サクラの落ち葉を比較してみました。
過去の日記を見てみると,なんと3年前の2009年12月8日にもサクラの落ち葉を比較していました。
種類も同じ,オオシマザクラとソメイヨシノとヤマザクラの3種類。
いつもの散歩コースでサクラの落ち葉を集めると,自然にこの3種類になってしまうようです。
『牧野新日本植物図鑑』(1970年)によると,それぞれの葉の特徴は次の通りです。
オオシマザクラ
葉は有柄,互生し倒卵状長楕円形あるいは倒卵状楕円形,先は長く伸びてとがる。基部は円形,長さ10cm内外ふちには先がのげ状にとがったきょ歯があり,両面とも無毛でなめらかで裏面は白色をおびず,緑色。
葉は有柄で互生,広い倒卵形,先端は急に尖り,長さ8cm内外,ふちには鋭い重きょ歯があり,両面には葉柄とともにうすく細毛がある。成長するにつれて光沢を増す。
葉は有柄で互生,倒卵形,長い鋭尖頭,ふちには針状の重きょ歯があり長さ10cm内外,葉身葉柄は無毛,上面は緑色,裏面は白味をおびた淡緑色。葉柄上部に通常2腺がある。
「先がのげ状にとがったきょ歯」の「のげ」とは「のぎ」の音変化で,現在の図鑑には「のぎ」状の鋸歯と書いてあります。
「のぎ(芒)」を小学館『日本大国語大辞典』(1980年)で引くと,次のように書いてありました。
イネ科植物の外花穎(がいかえい)の先端から出る剛毛状の突起。
語源説
(1)ノビキ(延木)の意か[大言海]。(2)ノは直の意,キは尖鋭なものをいう古語[東雅]。(3)ノビケ(延毛)の義か[名言通]。(4)ホケ(穂毛)の義[言元梯]。(5)ノサキ(野鋒)の中略[紫門和語類集]。
イネやムギの穂に針のように突き出ている毛が「のぎ」です。
鋸歯の先が針のようにとがって突き出ているのを,「のぎ」状と表現するようですね。
若いオオシマザクラの葉
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12月10日の皆既月食は,欠け始めから終わりまで,全国で観察できたようです。
欠け始めが21時45分,皆既月食が23時5分から23時58分まで,終わりが25時18分でした。
[写真1]~[写真4]は,欠け始めから皆既月食になるまでの経過です。
(残念なことに,カメラの時刻設定が狂っていて,正確な撮影時刻がわからなくなってしまいました。)
皆既月食の状態は暗いだろうと三脚を準備したのですが,月は空の真上にまでやってきて,三脚を付けたままではファインダーをのぞくことができませんでした。
結局手持ちでの撮影になりました。
月食は,太陽・地球・月が一直線に並び,月が地球の影のなかに入ったときにおきます。
大きな地球の影が月を隠す月食は,地球のどこからでも観察できます。
それに対し,地球の1/4の大きさしかない月が太陽を隠す日食は,観察できるのは地球の一部分に限られます。
日食も,月食も同じくらいの頻度でおきるものなのに,月食の方が日食よりも頻繁におきるように感じるのはそのためです。
地球と月とは,384,400km離れています。
どのくらい離れているか,地球と月の大きさの比率で描いてみると,次のようになります。
これだけ離れているのに,地球の影が月に影響するというのがすごいですね。
地球の影はどのくらいの大きさになるのでしょうか。
月食の始まりが21時45分,終わりが25時18分。
この間の213分間に,月がどれだけ動いたかを計算すると,
1km/秒(月の速度)×12,780秒=12,780km
地球の直径が12,756kmなので,ほぼ地球と同じ大きさの影ができていることになります。
国立天文台のサイトに次の図がありました。
この図の真ん中の円が,地球の影のようです。
月は地球の影の真ん中を通ったのではなく,少し下の方を通ったのですね。
[写真4]の月の下の方が明るくなっているのは,本影の端の方を通ったからでしょうか。
図から,月の大きさと比較すると,本影の直径は月の直径の約2.65倍。
3,474km(月の直径)×2.65=9,206km
地球の7割くらいの大きさということになります。
倉敷科学センターのサイトに,皆既月食の連続写真がありました。
これを見ると,地球の影が円くなっているのがわかりますね。
皆既月食になっても,月は完全に真っ暗になって見えなくなるわけではありません。
赤銅色といわれる,赤っぽい色の満月になります。
赤い色になるのは,太陽の光が地球の裏側から,大気を通して回り込んでくるからです。
太陽の光は大気で屈折します。
屈折した光のうち,波長の短い青色は大気で散乱して月までは届きません。
波長の長い赤色だけが,大気で散乱せず月まで届き,皆既月食の月を赤く照らします。
子どもの頃,わくわくして見た皆既月食が,赤っぽい月になっただけだったのでがっかりした記憶があります。
確かに,皆既月食といっても,皆既日食のように,昼間が突然夜になるといったような,何かとてつもない天変地異がおこるわけではありません。
空を見上げなければ,知らない間に通り過ぎているのかもしれません。
来年の5月21日(月)には,京都でも金環日食が見られます。
朝7時30分頃なので,まっ昼間と違い,感動は薄いかもしれませんが,楽しみですね。
電柱の上に,1羽のトンビがとまっていました。
オオタカかなと思って,急いでカメラを向けたのですが,「ピィーヒョロロロ」と鳴いたのでトンビとわかり,少しがっかりしました。
平安神宮のあたりにオオタカが出没するそうなので,このあたりで見かけてもおかしくないのですが,まだ見たことはありません。
「トンビがタカをうむ」という諺があるように,トンビは猛禽類のなかでは一段低く見られています。
魚や動物の屍肉をあさる雑食性のせいでしょうか。
オオタカのような,自分で狩った生きた獲物しか食べないといういさぎよさに,人々は憧れるのでしょうね。
しかし,その代償としてオオタカは食物連鎖の頂点に立つことになり,生息数は自然に抑制されてしまいます。
トンビに関する諺はたくさんありますが,いずれもあまりよいイメージではありません。
・とんびが身震いしたよう……みすぼらしいありさまのようす
・とんびの巣立ちのよう……へたな笛の音をあざけっていう
・とんびも居ずまいからタカにみゆる……身分のいやしいもの者でも,起居が正しければ上品に見えるというたとえ
・とんびも物を見ねば舞わぬ……自分の利益にならないことには努力しないものだというたとえ
・とんびの子タカにならず……凡庸な親の生んだ子は,やはり同じように凡庸であることのたとえ
トンビのかんばしくない印象は,欧米でも同じようです。
荒俣宏著『世界大博物図鑑』(1987年)には,次のように書いてありました。
トビは西洋人にとって,意地汚い鳥の代表である。そのためあまりよい印象はないが,プリニウスによると,〈それでも葬式の供物や神官が捧げた犠牲だけは,いかにひもじくとも盗んでいかない〉最低限の道徳をもちあわせた鳥ではある。かつてはロンドンなどの大都市でも多くみられた鳥で,街の空地に捨てられる屑をあさる〈掃除屋>であった。それで〈卑しい鳥〉のイメージが強められたのだろう。
いっぽう,中国ではトビは〈もの忘れ〉の象徴だった。粛宗の張皇后が,帝に飲ませる酒に,いつもトビの脳を混ぜていたという逸話がある。この酒は人を長く酔わせるうえ,忘れっぽくさせる効能があるといわれたためである。これによって張皇后は帝をあやつり,権力を独占した(段成式《酉陽雑俎》)。
平凡社『世界大百科事典』(2005年)には,トビに関する日本の「民俗」に関して次のように書いてありました。
《日本書紀》には神武天皇を助けて長髄彦(ながすねひこ)の軍を降伏させた〈金色霊鵄(こがねのあやしきとび)〉の記事があり,また愛宕(あたご)神はトビを神使としている。しかし,ネズミやカエルなどの死体をついぱむ悪食のうえ,人の魚をかすめとることもあるので,かつては人家近くに多く見られて身近だった反面,人々からは憎み疎まれることもあった。トビの鳴声と飛翔は特徴的なので,天候占いによく使われる。その中の一つ〈トビが舞えば雨〉ということわざは,〈鳶不孝〉の昔話とともに語られる場合が多い。その昔話によると,トビは人間であったとき,あまのじゃくな息子であった。親の墓を川辺にたててしまったので,雨が降ると墓が流されてしまう。そこで雨模様になると心配して,トビは川面を低く飛んで鳴くのだという。なお,トビが屋根にとまるのを火災の前兆とする俗信は,現在でも各地にみられる。
「金色霊鵄」については,『世界大博物図鑑』にも,次のように書いてあります。
《和漢三才図会》に述べられている愛宕山のトビは,古来,神の使いとみなされた。一説によると天照大神(あまてらすおおみかみ)が皇軍を守護するため,トビと化して天からくだり,愛宕山にすむことをみずから望んだのだという。トビを聖鳥とする信仰の決定的な材料は,〈金色のトビ伝説〉である。すなわち《日本書紀》には,神武天皇の部隊が長髄彦(ながすねひこ)の軍勢に苦戦していると,突然氷雨とともに空から〈金色霊鵄(こがねのあやしきとび)〉が飛来し,その光かがやく姿に眩惑された相手を降伏に追いこんだという記事がある。しかもこの象徴は〈金鵄(きんし)勲章〉として近代日本に復活した。この勲章は,戦前の軍国主義時代,武勲をたてた軍人に授与されたものである。1810年(明治23)に制定され,のちには経済的恩典もつけられた。第2次大戦後制度が廃止されるまでに拝受者総数は約10万名にものぼった。
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冬,カエデやサクラがすっかり葉を落としても,コナラの木には茶色くなった枯葉がいつまでも枝についています。
家の前にある大きなコナラの木は,風が吹くたびに葉を散らすので,掃除が大変です。
久しぶりに掃き掃除をしていて気付いたのですが,落ち葉の中に細長くて形のしっかりした葉がまじっています。
クヌギの葉のようです。
近くにクヌギの木があるようで,かなりの数まじっています。
[写真1]は2種類を比べたもの。
コナラとクヌギの落ち葉は,葉の形と,葉の縁にある鋸歯の形で見分けます。
保育社『検索入門 樹木1』(1995年)には,コナラの葉の特徴として次のように書いてあります。
1. 葉は上半分が最も幅広く,基部はまるい
2. 下面は長い軟毛が多く,灰白色を帯びる
3. 枯葉は長く樹上にとどまっている
葉は倒卵形, 6~15×2.5~5cm,側脈は7~12対で枝分かれせずにきょ歯に入る。葉柄は0.5~1.2cm。
クヌギについては,次のように書いてあります。
1. 側脈16~20対で,平行してへりに達する
2. きょ歯の先端はのぎ状に長くつき出る
3. 下面は淡黄緑色で,脈上を除き無毛
葉は8~15×2~5cm。葉柄は0.5~2cm。
コナラの葉の形は「倒卵形」と書いてありますが,家の前のコナラの葉はもっと細長く,クヌギの葉に近い形をしています。
[写真6]は,家の前のコナラの葉と典型的な形のコナラの葉とを比較したもの。
右側が典型的な「倒卵形」と呼ばれる形です。
[写真2]は,コナラとクヌギの鋸歯を比較したもの。
クヌギの鋸歯の先は,のぎ状に長く突き出していますが,コナラの鋸歯の先にはのぎ状のものはありません。
クヌギの葉はクリの葉とよく似ています。
近くにはクリの木もあるので,ひょっとしたら,クヌギの葉とクリの葉を混同している可能性もあります。
確認のためにクリの木の下から落ち葉を拾ってきて,比較してみました。[写真3]
前書には,クリの葉の特徴として,次のように書いてあります。
1. のぎ状の突起はクヌギにくらべ短く,先端付近まで葉肉組織がついている
2. 下面には微毛のほか,小腺点が散らばる
葉は8~15×3~4cm,側脈は11~20対。葉柄は0.5~1.5cm。
クヌギとの違いは「のぎ状の突起はクヌギにくらべ短く,先端付近まで葉肉組織がついている」となっています。
[写真4]は,クヌギと思われる葉の鋸歯(左側)とクリの葉の鋸歯(右側)を比較したもの。
確かに,右側ののぎ状突起は,左のものより短いですね。
左の葉は,クヌギで間違いないようです。
[写真5]は,クヌギ,クリ,コナラを並べて写したもの。
3種を比較していて気付いたのは,クヌギの落ち葉はシャンとしているということです。
クリやコナラの落ち葉が反り返ったり,ねじれたりしているのに対し,クヌギの落ち葉は背筋を伸ばしたようにまっすぐな姿勢をしています。
クヌギの葉は,真ん中を通っている主脈がしっかりしているためでしょうか。