京都九条山の自然観察日記

■ 2010年10月の自然観察日記 ■

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2010年10月04日(月)

アレチヌスビトハギ

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アレチヌスビトハギ
アレチヌスビトハギ
アレチヌスビトハギ
アレチヌスビトハギ
アレチヌスビトハギ
アレチヌスビトハギ
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アレチヌスビトハギの花。[写真1]

昼間咲いた紅紫色の花は,夕方には色あせてしまいます。
朝の散歩のときに見る花は,すべて淡い青色をしています[写真2]。

アレチヌスビトハギは北米原産の外来植物で,1940年に大阪で初めて確認されたそうですが,70年の間に,本州から沖縄にまで分布を広げています。
私の散歩コースでも,いたるところで見ることができます。
これほど分布を広げる間には,一体どれほどの数のズボンに実をくっつけたのでしょうね。

1976年発行の『原色日本帰化植物図鑑』には分布状況について次のように書いてありました。

1940年大阪府で採集され,現在近畿から東海地方を中心に局所的に雑草化。

2001年発行の『日本帰化植物写真図鑑』になると,次のように書いてあります。

昭和15年に大阪で見いだされ,荒れ地,道端に広がる。関東以西に多い。

京都府外来生物情報によると,現在の分布範囲は「本州―沖縄」となっています。
被害状況は「繁殖力が強いためしばしば群生し、在来の植生を圧迫する」。
おとなしく咲いているだけで,他の農作物に害を与えることはないような気がしますが,あまりにも繁殖力が強くて,在来の植生に影響を与えてしまう生態系被害があるようです。

長田武正著『原色日本帰化植物図鑑』(1976年)には,アレチヌスビトハギの特徴について次のように書いてありました。

アレチヌスビトハギ Desmodium paniculatum(L.) DC.
多年草。茎は高さ50~100cm。葉は3小葉よりなり,小葉は幅1cmから4cmまで個体により広狭さまざま,上面はまばらに毛があり,下面は多毛で淡色。花は長さ6~9mm,がくは長さ3mmほどで先は不同に4裂,下片が最も長くて細く,上・中片は三角形,上片はさらに先が浅く2裂する。果実は扁平で,かぎ状に曲がった微毛を密生,(3)4~6節にくびれ,各節間は三角形に近く,下縁は急角度に曲がり,上縁はほぼ直線状,各節1種子を入れる。花期は秋。

葉は3出複葉で,「小葉は幅1cmから4cmまで個体により広狭さまざま」。
[写真3]は葉の表面,[写真4]は裏面。

[写真5]は,在来種のヌスビトハギの葉との比較。
ヌスビトハギに比べると,小葉の先がまるく,葉柄が短くなっています。
左側の上下は小葉の幅がかなり違うので,別の種類かなと思ったのですが,「個体により広狭さまざま」とあるので,多分どちらもアレチヌスビトハギだと思います。

実は「(3)4~6節にくびれ,各節間は三角形に近く,下縁は急角度に曲がり,上縁はほぼ直線状」で,ヌスビトハギの実が2節であるのと異なります。
[写真6]の左がアレチヌスビトハギの実,右がヌスビトハギの実です。

→ヌスビトハギ(2010年9月30日)

類似種のアメリカヌスビトハギ,イリノイヌスビトハギなども日本に定着しているようです。

アメリカヌスピトハギ D.rigjdum は果実が1~3節,節間の下縁の曲がりがゆるく,花は長さ4~5mm,イリノイヌスビトハギ D.illinoense は果実の節間はほぼ円形で花は白色。

『日本帰化植物写真図鑑』(2001年)にはイリノイヌスビトハギについて,次のように書いてありました。

イリノイヌスビトハギ[マメ科]
Desmodium illinoense A.Gray (E)Illinois tick-trefoil
 北アメリカ原産の一~多年生草本。茎は直立し,葉の裏面とともにカギ状に曲がった毛が密生する。葉は,長卵形の3枚の小葉からなる複葉,長い柄があって互生する。夏から秋にかけて茎の先端に長い花穂を出し,白色で長さ9mmほどの蝶形花を着ける。莢果は3~6節であまり深くくびれず,節間はほぼ円形。近畿地方を中心に道端や荒れ地に発生する。

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2010年10月08日(金)

ルリタテハの羽化

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左:羽化直前の蛹
右:ぬけ殻

ルリタテハ
ルリタテハ
ルリタテハ
ルリタテハ
ルリタテハ
ルリタテハ
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蛹になっていたルリタテハ(→ 2010年9月26日)が羽化しました。

9月22日に見つけたのは,蛹が2頭(…蛹1号,蛹2号)と終齢幼虫が2頭です。
幼虫は翌日に1頭が蛹化し(…蛹3号),その翌日にもう1頭が蛹化(…蛹4号)しました。

蛹1号,2号は,壊れたメトロノームのように,一日中ずっと体を振り続けていました。
こうした状態のときは,寄生バチなどに侵されている場合が多くあります。

何日間も体を振り続け,動きを止めたかと思うと,今度は体が黒ずみ出しました。
いよいよ寄生バチが蛹の体に穴をあけて脱出してくるかと,怖いもの見たさで待っていたのですが,意外なことに,蛹1号,2号とも正常に羽化しました。

蛹3号は,羽化までの13日間,おとなしくぶら下がっていました。
蛹化したのが9月23日で,羽化が10月5日です。

上の写真は,蛹3号の羽化の様子です。

[写真1]午前8時49分。
羽化開始。人口冬眠カプセルの蓋が開くように,殻が縦に裂けて,頭が出てきました。

[写真2]午前8時50分。
するりと殻から抜け出し,ぬけ殻につかまります。
翅はしわくちゃ。

[写真3]午前8時57分。
抜け殻につかまって羽が伸びるのを待っています。

葉の上へ出ようと,何度も何度も肢を繰り出すのですが,ひっかかるものがなくて,なかなか上へ上がることができません。
こういうとき,肢が4本なのは不利なような気がします。
(タテハチョウのなかまは前肢が退化していて,使える肢は4本です。)

9時18分,血のような羽化液を排出。
タテハチョウ類の羽化液は赤茶色をしています。
その後も頻繁に,透明な体液を排出しました。

[写真4]9時49分。
茎のてっぺんで羽を開け閉めしています。
(翅を乾かしているのかなと思ったのですが,翅が濡れているわけではないので,体液を翅の隅々までいきわたらせているのでしょうか)
タテハチョウの仲間は名前のように,翅を立ててとまります。
この模様は,クヌギなどの樹皮への擬態?

[写真5]10時35分。
翅を開いたところを,ようやく写すことができました。
翅は開いてはすぐ閉じるので,開いたところはなかなか写せません。

11時頃にふらふらと少しだけ飛びました。
ルリタテハが飛び立てるようになるには,羽化してから2時間以上かかるようです。

残った蛹4号は,10日間を過ぎたあたりから体を激しく動かすようになりました。
動かしすぎたのか,腹のところに裂け目ができ,体液がすこしにじみ出しました。
結局,蛹4号はうまく羽化できませんでした。

『原色日本蝶類生態図鑑(Ⅱ)』保育社(1983年)には,ルリタテハの生息地について,次のように書いてありました。

本州中部では海岸に近い平地から亜高山帯下部にかけて生息する。おもな生息地は丘陵地帯から標高1500mぐらいまでの雑木林である。生息地の林は真夏でも薄日がもれる程度で,このような林床や林縁に生えたサルトリイバラなどが幼虫の食餌植物となる。また,神社,寺院,墓地,公園,人家の庭にユリ科とくにホトトギスなどが植栽されている場合には市街地にも発生する。このような所ではとくに秋に多く見られる。

なるほど,その通りですね。

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2010年10月10日(日)

ルリタテハの寄生バチ

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ルリタテハ幼虫と繭
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ルリタテハ幼虫と繭
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羽化した寄生バチ
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羽化した寄生バチ
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繭
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繭の断面

寄生バチ
寄生バチ
寄生バチ
寄生バチ
寄生バチ
寄生バチ
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9月26日,ホトトギスの傍にはえているシャガの葉裏に,白い繭をかかえたルリタテハの幼虫がいました。[写真1][写真2]

寄生していた虫が体外にでて繭を作ったようです。
家に持ち帰り,何が羽化してくるか観察することにしました。

10月5日,たくさんの小さなハチが羽化。
体長3mmほど,長い触覚があります。[写真3][写真4]

驚いたことに,死んでいると思っていた幼虫が,すこし動いています。
生かさず殺さず,寄生バチが羽化するまでは,生かされているようです。
繭を抱えている様子は,寄生主を守っているようにさえ見えます。
(このあと5日間ほど生きていました)

このハチは何でしょうか。

『原色蝶類生態図鑑(Ⅱ)』(1983年)には,ルリタテハの天敵について次のように書いてありました。

タテハサムライコマユパチの寄生率も高く,同一地域から得た10頭前後の幼虫が全部寄生されていたことがある。この寄生蜂の幼虫はルリタテハの終齢幼虫の末期になって体外に出て繭を作る。1頭の幼虫から150~200頭の寄生蜂が羽化する。この寄生蜂の幼虫を宿したルリタテハの幼虫は終齢期が長くなり,非寄生のそれの2倍に達し,踊化できずに死亡する。

「終齢幼虫の末期になって体外に出て繭を作る」という点からして,このハチは「タテハサムライコマユバチ」か,あるいはその仲間ではないかと思います。
「1頭の幼虫から150~200頭の寄生蜂が羽化する」と書いてありますが,繭の蛹室を数えてみると52個しかありませんでした。

[写真6]は,繭を半分に切った断面。
[写真5]は,繭の周りを覆っている白い糸を取り去ったもの。

繭はかなり硬くて,指でつまんで力をいれてもつぶれません。
だから蛹室は丸い形をしているのでしょうか。
これが柔らかいと,周囲の圧力で蜂の巣のように六角形になってしまいます。

宿主の体から抜け出したたくさんの幼虫が,誰から教わるでもなく整然と積み重なって,一つの繭を作り,それを守るように宿主が抱きかかえる。
自然の不思議さを感じます。

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2010年10月13日(水)

オオバン

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オオバン
オオバン
オオバン
オオバン
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動物園北の道路脇にオオバンが死んでいました。

見つけた時はハトだと思い,見なかったことにして,そのまま通り過ぎようとしたのですが,何かが違います。

大きさはハトと同じくらいで,全身黒っぽい地味な色をしています。
ハトと決定的に違うのは,足指でした。[写真3]
ハトの細い足指とは違い,またカモ類の水かきのある足指とも違います。

調べてみると,水鳥のオオバンでした。
図鑑には足指について「足指は長く弁状で水上生活に適している」と書いてあります。
こうした足を「弁足」というそうです。

オオバンの特徴は額が白いことなのですが,横向きに寝ているので,額部分が見えません。[写真4]

『山渓カラー名鑑 日本の野鳥』(1996年)には,オオバンの分布について次のように書いてありました。

日本では主に関東地方以北の湖沼や川,池などで繁殖し,少数ながら東海地方以西でも繁殖する。東北地方北部より北のものは,それより南に渡って越冬する。九州でも冬期にはよく観察されるようになるが,これは関東地方以北のものが南下するためと思われる。

「少数ながら東海地方以西でも繁殖する」と書いてありますが,琵琶湖では1980年に初めて繁殖が確認されて以降数が増え,今ではカモ類をぬいて琵琶湖で一番数の多い水鳥となっているそうです。

滋賀県琵琶湖環境科学研究センターのサイトには次のように書いてありました。

オオバンは、これまで冬にごく少数が観察されるだけであった。ところが、琵琶湖尾上近辺のヨシ原で1978年ごろから数百羽のオオバンが越冬をはじめ、1979年からは繁殖をはじめた。1981年には、かなり高密度でオオバンが営巣していることが、西日本ではじめて確認された。オオバンの繁殖は、南湖の赤野井付近のヨシ原でも観察されている。

最近の状況についてバードリサーチニュース概要版2010年3月号には次のように書いてありました。

琵琶湖では2005年の調査開始以来オオバンの増加が著しく,今年1月の調査では3位のヒドリガモ,2位のキンクロハジロを押さえて,琵琶湖で一番多い水鳥になっていることなどが分かってきています。

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2010年10月15日(金)

アカタテハの羽化

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蛹便
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アカタテハ
アカタテハ
アカタテハ
アカタテハ
アカタテハ
アカタテハ
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10月13日にアカタテハが2頭,羽化しました。

10月3日と10月4日に蛹化していたものです。
早く蛹化していた方が,前日から体をはげしく動かし続けていました。
殻を破ろうとしているのに破れなくて,もがいている感じです。
羽化できないのではないかと心配して見ていたところ,ふと気付くと,もう一頭の蛹の方が羽化し始めました。

[写真1]9:45

無事に羽化した姿が[写真3]です。

もがいていた蛹は疲れたのか,動くのをやめました。
このまま羽化に失敗しそうです。

ところが午後に見ると,何事もなかったかのように,この蛹も羽化しているではないですか。
[写真4]14:46
面白いことに,羽化した後もおしりを絶えず振っています。

[写真5]は,カラムシの葉についていた蛹便(ようべん)です。
蛹便とは,蛹だった間にたまった老廃物です。
羽化後,体外に排出されます。
アカタテハの蛹便は血のような赤茶色です。

[写真6]は,顔のアップ。
・前肢
タテハチョウ類の前肢は退化し,胸にくっついています。
肢が4本しかないように見えます。
・口吻
口吻(こうふん)は,羽化したてのときは2本に分かれています。
それを巻いたり伸ばしたり,繰り返しているうちに,1本のようにくっつきます。
・偽瞳孔
チョウのなかまには,複眼に瞳のような模様があるものがいます。
これを偽瞳孔(ぎどうこう)といい,死ぬと消えてしまいます。
・下唇髭(かしんしゅ)
チョウの鼻のように見える部分。
種類によって大きさは違いますが,アカタテハは割と目立ちますね。

[写真1]と[写真4]では,止まり方がすこし違います。
[写真4]は,腹部を翅のあいだにはさみ込み,体をできるだけ小さく見せようとしています。
木の葉に擬態しているのでしょうか。

2頭とも外に放してやると,秋の高い空に,元気に飛んでゆきました。

→アカタテハの羽化の様子

タグ:  | アカタテハ

2010年10月19日(火)

キツネノマゴ

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花
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穂状花序
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茎と葉
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雄しべと雌しべ
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茎断面

キツネノマゴ
キツネノマゴ
キツネノマゴ
キツネノマゴ
キツネノマゴ
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庭の草むしりをしていると,キツネノマゴに花が咲いていました。

名前にキツネとついている植物はたくさんあります。
キツネノエフデ,キツネノオ,キツネノカミソリ,キツネノテブクロ,キツネノロウソク……。
名前にキツネとつくだけで,優しい感じがしますね。
キツネノテブクロなどは,新美南吉の童話「手袋を買いに」を連想し,ほのぼのとした気持ちになります。

「キツネの孫」の名前の由来については,小さな花を密集させた穂状(すいじょう)花序(かじょ)をキツネの尻尾に見立てたらしいというだけで,本当のところはよくわからないそうです。
「牧野新日本植物図鑑」にも名前の由来は載っていませんでした。

長田武正『原色野草観察検索図鑑』(1981年)には,キツネノマゴについて次のように書いてありました。

人里の道ばたに普通な1年草。基部が地に倒れて多くの枝を出し,高さ10~40cm。葉は対生してきよ歯はない。花は密集して長さ2~5cmの穂となり,がくとほぼ同長の苞がまじるので穂がこみ合って見える。花冠は長さ7mm,上下2唇に分かれ,上唇は白色,下唇は淡紅色で白斑がある。おしべは2個,それぞれのおしべに縦に並んだ葯室2があって,下方の葯室には距がつく。花柱の先はかすかに2裂する。

葯には距があると書いてあります。
[写真4]を見ると,確かに雄しべには葯室が縦に二つ並んでいて,下の葯室からは,白いものが下に突き出しています。
これが距(きょ)です。

距とは花冠やがくの一部が管状に突き出したものをいい,距を持つ花は少なくないのですが,葯に距がある花はあまりないと思います。

この距は何のためにあるのでしょうか。

『フィールドウオッチング 8』(1992年・北隆館)には,次のように書いてありました。

2本の雄しべは左右から花冠の先端まで伸びてきてそこに葯をつけている。葯は2個の葯室に別れており,それぞれの葯室は防災頭巾のような形で下に白い柄のような突起がある。昆虫に特ち去られて花粉が少なくなった花を使い,昆虫が訪れた様子を想定しピンセットの先を花に挿入してみた。ピンセットが突起を押すと,葯室の中から花粉が出てきた。突起を押すと葯室がひしゃげ,葯室の容積が減って花粉が押し出されることになるらしい。

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2010年10月24日(日)

ジョロウグモ

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ジョロウグモ(♀:成体)
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ジョロウグモ(♀:幼体)
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ジョロウグモ(♀:成体)
上方♂
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ジョウロウグモ(♀と♂)
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ジョロウグモ(♂)
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ジョロウグモ(♀腹面)

ジョロウグモ
ジョロウグモ
ジョロウグモ
ジョロウグモ
ジョロウグモ
ジョロウグモ
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ジョロウグモの巣が目立つ季節になりました。
山道で上を見上げると,道をまたぐように大きな網が張られています。

でもなんだか,ジョロウグモの巣は雑然とした感じがしますね。
主網の前後にも,乱雑に糸が張り巡らされているためでしょうか。

ジョロウグモの網は3重構造になっているそうです。
新海栄一著『ネイチャーガイド 日本のクモ』(2006年)には次のように書いてありました。

樹間,草間に目の細かい円網を張る。網は主網と,その前後に糸を引き回したバリアーと呼ばれる網とで三重構造になっている。主網は幼体期は円網であるが,成長に伴い下部が大きくなり,全体的に馬の蹄のようなに見えることから蹄形円網と呼ばれる。

網の中心にいる,派手な色をした大きなクモが雌です。
雄は雌の1/3程の大きさで,同じ網の隅っこの方にいます。[写真4][写真5]

雄のクモが雌より小さい理由について,興味深い記事が wiredvision に載っていました。
→wiredvision 2010年8月20日

オスのクモはメスのクモに比べて体が小さいことが多いが、それはなぜだろうか。この疑問はダーウィンの時代から生物学者たちを悩ませてきた。これまでの学説としては、大型のメスのほうがより多くの子孫を生み出しやすいというものだったが、メスとオスのサイズの違いを説明しきれるものではなかった。

このたび、この理由の一部は、オスのクモは体が小さい方が移動しやすく、遺伝子を広げやすいからだという研究が発表された。

『BMC Evolutionary Biology』で8月2日(米国時間)に公開されたこの研究は、スペイン科学研究高等会議(CSIC)の進化生物学者であるGuadalupe Corcobado氏に率いられた研究者チームによるものだ。

研究者チームは、さまざまなクモを風洞の中に置き、「橋を架ける」能力を調べた。つまり、糸を送り出し、風に乗せて別の地点に着地させ、そこへと渡る技能だ。その結果、クモは小さい方がより頻繁に架橋を行なうこと、また、性別によってサイズが明確に異なるクモにおいて、架橋行動がより頻繁であることがわかった。

Corcobado氏はプレスリリースで、次のように述べている。「架橋が移動手段として一般的である種においては、小さなオスは、架橋をより効率的に行なうことで交尾の機会が多くなり、受け入れてくれるメスにたどり着く競争の強者となる」。「これが、オスの大きさが小さくなる選択圧になっている可能性がある」

[写真6]は,雌の腹面です。
ヒョウ柄を思わせる強烈な色彩ですね。
自然界では黄色と黒色の組み合わせは,危険を知らせる警告色です。
それに赤色まで加わっています。
獲物を待ち伏せするためには,できだけ目立たない地味な色にしておく方がよいように思うのですが。

そういえば,コガネグモなど空中に網を張る大型のクモはみな,黄色と黒色の警告色をしていますね。
これは鳥への警告色なのでしょうか。(実際に毒はないので,いわゆるベイツ型擬態?)
空中に長時間身をさらしているのにもかかわらず,ジョロウグモが鳥に食べられるというケースはあまりないような気がします。
鳥がジョロウグモを食べないことと,この派手な色彩とは関係があるのでしょうか。

タグ:  | ジョロウグモ

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連続写真

連続写真による観察記録

  • 目次
    • キアゲハの蛹化
    • キアゲハの羽化
    • アオスジアゲハ羽化
    • テングチョウ羽化
    • アカタテハの羽化
    • クマゼミの羽化
    • アブラゼミの羽化
    • オトシブミ揺籃