[写真4]は,テングチョウの下唇鬚とアカタテハの下唇鬚を比べたもの。
テングチョウの下唇鬚が特別に大きいことがわかりますね。
鼻というよりサギの嘴です。
チョウの下唇鬚がどのような役割を果たしているのかよくわかっていないそうです。
『原色日本蝶類生態図鑑(Ⅱ)』(保育社・1983年)には,次のように書いてありました。
前脚は中脚・後脚に比べて短く,この点ではタテハチョウ科と同様であるが,最大の特徴は下唇鬚(かしんしゅ)が著しく長大で前方へ突出していることで,頭部の形状は特異である。ヤガ科の中に下唇鬚の発達した大群があり,これらは果汁吸収の機能的役割としての必要性から発達したものと考えられるが,蝶の場合,このテングチョウ科とアゲハチョウ科の一部(テングアゲハ属 Teinopalpus など)などのごく少数に限られており,生活するうえにどのように役立っているのかよくわかっていない。
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さすが猛禽類,存在感がありますね。
トビの幼鳥でしょうか,なんとなく普段のトビとは雰囲気が違います。
『山渓カラー名鑑 日本の野鳥』(1996年)によると
平地から低山の大木の枝上に枯れ枝を積み重ねて皿形の巣を作り,通常4~5月に2~3卵を産む。抱卵日数は30日位,巣立ちまでの日数は約40日である。
とあります。
4月上旬に産卵したとすれば,今が巣立ちの時期ということになります。
曲った大きな嘴にするどい眼。
とまっている姿を近くで見ると,トビもワシやタカの仲間だということを再認識させられます。
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近所の道を横断していたカタツムリ。
あまり見かけない種類です。
ニッポンマイマイの黒いタイプなのでしょうか。
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南禅寺の樹下にユキノシタの花が咲いていました。[写真1]
日陰に咲く,かよわい感じの花です。
花びらなどは風が吹いただけではらはらと散ってしまいそうですが,以外にしっかりとしています。
花をよく見ると,雌しべの周りに光沢のある黄色いつぶつぶのようなものがあります。[写真2]
それもまわりぐるっとにあるのではなく,上半分だけです。
これは花盤(かばん)とよばれるもので,花托(かたく)の一部が大きくなった突起だそうです。
[写真3]は,花の断面。
花托が隆起して,子房のまわりを片側だけ覆っています。
『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,ユキノシタの花について次のように書いてありました。
半常緑多年生草本で,本州,四国,九州の湿った地上や岩上に自生するが,また庭園にも栽培される。全体は長い毛におおわれほふく枝は紅紫色の糸状で長く地上を伸び,新しい株を作る。葉はロゼットにつき,長い葉柄があり,じん臓形で基部は心臓形,ふちはごく浅く裂け,低いきょ歯がある。上面は黒っぽい緑色で白っぽい脈があり,裏面は暗赤色である。花茎は高さ20~50cm,下部には葉がついていることが多い。 5~7月に茎の上部に多数の白花が円すい花序となって開く。花序には紅紫色の腺毛が密にはえる。がくは五つに深く裂け,裂片は卵形。花弁は5個あって,上の3弁は小さく,長さ3mm位。卵形で短かい柄があり,淡紅色で,渡い紅色の斑点がある。下の2弁は上弁の4~5倍の長さがあり,皮針形で白色,垂れ下る。雄しべは10本。花柱は2本。花盤は黄色。さく果は先端が2個のくちばし状である。ホシザキユキノシタ,アオユキノシタ,シロミャクアオユキノシタなどの変種がある。 〔日本名〕雪の下は多分葉の上に白い花が咲くのを雪にたとえ,その下に緑色の葉がちらちら見える形を表現して名ずけたものであろう。 〔漢名〕虎耳草。
葉について「上面は黒っぽい緑色で白っぽい脈があり,裏面は暗赤色である」とありますが,[写真5]にあるようにこの個体の葉はすべて上面は薄緑色で,裏面は白っぽい色です。
他の場所に生えているユキノシタの葉がどうなっているのか,いくつかの場所を確認してみると,暗赤色をしているものもありました。[写真6]
『朝日百科 植物の世界』(1997年)には,ユキノシタの葉について「裏面はときに暗紅色をおびる」とあるので,どの個体も暗紅色となるわけではないようです。
ユキノシタの葉の色についてネットで調べてみると,日本植物生理学会ホームページの質問コーナーに,関連する質問がいくつか載っていました。
それによると,ユキノシタの赤い色はアントシアニンによるもので,株によってアントシアニンを合成するものと合成しないものがあるようです。
「ユキノシタの葉の表皮細胞の色素が株ごとに異なるのは? 」という質問に対する回答のなかに次のように書いてありました。
ユキノシタについては、実物を調べないと原因を正しく特定することはできませんが、色の異なる株が同じような場所に混在しているとのことなので、日当たりなどの環境の差によるものではなく、株ごとに何らかの遺伝的な違いがあるのだろうと思われます。このように同一種の野生群落に赤いものと赤くないものが混在するのは、いろいろな植物で見られる事象です。分類学的に色の他に形態に種、亜種を分けるほどの差異がないのなら、変種、品種などのレベルの違いで、「成分変種」(chemotype)とも呼ばれます。
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時期的に過ぎていますが,キショウブに花について。
美術館裏にある池のキショウブ[写真1]は5月中旬に,南禅寺近くの水路のキショウブ[写真6]は5月下旬に咲いていました。
花が咲いている期間はどちらも2週間ほどの短い間で,今は咲いていません。
一つひとつの花も一日花で短い寿命です。
キショウブは『外来生物事典』(2006年・東京書籍)によると,「日本の侵略的外来種ワースト100」に選ばれている外来生物だそうです。
明治30年ころに輸入されて以来,各地で野生化して繁殖しています。
美術館のキショウブも,南禅寺近くの水路のキショウブも植栽されたものです。
岡崎付近では野生のキショウブは見かけません。
京都では賀茂川や深泥池に野生化しているそうです。
特に深泥池での繁殖は問題になっています。
深泥池は氷河期からの生き残りとされる生物と温暖地に生息する生物が共存しているという学術的に貴重な池で,池の生物群集全体が国の天然記念物に指定されています。
キショウブの他にもナガバオモダカやブルーギル,オオクチバス,アカミミガメなどの外来種の流入が問題となっており,食物網の変化により在来種に影響が出ています。
前書には,キショウブについて次のように書いてありました。
原産地 原産地はヨーロッパ。世界各地に分布している。形態と生態 黄菖蒲。抽水性の多年草。花茎の高さ60~100cm,根茎は強く,地下を横走する。1株に6~7葉がつく。葉は線形、無毛で濃緑色、100cm以上に伸びる。花茎は分岐して先端に数個の鮮やかな黄色の花をつける。花は一日花,径は約8cm,花期は5~6月。湖沼や河川などの水辺に繁茂する。乾燥に強く,畑地に群生することがある。
移入の歴史と現状 植物学者・牧野富太郎によると,1897年(明治30)頃,観賞用花卉として導入きれ,逸出して野生化した。鮮やかな黄色の花が好まれ,強健であることから全国各地で栽培され,北海道から九州にかけての広い地域で野生化している。日本生態学会は「日本の侵略的外来種ワースト100」に選定している。 ・人為的交雑種 1960年代以降,キシヨウブとハナショウブの人為的な交雑種(園芸種)がつくられている。「キハナショウブ」と呼ばれ,花色は淡黄白色。 ・利用法 ビオトープをつくる際などに利用されているが,環境省は在来種に置き換えることが望ましいとしている。水質汚染の原因である窒素やリン酸を吸収するので,水質浄化に利用しようとする研究もある。種子はコーヒー豆の代用になる。
『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,キショウブについて次のように書いてありました。
欧州原産の多年生草本で,明治30年頃(1896)輸入されて以来,性質が丈夫なので各地の池畔,湿地で繁殖し,一見自生品のようでひろがっている。地下茎は短大でよく分枝し,葉は2列生,長い剣状で,脈条は隆起し,やや軟質,幅2~3cm,長さはときには1mにおよび, 5月頃花茎を出して葉間に黄花を開く。花下に大形の2包があり,下位子房は円筒状緑色,外花被片は3個,大きく広卵形で先端はたれ下がり,基部は長い爪部となり,内花被片は3個,小さな長楕円形で直立する。花柱は基部が細く糸状であるが,急に広がって3岐し広線形で開出し,各分枝は更に2裂して狭卵形,細鋭きょ歯のある裂片に終る。 3個の雄しべは花柱の分枝下に接している。さくは多少垂れ下がり,三角柱状楕円形で先端はやや尖り,後3裂して褐色の種子を多数出す。 〔日本名〕黄菖蒲で花色が黄のことからでた。
・葉は「脈条は隆起し」ています。[写真5]
・外花被は「3個,大きく広卵形で先端はたれ下がり,基部は長い爪部とな」る。[写真3][写真4]
花被とは花冠(個々を花弁といいます)と萼(個々を萼片といいます)を合わせた用語で,特に花冠と萼が同じような形をしている場合にひとまとめに花被といわれます。
萼片に相当するもが外花被,花弁に相当するものが内花被です。
・内花被は「3個,小さな長楕円形で直立する」。[写真3][写真4]
キショウブの花をみて,花びらに見えるのはどう見ても外花被ですよね。
本来の花ひらである内花被は,ハナショウブやカキツバタ,アヤメといった他のアヤメ科の花に比べてずいぶん小形です。
・雌しべの「花柱は基部が細く糸状であるが,急に広がって3岐し広線形で開出し,各分枝は更に2裂して狭卵形,細鋭きょ歯のある裂片に終る。」
この説明を読んだだけでは,何のことをいっているのかよくわかりません。
アヤメ科の雌しべは独特の形をしています。
これは同じアヤメ科のシャガの花被をはがして雌しべだけを露出させたものです。
子房から細い花柱が伸び,三つに分かれさらに先端が細かく分かれています。
キショウブも同じように細い花柱が三つに分かれて花びらのように見えます。
多くの花では花の中心に花柱がそそり立っていますが,アヤメ科の花では中心の花柱が三つに裂けて平べったく花びらのようになって,萼の上に覆いかぶさり,雄しべを挟み込んでいます。[写真3]
シャガの花(→2010年5月13日)
カキツバタの花(→2010年5月26日)
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南禅寺の池にゴイサギがいました。
くちばしの先を水につけて開いたり閉じたりしています。[写真4]
ぴちゃぴちゃという音が聞こえて来そうです。(実際は遠くて音は聞こえなかったのですが)
何をしていたのでしょうか。
『山渓カラー名鑑 日本の野鳥』(1996年)には,ゴイサギについて次のように書いてありました。
星明かりの空をふわっふわっと飛ぶ,夜行性のサギ類。ユーラシア大陸,アフリカ,南北米大陸の温帯から熱帯で広く繁殖し,日本では本州から九州までの各地で数多く繁殖する。北方のものは冬期は暖地に移動するほか,西南日本のものの一部はフィリピン方面へ渡る。狩猟鳥。
生活 夜行性のサギ類で,昼間は竹やぶや茂った林などのねぐらで休息する。夕方,薄暗くなった頃飛び立ち,池や沼,養魚場などで魚やカエルなどを捕える。庭の小さな池などにも毎晩飛来することがある。夜通しで行動し,明け方にはねぐらへ戻る。若鳥などは時折,昼間行動することもある。繁殖期にはよく茂った雑木林,マツ林,竹林などで集団繁殖し,コサギなど他のサギ類と混合コロニーを作る場合が多い。巣は木の枝の上に作られるが, 1本の木に数つがいから10数つがいが隣合って巣を作る。巣は木の枝を粗雑に積み重ねた皿形のもので,産卵期間は4~8月,卵数は3~6個,抱卵日数は21日位,巣立ちまでの日数は28日位である。
夜行性だと書いてありますね。
今日見たのは朝7時20分頃なので,夜通し餌をとっているうちに朝がきたようです。
これからねぐらへ戻るのでしょう。
ゴイサギの名の由来について,平凡社『世界大百科事典』(2007年)には次のように書いてありました。
ゴイサギの名は,あるとき醍醐天皇の命によりこのサギを召し捕ろうとしたところ,逃げずに捕まったので,勅命にしたがったのは神妙であると,五位の位を賜ったことによるという。
醍醐天皇が五位の位を授けたという話は,平家物語に出てくるようです。
水原一校注『新潮日本古典集成 平家物語中』(1980年)「第44句 頼朝謀反」
今の世こそ王位もむげに軽けれ,昔は宣旨を向かひて読みければ,枯れたる草木も花咲き実なり,空飛ぶ鳥までもしたがひ来たる。
中ごろのことぞかし。延喜の帝神泉苑へ御幸なって,池のみぎはに鷺のゐたりけるを,六位を召して,「あの鷺取って参れ」と仰せければ,「いかでかこれを取るべきや」とは思ひけれども,綸言なれば歩みむかふ。鷺は羽つくろひして立たんとす。「宣旨ぞ,まかり立つな」と言ひければ,鷺ひらみて飛びさらず。これをいだいて参りたり。帝叡覧あって,「なんぢが宣旨にしたがひて参りたるこそ神妙なれ」とて,やがて五位にぞなされける。「今日よりのち,鷺の中の王たるべし」と札をあそばして,頸にかけてぞ放させおはします。これまったく鷺の御用にはあらず。ただ王威のほどを知ろしめされんがためなり。
もっとも,この五位鷺説話については,次のような解説が付されていました。
この話は王威礼讃に五位鷺の命名起源を併せたもので,所詮付会である。ゴイと聞える鳴き声から来た名というのが妥当であろう。広本系は特に神泉苑でのこととせず,延慶本は鵲(かささぎ)の話としているから,本来単純な挿話が起源説話に成長したものと思う。能「鷺」は平家物語によった詞章だが,祝言の芸能としては古くからあった種目ではあろう。鷺足・鷺舞など鷺の姿態が芸能に採り入れられる例があるが,平家物語にもそういう芸能性が背後に感じられる。『大風流』(上巻36頁*印参照)に「神泉苑ノ事」という演目を伝えているが,この話を扱ったものであろうか。
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色いろなところでハナショウブの花が咲いています。
[写真1]は南禅寺南陽院の門前に置いてある鉢植えのハナショウブ。
[写真6]は碧雲荘前庭のハナショウブ。
ハナショウブは原種であるノハナショウブの園芸品種です。
昔から改良がつづけられ,様々な花色があります。
『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,ハナショウブについて次のように書いてありました。
水辺などしめった地に栽培する多年生草本。高さ60~80cm位で群生する。根茎は横向で多脚的にわかれて繁殖し,下にひげ根を出す。茎は緑色,円柱形で直立し,葉を2列的に互生する。葉は直立し剣状で多少青味を帯びた緑色を呈し,隆起した中脈を持つのが特徴。初夏葉間から出す1茎はときにまばらに枝を分ち,頂に直立した2鞘包があり,包間からつぼみを出し小柄のある美花を開く。大きいものは径15cmに達し,紫,白,絞り等の色がある。外花被片の舷部は広円形,基部の中央は黄色く,中脈並びに大小多数の脈がある。内花被片がなお大きくなるものが多い。雄しべは3本で花柱分枝の背面にあり,やくは外向きで黄色。花柱分枝の先端は全縁またはきざみのある2小片に分枝し,その下に柱頭がある。下位子房は狭長。さく果は長楕円体で3片に裂開,褐色の種子を出す。原種はノハナショウブといい山野の乾地にはえ,赤紫色の花を開く。全体細長く外花被片は楕円形,内花被片は小さなへら形で直立しているので区別できる。よくこれをハナガツミというのはまちがいである。 〔日本名〕花菖蒲で花の咲く菖蒲(さといも科)の意味である。
・葉は「隆起した中脈を持つのが特徴」[写真4]
カキツバタの葉の中央には突出した脈がないのに対し,ハナショウブの葉には隆起した中脈があります。
・外花被片は「舷部は広円形,基部の中央は黄色く,中脈並びに大小多数の脈がある」
外花被の基部はカキツバタが白く見えるのに対し,ハナショウブは黄色く見えます。[写真5]
・内花被片は「なお大きくなるものが多い」というのは,ノハナショウブの内花被片が「小さなヘラ形」であることとの比較でしょうか。
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前日に親鳥が餌を運び始めていたので,翌朝(5月31日)巣箱をのぞくと,シジュウカラのヒナが黄色い口をあけて元気に鳴いていました。[写真1]
この巣箱では今季2回目の孵化です。(→2010年5月19日)
[写真2]は孵化後6日目の6月4日の様子です。
親鳥が頻繁に餌を運び,ヒナは順調に育っています。
まだ眼は開いていませんが,羽根が生え始めています。
巣箱の蓋をあけると,親鳥が来たと思い,黄色い口を精一杯大きく開きます。
この黄色いくちばしの色が,親鳥の給餌行動を引き起こす信号刺激となっているそうです。
7日目の6月5日の朝に巣箱をのぞくと,ヒナが死んだふりをしています。[写真3]
ヒナは孵化後4,5日もすると,無条件にくちばしを開くようなことはしなくなり,巣箱の蓋をあけると身を隠すように体を縮こまらせるようになります。(→2008年6月3日)
同じようにこれも身を隠す行動のひとつかなと思ったのです。
蓋があいたとたん,全羽一斉に死んだふりをしたと思ったのです。
青天の日で,明るい朝日が差し込んでいて,死の影などどこにもありませんでした。
しかし翌日見ると,擬死ではなく,本当に全羽死んでいました。[写真4]
写真を見比べると,前日とは体の位置がすこし異なります。
昨日はあれからすこし動いたようです。
親鳥が巣箱のそばで盛んに鳴いています。
時々,まだ餌を運んでいるようです。
ヒナが死んで2日後には,親鳥も寄り付かなくなりました。
[写真5]は9日後の6月14日の様子。
奇跡的に生き返っていたということはありません。
どうして前日まで元気だったヒナたちが,急に全羽死んでしまったのでしょうか。
親鳥の育児放棄ではないので,やはり病気でしょうか。
気になるのは,今回の巣作りの直前に同じ巣箱で別のつがいが子育てをしたことです。
9個の卵を産み,巣立ったヒナは8羽でした。(→2010年5月7日
1羽は孵化はしたものの,ヒナの段階で死んでいます。
他のヒナたちが巣立ちしたあと,巣のなかに死骸らしきものが残っていました。[写真6]
巣箱を掃除する間もなく,その上に別のつがいが巣作りを始めてしまいました。
これがいけなかったのでしょうか。
前のヒナの死因となった病原菌が残っていて,孵化したヒナに感染,7日後に一斉に発症,全羽を死に至らしめた,というのが素人考えです。
巣箱はシーズンが終わったらきれいに掃除して消毒しなければならない,とどこかに書いてありましたが,こういうことがあるからなのですね。
ヘビなどの外敵も怖いですが,目にみえない病原菌というのも怖いです。
合掌。
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[写真1]は,南禅寺参道のサクラの葉にくっついていたゲンジボタルです。
付近を流れる琵琶湖疎水には幼虫の餌となるカワニナが生息していて,隣接する「哲学の道」のホタルは京都市登録天然記念物に指定されています。
大場信義著『ゲンジボタル』(1988年)には,「哲学の道」のゲンジボタルについて次のように書いてありました。
ただ例外的に毎年安定して発生する生息地もある。こうした生息地は,河川環境がきわめて安定で,カワニナの生産量も十分あり,産卵場所,休息場所,飛翔空間などゲンジボタルの生息環境条件もそろっている。京都市の銀閣寺の疏水は,毎年ゲンジボタルが安定して発生する(遊磨, 1986)。この疏水は琵琶湖を水源として,取水口の水門によって完全に人為的な管理下におかれて水量調整されているために年間を通し非常に安定した水量となっている。また樹木の管理の徹底によって,ゲンジボタルの捕食者であるクモなどが少ないことが発生数を安定化させている大きな要因となっている。
[写真1]は2010年6月9日に,[写真3]は2007年6月12日に,[写真4]は2009年6月17日にどちらも南禅寺境内で撮ったものです。
南禅寺界隈では6月上旬から中旬に,成虫が発生するようです。
[写真4]のホタルは死んでいるように見えますが,死んでいるのではなく擬死という反応です。
俗にいう死んだふりで,防御行動の一種と考えられています。
幼虫も擬死をするそうです。
写真はどれも雄でした。
たまたま雄ばかりだった訳ではなくて,雌は雄の1/3ほどしか発生しない上に,川沿いの茂みの中に隠れているので,なかなか見つけることができないそうです。
ネットのニュースに「ホタル異変 交雑?東日本で「2秒型」増加」という記事が出ていました(6月28日7時56分配信 産経新聞)。
夏の風物詩、ホタルの光り方に変化が起きている。4秒間隔で発光するはずの東日本のゲンジボタルで、最近では2秒や3秒間隔で光る個体が増えているのだ。専門家らは「他地域のホタルの流入や交雑が理由として考えられる。地域固有の特性が失われる危機だ」と指摘する。
「東京都内では、ゲンジボタルの8割が2秒間隔で光る西日本型といわれている。ホタル祭りや観賞のため、遠くから違う遺伝子型のホタルを連れてきたのが原因とみられる」と日本ホタルの会の古河義仁理事は解説する。
古河理事によると、日本のゲンジボタルには6種の遺伝子型があり、東日本型と西日本型では発光パターンが異なる。東日本型は4秒間隔で光るのに対し、西日本型は2秒間隔。また、西日本のゲンジボタルは集団行動を取りやすく、ぽつぽつと飛ぶ東日本型に比べて光り方も派手だ。
ところが近年、都内の幅広い地域で2秒間隔で光るゲンジボタルが相次いで見つかっている。都内ではホテルや企業などを中心に観賞イベントが行われており、ホタルの需要が大きい。そのため、養殖業者が遠い地域のホタルを販売したりしているようだ。
ゲンジボタルに西日本型と東日本型があり,発光パターンが異なることを発見したのは前書の著者である大場信義氏です。
『ホタルの不思議』(大場信義著・2009年)には,次のように書いてありました。
私はホタルの発光する様子を特殊な超高感度装置をつけたビデオカメラを使用して野外において録画し(発光パターン録画装置),その映像を室内でコンピュータにより波形解析してきた(発光パターン解析装置)。私は全国各地に出かけ,ゲンジボタルの雄が飛んで発光するときの波形を比較した結果,西日本の集団は約2秒間隔で明滅し,東日本の集団ではそれが約4秒であり,西日本のゲンジボタルの雄はせっかち,東日本ではのんびりしていることが明らかになった。しかも単に発光間隔が異なるだけでなく,光っている持続時間が異なり,波形が大きく異なっているのである。即ち西日本では発光持続時間が短く,東日本ではその時間が倍以上長い。
私は西日本の集団を西日本型もしくは2秒型,東日本の集団は東日本型もしくは4秒型と呼ぶことにした。ただ2秒,4秒というと、これらの数値だけが注目されすぎるので,どちらかといえば東日本型,西日本型と呼ぶほうがよいと思う。
この現象を最初に記したのは1983年に出版された私の学位論文「日本産ホタルのコミュニケーション・システムの研究」(横須賀市博物館研究報告30号)であり,そしてその詳細内容は1984年に京都府立大学で開催された第3回動物行動学会大会でも発表している。
その後,研究の進展に伴い,随時,各種の出版物に紹介してきたが、そのひとつに『ゲンジボタル』 (文一総合出版)がある。