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ヒメコウゾの花が咲いています。
ヒメコウゾには雄しべだけを持つ雄花と,雌しべだけを持つ雌花があります。
雄花と雌花は,同じ株につく雌雄同株(しゆうどうしゅ)です。
[写真1]のように,今年のびた新しい枝の基部に,雄花が球形に集まった雄花序(ゆうかじょ)が,上部に雌花がこれも球形に集まった雌花序(しかじょ)がつきます。
雄花序は,蕾のときには,一見実のように見えますね。(初めて見た時には,これが実だと思っていました。)
雌花序はボールに長い毛がはえたような形をしています。
虫を惑わす美しい花弁や甘美な蜜など,虫を誘う要素が全くないのは,風媒花だからです。
雄花も雌花も小さくて構造がよくわかりませんが,『牧野新日本植物図鑑』(1970年)によると「おばなにはがく片4個,おしべ4個がある。めばなは2~4個の切れ込みのある筒状がく,有柄の1子房,糸状の花柱1個がある。」とあります。
[写真4]は,雌花序の断面。
ごちゃごちゃしていて,1個1個の花にある「2~4個の切れ込みのある筒状がく,有柄の1子房」は見わけがつきません。
[写真5]は,子房が膨らんだ雌花序の断面です(2008年6月1日)。
枝は手折ると,ぽきりと簡単に折れるのですが,樹皮がちぎれません,
無理やりに折りとろうとすると,ずるずると皮がむけて,切り離すことができません。[写真6]
手で引きちぎろうとしても,どうしてもできません。
あたらめてコウゾの樹皮の強靭さに驚きました。
コウゾは和紙の原料として有名ですが,綿の繊維が使われるまでは,衣料の原料としても大事なものだったそうです。
「コウゾ」の名は,和紙の原料とするための栽培種をさし,自生種は「ヒメコウゾ」というそうです。
平凡社『日本の野生植物 木本Ⅰ』(1999年)には,次のように書いてありました。
コウゾB. kazinoki x B. papyrifera(PL.107-1-2)は,カジノキとヒメコウゾの雑種で,カジノキに近いものとヒメコウゾに近いものとがある。栽培して和紙の原料とするのはカジノキに近いもので,葉の形はカジノキに似ていて雌雄異株であるが,若枝の毛は少なく,托葉は披針状長楕円形,葉の表面に点状毛があってざらつくが,カジノキのように短毛があってひどくざらつくことはない。ほとんど果実をつけない。ヒメコウゾに近いものは,葉の形はヒメコウゾによく似ていて雌雄同株であるが,若枝の毛が多く,葉柄は長さ1-2cmで長く,葉身は広卵形で幅が広く,裏面は毛が多く,花柱は長さ6-7mmでヒメコウゾより長いなど,カジノキの性質が入っている。人家近くの林中に見かける。
普通,植物の名の「ヒメ(姫)」は,よく似ているがそれより小さい場合に付けられます。
ヒメコウゾもコウゾよりも小さいため「ヒメ」の名がついているのでしょうが,もともとの自生種がヒメコウゾならば,雑種であるコウゾの方を「オニコウゾ」とでも呼べばよいように思えるのですが。
サトザクラの樹下に,たくさんの花が落ちていました。[写真1]
蜜をねらったスズメの仕業かなと思ったのですが,花には花柄もついています。[写真2]
[写真3]をみると,花柄の付根からきれいに切り離された感じです。
スズメの仕業なら,[写真5]のように萼筒部分が切断されているはずですね。
(→2008年4月3日)
サクラの花びらは,やはり風に舞いながら一枚一枚散る方が風情があります。
八重の花がそのまま,それも花柄をつけたままなんて……。
タグ: | サトザクラ
マツに花が咲いています。
被子植物は雄しべと雌しべを一つの花に備えた両性花が普通ですが,裸子植物はすべて単性花のようです。
マツも雄花と雌花があり,両方が同じ木につく雌雄同株(しゆうどうしゅ)です。
雌花は,新しく伸びたシュート(茎葉)の先につきます。[写真1]
たくさんの鱗片がらせん状につき[写真3],鱗片の一つ一つの内側に胚珠がついています[写真4]。
全体を雌花穂(しかすい),雌花序(しかじょ),球花(きゅうか)などと呼びます。
これが大きくなったものが,マツボックリです。
雄花は,新しく伸びたシュートの基部につきます。[写真2]
雄花は,たくさんの葯が集まった雄花穂(ゆうかすい)です。
[写真5]は雄花穂の断面。
裸子植物はほとんど,風に花粉を運んでもらう風媒花です。
マツも風媒花ですが,マツの花粉には風に運ばれやすくする特別な仕掛けがあります。
気嚢と呼ばれる空気の袋があるのです。
[写真6]は,おもちゃのデジタル顕微鏡(中国製)で見た,マツの花粉です。
二つの気嚢がカマキリの複眼のようですね。
タグ: | マツ
カラムシの葉に,アカタテハの巣がたくさんできていました。[写真2]
アカタテハの幼虫は,食草であるカラクサやヤブマオの葉を折りたたみ,合わせ目を吐き出した糸で綴じ合わせて巣を作ります。
白い葉裏が表にでているので,よく目立ちます。[写真1]
幼虫は巣の中に姿を隠したまま,葉の下の方から食べてゆきます。
天敵に身をさらさずにゆっくりと食事できるので,なかなかよい方法だと思いますが,巣の中を覗いてみると,空の巣も多いのはどういう理由でしょうか。
天敵にやられたのか,食べ飽きて次の葉に移ったのか。
[写真3]と[写真4]は,巣の中にいた幼虫。
3~4齢?
[写真5]は,同じ場所にいたフクラスズメの幼虫です。
フクラスズメはヤガの仲間で,アカタテハと同じく,カラムシやヤブマオを食草としています。
[写真6]は,アカタテハの羽化したての成虫です。(2010年10月13日)
今までに,アカタテハのことを取り上げた記事
→2010年10月15日
→2008年5月30日
→2007年12月8日
→2007年10月29日
→2006年5月31日
→2006年5月28日
カラムシについて
→2008年10月14日
塀にオオミズアオがとまっていました。
オオミズアオはヤママユガのなかまで,成虫の口吻(こうふん)は退化していて,何も食べません。
7~10日の寿命だそうです。
触角の形は,他のヤママユガのなかまと同じように,雄が羽毛状で,雌は両櫛歯状。
[写真4]を見ると,羽毛状の触覚をしているので,この個体は雄ですね。
比較のために雌の触覚の写真を載せようと思って,今までに写したオオミズアオの写真を見直してみたのですが,どういう訳か全て雄でした。
今までの撮影日
・2010/8/23(記事→2010年8月11日)
・2010/8/5
・2009/6/25(記事→2009年6月25日)
・2009/6/17(記事→2010年6月22日)
・2005/9/4(記事→2005年9月4日)
・2003/9/1(記事→2003年9月1日)
オオミズアオの個体数は,雄の方が多いのでしょうか?
試しにGoogleの画像検索で「オオミズアオ」と検索してヒットした,画像の雌雄を調べてみました。
雌雄が識別できる画像の,最初の100件のうち,雄が72件,雌が28件でした。
やはり,オオミズアオは雄の方が多いのでしょうか。
タグ: | オオミズアオ
子供のころ,父が神棚に松を飾る時に,荒々しい感じのする方が男松(おまつ),柔らかい感じのする方が女松(めまつ)と教えてくれたことを覚えています。
長いこと,男松と女松は,同じ種類のマツの雄木と雌木だと思っていました。
マツが雌雄同株だとしってからは,父が教えてくれた男松と女松とは一体なんだったのかと,ずっと心の片隅にひっかかっていました。
ところが少し前に,門松のことを調べていたら,松飾りは左側に男松,右側に女松を飾るとあるではないですか。
男松と女松は,昔から使われていた一般的な呼称だったのです。
男松とはクロマツのこと,女松はアカマツのことでした。
日本に自生するマツ属には7種ありますが,主なものはクロマツとアカマツの2種です。
クロマツは主に海辺周辺に,アカマツは低山地に生育します。
クロマツは,アカマツより大柄で,枝も葉も太くて長く硬いので,荒々しい感じ,一方アカマツは肌が赤く,立ち姿も優しい感じがします。
対照的なこの2種を,陰と陽,男と女に例えたのは当然かもしれませんね。
[写真1][写真2]は,アカマツとクロマツの立ち姿。
南禅寺と周辺のお屋敷のマツは,ほとんどがアカマツです。
平安神宮前と動物園前の街路樹はクロマツでした。
[写真3][写真4]は,アカマツとクロマツの枝葉。
アカマツの方が,柔らかい感じがします。
[写真5]は,樹肌の比較。
名前の通り,アカマツは赤い肌を,クロマツは黒い肌をしています。
[写真6]針葉の比較。
個体差はありますが,アカマツと比べると,明らかにクロマツの方が長くて太くて硬いです。
南禅寺周辺のマツを見てまわっていて,気づいたことがあります。
たとえば碧雲荘の表門,向かって右側にクロマツが,左側にアカマツが植えられています。
そう思って,南禅寺山門を見ると,周辺にはマツがたくさん生えていて紛らわしいものの,門の右と左の対称的な位置にクロマツとアカマツが1本ずつ植えられています。
民家の門にも,右側にクロマツ,左側にアカマツが植えられているところがありました。
正月の松飾りと同じように,門の左右に男松,女松を植える習慣があるようですね。
ジョギングの帰り道,家の近くにサルがいました。[写真1]
サザンカの葉?を食べているようです。
横を通らないと帰れません。
襲ってきたらいやだなと思いながら近づくと,サルは知らないふりをして,目を合わせません。[写真2]
手の置きぐあいなど,あなたのことなど気にしていませんよという,その仕草がいかにもわざとらしくて,笑えてきます。
通り過ぎて,振り返ると,サザンカに手を伸ばして,また食べ始めていました。[写真3]
サザンカの前に佇むサルを見て,思い出した感じがあります。
以前,道脇のケンポナシの花を撮るため,カメラを花に近づけていた時のこと,細い道の向こうから足音が近づいてきます。
ご近所の人なら,朝の挨拶をしなければと思いつつも,知っている人なら向こうから挨拶してくるだろうと,そのままカメラから目を離さずにいました。
すると足音は背後を通って,そのまま通り過ぎて行きます。
誰だったんだろうと,カメラから目を離して,通り過ぎた人を眼で追うと,1匹のサルが歩みをとめて,こちらを振り返りました。
無表情な目で一瞥すると,何もなかったかのように,また前を向いて歩きだしました。
日常と非日常が一瞬交錯するような不思議な感じ。
今回も,この感じですね。
今までのサルの記事
→2007年5月13日
→2006年12月31日
→2006年10月23日
→2006年8月17日
→2005年9月30日
タグ: | サル
道の片隅にヒメウラナミジャノメが死んでいました。
翅がかなり傷んでいます。
ヒメウラナミジャノメは幼虫で越冬するそうです。
保育社『原色日本蝶類図鑑』(1976年)には,次のように書いてありました。
暖地では通常年3回発生で, 4月中旬~9月下旬に姿がみられる。10月に4化の現れることもある。高地・寒冷地では1~2回の発生にとどまる。成虫は一般に樹林内やその周辺を好むが,山地の草原など明るいところにもよく現れる。飛翔はゆるやかで,軽快にはねるような感じがする。ヒメジョオン・キツネノボタン・ニガナ・カタバミなどの花で吸蜜する。越冬態は終齢幼虫で,幼虫は地面におりて落葉などの間で冬を過ごす。
この個体も今春,羽化したものでしょうが,もう寿命なのでしょうか。
「ヒメウラナミジャノメ」という名前は,一読しただけでは意味がわかりません。
漢字で書くと「姫+裏波+蛇の目」で,「姫」は小さいという意味,「裏波」は翅の裏面に波模様があることから,「蛇の目」は翅に眼状紋があることからきています。
ジャノメチョウの仲間では,全国的にもっとも普通にみられる種類だそうです。
[写真4]は,翅がきれいな個体。(2008年8月29日)
[写真5]は,朝陽で体を温めているところ。(2005年5月10日)
雄と雌の見分け方について,前書には次のように書いてありました。
♀は♂に比べ翅形がまる味を帯び,翅表の地色はやや淡く,前翅表の眼状紋の周囲の黄色環は幅広く,眼状紋の周縁には淡く波状の地紋が現れる。
これによると,[写真4]は雌のように見えますが,はっきりわかりません。
タグ: | ヒメウラナミジャノメ