地面を這う大きな葉に隠れるように,フユイチゴの花が咲いていました。

フユイチゴ
フユイチゴ[ in夷谷町 on2024/8/7 ]

冬になる赤い実も目立たずどんな動物に被食散布されるのか不思議ですが,花も同じように目立ちません。花粉を媒介しているのは一体どんな虫なのでしょうか。

フユイチゴ
フユイチゴ[ in夷谷町 on2024/8/7 ]

『日本の野生植物』(2016年)にはフユイチゴについて次のように書いてありました。

低山帯の林縁などに生える常緑のつる状小低木。茎は細く,匍匐し,密に軟毛が生え,わずかに扁平なとげがあるか,しばしばない。葉は単葉で紙質,深緑色でほぼ円形,長さ幅ともに5-10cm,円頭から鋭頭,基部は心形,短い芒のある細鋸歯があり,わずかに3-5裂することがあり,裂片は円い。表面は脈上に短い軟毛が生え、裏面は開出する毛でおおわれる。葉柄は長さ3-10cm,密に軟毛が生える。托葉は狭披針形で羽状に中裂する。花序は腋生で,少数の花を円錐状花序につける。苞は楕円形で櫛状に切れ込み,両面に密に軟毛が生え,早落性で長さ約10mm。花は径10-13mm。花柄には短い軟毛が生える。花床筒は浅い鐘形。萼片は三角状卵形で先は鋭頭または芒状で,しばしば不規則に切れ込み,長い黄みがかった毛が外側と縁に生え、内側には圧着した軟毛が生え,長さ8-10mm。花弁は白色,卵形先はやや波状,長さ約5mm,幅約4mm,萼片と同長かやや短い。雄蕊は多数で無毛,雌蕊より短い。花糸は糸状,葯は楕円状円形。心皮は20-30個,無毛。子房は楕円状腎臓形,柱頭はふくらむ。花床は球状で毛が生える。果実は球形で赤色。核は長さ約2.5mm,くぼみがある。染色体数2n=42。本州~琉球(南限は吐喝喇列島の悪石島),朝鮮半島南部・台湾・中国に分布する。

・花序は腋生で,少数の花を円錐状花序につける。
腋生(えきせい)とは葉の付け根から出ることです。確かに花は葉の付け根から出ています。
円錐花序とは「無限花序のうち,主軸の周りに総状花序が何度も分枝し,全体が円錐形になるもの」らしいですが,花の数が少ないのでどんな仕組みになっているのかよくわかりません。

フユイチゴ
フユイチゴ[ in夷谷町 on2024/8/7 ]

・苞は楕円形で櫛状に切れ込み,両面に密に軟毛が生え,早落性で長さ約10mm。

フユイチゴ(花)
フユイチゴ(花)

・花は径10-13mm。花柄には短い軟毛が生える。花床筒は浅い鐘形。

フユイチゴ(花)
フユイチゴ(花)

・萼片は三角状卵形で先は鋭頭または芒状で,しばしば不規則に切れ込み,長い黄みがかった毛が外側と縁に生え、内側には圧着した軟毛が生え,長さ8-10mm。

フユイチゴ(花)
フユイチゴ(花)

・花弁は白色,卵形先はやや波状,長さ約5mm,幅約4mm,萼片と同長かやや短い。

フユイチゴ(花)
フユイチゴ(花)

・雄蕊は多数で無毛,雌蕊より短い。花糸は糸状,葯は楕円状円形。

フユイチゴ(花)
フユイチゴ(花)

・心皮は20-30個,無毛。子房は楕円状腎臓形,柱頭はふくらむ。

受粉後の花をほぐしてみると,たくさんの子房があり,それぞれから雌しべが出ています。成熟すると子房の一つひとつが小さな果実となり,全体が集まって一つの集合果となります。

フユイチゴ(花・子房と雌しべ)
フユイチゴ(花・子房と雌しべ)
フユイチゴ(花・断面)
フユイチゴ(受粉後の花・断面)
フユイチゴ(花・断面)
フユイチゴ(受粉前の花・断面)