動物園の塀に,チョウが1頭とまり,風を必死にこらえていました。
ヒョウモンチョウの一種だろうと図鑑を調べましたが,なかなかわかりません。
タテハチョウのなかまには間違いないのですが……。
図鑑を1枚ずつめくっていると,ありました。
コムラサキの雌です。
コムラサキの雄は,名前のとおり翅に紫色の金属光沢がありますが,雌にはないのですね。
保育社『原色日本蝶類図鑑』(1976年)には,コムラサキについて,次のように書いてありました。
〈生態〉通常年3~4回。5月下旬から9月にかけて姿をみせる。北海道や高地・寒冷地では年1~2回,7~8月に出現する。
成虫は河川にそったヤナギ類の多く生える樹林,都会地ではヤナギ類の多く植えられた公園・社寺の境内などに棲息する。飛翔は敏速で,梢上を滑るように飛ぶ。クヌギ・コナラ・ヤナギ類などの樹液や湿地・汚物などにも飛来するが,訪花することは少ない。
越冬態は2~5齢幼虫で,黒褐色に変色した幼虫は食草の小枝の分岐部や樹皮のさけ目などに静止して冬を越す。
〈食草〉市街地ではシダレヤナギ・ウンリュウヤナギなど栽培種が食草となる。そのほか,コゴメヤナギ・オノエヤナギ・バッコヤナギなど多くのヤナギ科を食べる。 〈雌雄の区別〉♂の翅表は紫色に輝き,♀はこの紫色の幻色がない。
タグ: | コムラサキ
路上に,キイロスズメバチの死骸が点々と落ちていました。
数えてみると,56頭もありました。
この場所は,2年前の8月末に,通学中の中高生など50人近くがキイロスズメバチに刺されたところです。
17人が病院に搬送され,かなり大きなニュースになりました。
近くに石垣があり,その中に巣があったようです。
今回も,ひょっとしたら近くに巣があって,早めに駆除されたのかもしれません。
キイロスズメバチは体長は25mmほどと,体はそれほど大きくありませんが,巣は直径 50cmほどの球形をした大きなものをつくります。
[写真6]は,9年前に近所の家の軒下にあったキイロスズメバチの巣。
死骸を見ると,体に損傷はないのですが,多くは毒針を出したまま死んでいます。
何かを攻撃していたのでしょうか。
ハチの毒針は,産卵管に由来したものなので,雄には毒針はありません。
といっても,スズメバチの働きバチは全部雌なので,スズメバチはみんな刺すと思ったほうがよいようです。
タグ: | キイロスズメバチ
キイロスズメが石垣の上にとまっていました。
すこしビビりながら,横に物差しを置いて,大きさを測ってみました。[写真1]
ガはチョウと違って,基本的にじっとおとなしくしているので助かります。
前翅の長さ50mm。
前回の話題がキイロスズメバチ(→2011年9月7日)で,今回がキイロスズメ。
紛らわしいですね。
スズメは身近な鳥なので,昔から色々なたとえによく使われています。
「雀の涙」「雀の角(つの)」という言葉のように,小さいもののたとえに使われることが多いようです。
植物の名についても,例えばスズメノエンドウ,スズメウリ,スズメノテッポウ,スズメノヤリなど,ほとんど小さいもののたとえに使われています。
しかし虫については,スズメほどの大きさがあるというのは,逆にそれ程大きいことを意味します。
スズメバチやスズメガのスズメは,スズメほどにも大きいという意味です。
紛らわしいのは,スズメガのなかまでは,キイロスズメやベニスズメなど,標準和名では「ガ」が省略されていることです。
キイロスズメ「ガ」やベニスズメ「ガ」ではない訳で,これでは黄色い雀や紅色の雀がいたら,蛾なのか雀なのかどちらのことかわかりません。
実際にベニスズメという雀がいて,紛らわしいです。
そういえばヤマトシジミもそうですね。
シジミ貝の代表的な種類であるヤマトシジミと,シジミ蝶の代表的な種類であるヤマトシジミ。
どちらも「大和」という大看板を背負っている,日本を代表する種なのですが。
タグ: | キイロスズメ
ネムノキの周りを数頭のキチョウがゆらゆらと飛び回っていました。
どういう訳か,どのチョウも枝に付いている1個の蛹をねらっているようです。
1頭が蛹にとまって,自分のものだとばかりに,抱きつきました。[写真1]
他のチョウは,羨ましいげにまわりを飛び回っています。
(といっても,攻撃的でなくて,のんびりとしたものです。)
以前に,羽化したばかりの雌と交尾している雄がいました。[写真6]
→2005年9月21日
このキチョウも雄で,雌が羽化するのを,待ち構えているのかもしれません。
この蛹が雌だとしたら,外見からは雌かどうかはわからないので,フェロモンか何かを放出しているのに違いありません。
羽化したばかりの雌に交尾している雄を見たときには,気の早い雄だと思ったのですが,蛹の段階で雌が誘引物質を出しているとしたら,羽化したらすぐに交尾する習性のようです。
この蛹が雌かどうか,持ち帰って羽化を待つことにしました。
しかし,寄生されていたらしく,しらない間にペシャンコになっていました。
翌日に付近で採取した,いかにも羽化直前といった蛹[写真5]も,カメラをセットして長時間待っていたものの,結局羽化しませんでした。
終齢と思われる幼虫[写真4]も,飼育を開始して2日後に死亡。
成虫も捕えて翌日に死亡[写真2]。
他のチョウでは,こんなに死ぬことはないので,キチョウはよほど弱いのかと,ネットで調べてみると,キチョウが特に飼育困難というわけではないようです。
保育社『原色日本蝶類図鑑』(1976年)には,キチョウについて次のように書いてありました。
〈生態〉多化性。発生回数について確実な観察記録はないが,年5~6回の発生と推定される。成虫越冬。通常第1化は5月中旬,寒冷地では6月にはいって姿をみせる。飛び方はゆるやかで,好んで低山地の草原,渓流ぞいの草地,路ぱたに棲息し,多くの花で吸蜜する。湿地や汚物に群れをなして集まる。
〈食草〉マメ科のネムノキをもっとも好む傾向があるが,地域によってはハギ類を好むこともある。そのほか,ハリエンジュ・エビスグサ・ナンパンサイカチ・ハマセンナなど。クロウメモドキ科のクロウメモドキ・ヒメクマヤナギでも卵や幼虫が採集されている。
〈雌雄の区別〉各季節の型を通じて,それぞれ♂の地色は黄色,♀は淡黄色。♂には前翅裏面下縁近くに性標がある。翅表外縁に黒帯のある型の場合は♀の黒帯が♂よりも発達する。
タグ: | キチョウ
道のわきにヒヨドリが死んでいました。
裏返してみると,腹に外傷があります。
カラスか何かに襲われたのでしょうか。
[写真4]は,生きているヒヨドリ。
→2005年1月11日
山と渓谷社『日本の野鳥』(1996年)には,ヒヨドリについて次のように書いてありました。
平地の都市部から山地の森林まで,樹木のある環境ならいたる所に棲息している。市街地の街路樹や公園の木に営巣するようになったのは1970年以降のことで,都市化への適応の例として注目されている。樹木の込み合った枝の中やつるのからんだ所に営巣し,人里近くではビニールひもなどを巣材によく使う。産卵期は5~6月,卵数は4~5個である。繁殖期にはコガネムシ,カマキリなどの大形の昆虫を好んで捕えるが,秋冬の主な餌は柔らかい果肉を持った木や草の液果である。実は丸飲みされ,種子は糞とともに排出されるので,ヒヨドリによって遠くへ運ばれることになる。またヤブツバキの蜜を好んで吸い,花粉を媒介する。時には畑の野菜や果樹に被害を与えることもある。
タグ: | ヒヨドリ
動物園の塀に,オニグモが網を張っていました。[写真1][写真2]
カメラを近づけすぎたら逃げるかなと思ったのですが,すぐそばまで寄っても,全然反応を示しません。
クモは8個も眼をもっているので,視覚は優れているような気がしますが,実は,クモの視覚は一般的にあまりよくないようです。
平凡社『動物大百科 第15巻 昆虫』(1987年)には,次のように書いてありました。
クモの眼は頭胸部の前の方についている。昆虫や甲殻類などと違い,すべて単眼である。ほとんどのクモは,この単眼を8個もっている。しかし一部のクモを除いて,一般に視覚は悪く,ほとんどの種は,周囲の気配を,空気,地面,水面,網などの振動をとおして〈聞いて〉いる。ハエトリグモ類とメダマグモ類の視覚はきわめて発達している。
造網性のクモは視覚が弱く,徘徊性のクモは視覚が発達しているということのようです。
確かに振動には敏感で,ほんの少し網に触れただけで,とたんに反応しました。
振動の種類から,餌が引っ掛かったのではなく,外敵がやったきたとわかるのでしょうか,そそくさと網を上って煉瓦のはりだしに身をひそめてしまいました。[写真3]
新海栄一著『日本のクモ』(2006年)には,オニグモについて次のように書いてありました。
体長:♀20~30mm ♂15~20mm
出現期:6~10月
網型:正常円網
分布:北海道,本州(5),四国,九州,南西諸島
家の周りに見られる黒色の大型グモ。人家,神社,寺院など建物の周囲に多い。軒下に大型の正常円網を張り,昼間は軒下や建物の隅に潜んでいる。夕方から活動を始め,張ってあった網を,破損の状態によって2~3日お気に張り替える。
この個体は体長20mmほどなので,♀としては小さいようです。
クモの雌雄は,触肢の形で見分けることができます。
触肢の先が細ければ雌,ふくらんでいれば雄。
雄の触肢は,精子を一時的に貯えておく生殖器官となっているのです。
平凡社『動物大百科 第15巻 昆虫』(1987年)には,次のように書いてありました。
クモのオスは,メスより小さく,体が細く,歩脚がやや長いのが一般的であるが,成熟したオスであれば触肢(しょくし)の先に,メスにはみられない複雑な構造をもった生殖器が現れるので,一見して区別できる。原始的なトタテグモ亜目(あもく)や,クモ亜目のなかでも比較的原始的なクモでは,生殖器はもっとも単純な形をしている。触肢の?節(ふせつ)にはタマネギのような形をした生殖球がついていて,その内部には先細りの容精体(ようせいたい)が,コイル状に収まっている。容精体はちょうどスポイトのようなはたらきをする。オスは成熟すると,特別な精網(せいもう)という精液の受け皿を糸でつくり,そこへ射精する。そして触肢の容精体で,その精液を吸い取り,その中にたくわえでおく。交尾の際,オスはこの生殖球の先端をメスの生殖器に挿入(そうにゅう)する。原始的なクモでは,メスの交接口と産卵口がいっしょになっている。
より進化したクモ亜目では,オスの触肢の構造はずっと複雑になる。風船のようにふくらましうるやわらかな組織と,それをとりまく種々のかたい付属の組織とが組み合わさった形になっているのだ。交尾の際,血圧によって容精体がふくらむと,メスの生殖器の外側の構造(外雌器(がいしき)と呼ばれ,表皮がかたく板のようになっており,場合によっては複維なくぼみや突起(とっき)をそなえる)と,オスの触肢のかたい付属器とがかみ合って,オスの触肢がメスの生殖器からはずれないようになる。高等なクモのメスは, 3つの生殖口をもつ。そのうち2つは対(つい)になっている交接口で,オスの触肢の生殖球の先端(栓子(せんし)という)を受け入れるところであり,もう1つは卵が産み出される産卵口である。
タグ: | オニグモ