小さな風車のような形をした花が散らばっていました。
きっとくるくると回りながら落ちてきたに違いありません(見た訳ではないですが)。

ケテイカカズラ
ケテイカカズラ[ in一切経谷町 on2024/5/20 ]
ケテイカカズラ(花)
ケテイカカズラ(花)
ケテイカカズラ(花・裏面)
ケテイカカズラ(花・裏面)

見上げると,絡まった蔦に白い小さな花がたくさん咲いていました。

ケテイカカズラ
ケテイカカズラ[ in一切経谷町 on2024/5/20 ]

ケテイカカズラの花です。
この辺りには,テイカカズラとケテイカカズラの2種類が見られます。
ケテイカカズラは花筒の狭部と広部がほぼ同じ長さなのが特徴です。

ケテイカカズラ(花筒)
ケテイカカズラ(花筒)
ケテイカカズラ(花筒・断面)
ケテイカカズラ(花筒・断面)

近くにテイカカズラも咲いていました。
テイカカズラは花筒の狭部が広部より長いです。

テイカカズラ(花筒)
テイカカズラ(花筒)
テイカカズラ(花筒・断面)
テイカカズラ(花筒・断面)
テイカカズラ(花)
テイカカズラ(花)

『日本の野生植物』(2016年)には,テイカカズラについて次のように書いてありました。

 山野の林にふつうな常緑の藤本。茎は長く伸び,付着根を出して他物にはい上がり,太いものでは径4cmに達する。葉は変異が多く,若木では小さくて長さ1-2cm,幅5-7mm,成木では長さ3-7(-10) cm,幅1.2-2.5(-3.5)cmとなり,楕円形~長楕円形,革質で光沢があり,鋭頭で鈍端,基部はくさび形で長さ3-7mmの葉柄がある。ふつうは無毛であるが,ときに裏面に短毛が出る個体もある。花は5-6月に開き,白色,径2cm内外,終わりに近づくと淡黄色をおびる。萼片は狭卵形,長さ2-3mm,縁にまばらに毛がある。花筒は7-8mmあり,上部3mmほどが太くなっていて中に雄蕊がある。葯はわずかに花喉からのぞいている。袋果は細長く,長さ15-25cmで多少湾曲してぶら下がり,ふつう2個が対をなすが,1個だけのこともある。種子は長さ12-14mm,先に長さ2.5cm内外の白い長毛がある。本州・四国・九州・小笠原諸島,朝鮮半島に分布する。

・萼片は狭卵形,長さ2-3mm,縁にまばらに毛がある。

テイカカズラ(萼)
テイカカズラ(萼)

・花筒は7-8mmあり,上部3mmほどが太くなっていて中に雄蕊がある。葯はわずかに花喉からのぞいている。

テイカカズラ(花・断面)
テイカカズラ(花・断面)
テイカカズラ(蕾)
テイカカズラ(蕾)
テイカカズラ(蕾・断面)
テイカカズラ(蕾・断面)

ケテイカカズラについては次のように書いてありました。

 常緑藤本。若枝,花序,葉裏には毛が多い。葉は長楕円形~楕円形,長さ4-8cm,幅25cm。花は白色,5-6月ごろに開き,径2-2.5cm。萼片は長さ5-6mm,長楕円形で先が少し幅広く,まばらに毛がある。花筒の狭部は長さ3-4mmで広部とほぼ同長,花喉部にはふつう毛がある。雄蕊の葯の先は花喉部に達しない。袋果は長さ10-15cm,相対する2個がほぼ直角に近く開く傾向がある。本州(近畿地方以西)・四国・九州·琉球,朝鮮半島・中国に分布する。

・花筒の狭部は長さ3-4mmで広部とほぼ同長,花喉部にはふつう毛がある。雄蕊の葯の先は花喉部に達しない。

ケテイカカズラ(花・断面)
ケテイカカズラ(花・断面)

テイカカズラの名は藤原定家に因むとされていますが,古くは「まさきづら」「まさきのかづら」と呼ばれていたようです。
方丈記にも庵の様子として「林の木近ければ,爪木を拾ふに乏しからず。名を外山といふ。まさきのかづら,跡(を)埋めり。」とあります。
和泉書院『和漢古典植物名精解』(2017年)

テイカカズラは照葉樹林帯の林縁にあってマント群落の構成種の一つであるから,真境木葛(まさかきかずら)と称されたのである。