南禅寺の土塀に小さなクモがいました。(2017/11/2)[写真1]
この場所の隅っこにはいつも,オオヒメグモやアシナガグモが網を張っているのですが,それらとは違います。(→オオヒメグモ →アシナガグモ

体長は5~6mmほど。
小さくて肉眼ではよく分からないので,カメラで写して拡大してみました。
すると驚いたことに,背中にはたくさんの子グモが。
みんな寄り集まってお尻を突き出し,団子状態になっています。[写真2]

コモリグモです!
コモリグモのなかまの♀は,孵化した子グモを背中に載せて運ぶ習性が知られています。
一度見てみたいと思っていたものでした。

家に持ち帰りシャーレに入れて,後でゆっくり観察しようと思っていたのですが,1日後には全部死んでいました。
子グモは母親の体から離れ,ちりぢりになっています。[写真6]
数えると,47匹いました。
子グモの体長は1mmほど。[写真7]

八木沼健夫著『原色日本クモ類図鑑』(1986年)には,コモリグモ科について次のように書いてありました。

 頭部は狭い。中窩は縦向き。上顎に外顆と牙堤歯がある。8眼2列であるが,後眼列強く後曲するため3列に見える(従って前から第1・2・3列眼と称することがある)。後列眼は大きく,第1列の4眼は小さい。後側眼は後中眼より離れる。♂触肢の脛節に突起がない。歩脚転節に欠刻がある。歩脚に刺が多い。 3爪で上爪にわずかの歯を生じ,下爪は単歯か無菌。卵のうはやや扁平な球状で,糸器につけて運び,孵化した子グモを腹背に乗せて保護する。徘徊性であるが,幼時あるいは成時で網を張るものがある。旧称ドクグモ。毒性の弱いことは他のクモと変わりがないので, 1973年8月以降コモリグモと改称され正式の名となった。欧米諸国ではオオカミグモ Wolf spider と称する。

旧称「ドクグモ」を「コモリグモ」に改称したとあります。
180度,イメージが違いますよね。
凄惨な殺人鬼から,子どもを守り慈しむ母親のイメージへ。
欧米では「オオカミグモ」と呼ぶそうで,やはり徘徊性で狩猟をするイメージなのでしょうか。

背甲にV状斑があることから,カイゾクコモリグモ属だと思うのですが,それから先はよくわかりません。
11月の初めという出現期から見ると,キバラコモリグモかなと思うのですが。