ヒガンバナの過去投稿を一つにまとめました。
2024年10月11日
ヒガンバナが咲いていました。
歩道のブロックを押し上げるようにして生えています。
今年のヒガンバナは何か変です。
毎年,お彼岸の頃に一斉に咲くのに,今年は猛暑のせいか開花が随分遅れ,個体による開花時期のバラツキも大きかったように思います。
植物図鑑を見ていると,ヒガンバナ科にはネギ属も含まれていました。
ヒガンバナとネギが同じ仲間というのもおもしろいですね。
『日本の野生植物』(2016年)にはヒガンバナについて次のように書いてありました。
人家に近い田畑の縁,堤防,墓地などに群生して,花期には人目をひく。秋の彼岸のころ (9月下旬)に開花するのでこの名がある。〈マンジュシャゲ (曼珠沙華)〉ともいわれる。鱗茎は広卵形で外皮は黒い。葉は線形,深緑色で光沢があり,長さ30-40cm,幅6-8mm,花の終わったあと晩秋に現れて束生し,翌年3-4月に枯れる。花茎は高さ30-60cmになる。総苞片は披針形で膜質,長さ2-3cm,花柄は長さ6-15mm。花は朱赤色,花被片は狭倒披針形で長さ約40mm,幅5-6mm,強く反り返り,筒部は長さ6-10mm,喉部の副花冠状裂片はごく小さく不明瞭なものもある。花糸は花冠の外にいちじるしく突出し,細長く,赤色,上方に曲がり長さ約8cm。葯は長楕円状で暗赤色。花柱は糸状で赤色,雄蕊よりも長い。果実は不稔で,種子はできない。まれにできても発芽しないことが多い。北海道~琉球に広く分布するが,もとよりの自生ではなく,昔,中国から渡来したものが拡がったものと考えられる。鱗茎にいろいろなアルカロイドを含む有毒植物であるが,昔は飢饉の時すりつぶし数回水洗いして有毒成分を除き,澱粉をとって食用にした。鱗茎はまた去痰,催吐薬とされる。50以上地方名がある。
2022年9月10日
●ヒガンバナが花茎をのばしていました。もうすぐお彼岸。ヒガンバナがちょうどお彼岸の頃に咲くのは分かっているのですが,ふと春のお彼岸だったか秋のお彼岸だったか迷うことがあります。
ヒガンバナは普通の植物とは逆のライフサイクルを持っています。秋に花をつけた後に葉を伸ばし,他の植物が枯れる冬の間に葉を茂らせ光合成をおこない鱗茎に栄養分を貯えます。他の植物が芽吹く春になると葉を枯らし,夏の間は休眠しています。
2014年9月30日
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[写真1]2014/9/16
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[写真2]2014/9/30
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[写真3]花序を下から見たところ
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[写真4]一つの花
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[写真5]子房断面
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[写真6]雄しべと雌しべ
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[写真7]鱗茎
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[写真8]鱗茎断面
ヒガンバナがいろいろなところで花を咲かせています。
ヒガンバナは種子が実らず,分布を広げるには人為的に,球根を植えるしかありません。
今,咲いているヒガンバナには,それぞれに植えた人がいるはずです。
いつだれがどんな思いでそこに植えたのかと思うと,楽しくそして切なくなりますね。
『牧野富太郎植物記2』(1974年)には,ヒガンバナについて次のように書いてありました。
ヒガンバナの花は,6枚の花被(花びらとがくをいっしょによぶ名)からできていますが,花のなりたちからいうと,このうち外側の3枚は花びらのようになったがく(外花被)で,内側の3枚はほんとうの花びら(内花被)です。ヒガンバナの花被は細長く,外側にそりかえっています。またそのへりがひどくちぢれています。6本のおしべと,1本のめしべの柱頭も花被と同じ赤色で,花の外に長くつきだしています。
内花被と外花被はほとんど(全く?)同じ形をしているので,どちらがどちらか見分けがつきません。[写真4]
柱頭を拡大して見ると花粉が付いています[写真6]が,受精はしないようです。
ヒガンバナにかぎらず,チューリップやヒヤシンスやスイセンなどの地中の玉をふつう「球根」とよんでいますが,球根とよぶのは誤りで正しくは「りん茎」とよぶべきです。この玉は根ではなく,茎だからです。ほんとうの根は玉の下からでるひげ根で,玉の部分はりん葉とよばれる変形した葉がかさなり合っててきたものです。くわしくいうと,この地中の玉は,ごく短い地下茎と,地中の葉鞘(葉のさや)からできており,その大部分はこの変形した葉鞘で,これがふくろのようにふくらんで,つつをなしてかさなり合っています。この葉鞘に養分がたくわえられていて厚ぼったくなっています。
球根(鱗茎)を掘り出し,半分に切ってみました。[写真8]
まるでタマネギですね。(タマネギも同じ鱗茎です)
どんな味がするのでしょう。
と,食べるわけにはいきません。
ヒガンバナは有毒植物の一種で,黒い外皮につつまれたりん茎にリコリンという毒物がふくまれています。ヒガンパナのりん茎をかべ土のなかにすりこんでかべをぬると,ネズミの害をまぬがれるともいわれています。
毒はあっても,飢饉のときには救荒植物として役立っていたようです。
ヒガンバナのりん茎には有毒物質もふくまれていますが,でんぷんもふくまれています。
このでんぷんを食用にすることがあります。玉をつぶして水でさらすと毒分は流れでてしまい,あとにでんぷんが残ります。このでんぷんをもちに入れて食用にするわけです。
2016年1月19日
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[写真1]2016/1/13
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[写真2]2016/1/13
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[写真3]2016/1/13
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[写真4]2016/1/13
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[写真5]2014/9/30
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[写真6]2015/9/10
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[写真7]2015/9/15
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[写真8]2015/9/20
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[写真9]2015/9/20
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[写真10]2015/10/11
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[写真11]2015/10/11
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[写真12]2015/11/13
今の時期,ヒガンバナが咲いていた場所には,細長い緑の葉が繁茂しています。[写真1]
ヒガンバナは花が咲いている時には葉はなく,花が枯れた後に葉が出てきます。
多くの植物が休眠する冬に葉を茂らせて積極的に養分を蓄え,他の植物が活発に活動する夏の間は休眠します。
他の植物とは少しライフサイクルがズレていますね。
鱗茎(球根)がどんな状態なのか,自宅前の土手に生えているヒガンバナを掘り出してみました。[写真2]
葉は意外に細く,周りに生えているシャガの葉とは容易に区別できました。
細長い濃緑色の葉の根元に黒い外皮に包まれた鱗茎があります。
その下から,割と太い根が数本生えています。[写真3]
縦に切った断面が[写真4]です。
植物体の一部が肥大して球状になったものを,一般に球根といっていますが,いろいろな形態のものがあり,かならずしも根が肥大したものではありません。
ユリやチューリップなど草花の球根の多くは,葉が肥大して球形になった鱗茎と呼ばれるものです。
ヒガンバナの球根も鱗茎です。
鱗茎は,地下にあるごく短い茎に肥大した葉が密についたもので,鱗茎という名がついているものの,肥大しているものは茎ではなく葉です。
球根というものの根ではなく,鱗茎というものの茎ではない,とは何だかややこしいですね。
[写真5]は花を咲かせていた9月下旬の頃のもの。
比較してみると,今の時期のものは随分やせ細っています。
これから養分を蓄え,肥大していくのだろうと思います。
ヒガンバナが咲き始めた頃からの推移をまとめてみました。
・9月上旬
何もない地面から,アスパラガスのような細長い茎が,にょきにょきと生えてきます。[写真6]
頭には蕾がついています。
・9月下旬
茎が伸びきると,すぐに蕾が開き始めます。[写真7]
お彼岸の頃に満開となります。[写真8][写真9]
(花は咲かせますが,日本のヒガンバナは3倍体のため種子をつけません。)
花は1週間ほどで枯れます。
・10月上旬
茎は倒れ,地面から葉が出てきます。[写真10][写真11]
これから春まで,冬の光を浴びて光合成をおこない,鱗茎に養分を蓄えます。
春になると,葉は枯れ,養分を十分に蓄えた鱗茎は地下で休眠状態に入ります。
地上には何もなく,秋のお彼岸が近づくと,また茎を伸ばして花を咲かせます。
2009年9月24日
今の時期いたる所で,ヒガンバナの花を見ます。
人知れず潜み,まるでしめし合わせたごとく一斉に花を咲かます。
同じ時期に一斉に花を咲かせるのはソメイヨシノと同じですね。
ソメイヨシノの開花はサクラ前線といわれ,南から北上しますが,ヒガンバナの開花前線は北から南へ下がってゆきます。
ヒガンバナもソメイヨシノと同じく3倍体で,種子で繁殖できません。
どの個体もクローンで,同じ遺伝子を持っていることになります。
それで開花時期が揃うのでしょうか。
葉が出るのに先立って花を咲かせるところも一緒です。
違うのは,ソメイヨシノは国内でつくり出されたものですが,ヒガンバナは大陸から海を渡ってやって来たところです。
『朝日百科 植物の世界』(1997年)には,ヒガンバナについて次のように書いてありました。
江戸時代以降には多くの本草書や文学作品に書き記され,1000以上の里呼び名(方言名)をもつほど日本人の心をとらえ親しまれている花なのに,「古事記」や「日本書紀」に始まる古典に現れていないのはなぜだろうか。照葉樹林を生活の場とした縄文時代の人びとが大陸から持ち込んだ史前帰化植物という説,稲作にともなって伝来した救荒植物のひとつという説,海流に運ばれた漂着植物とする説など,さまざまな説がとなえられている。
日本に分布するものはすべて3倍体(2n=33)で,もっぱら鱗茎の分裂によって繁殖しているが,中国には3倍体(9月開花)とともに種子で繁殖できる2倍体(2n-22,8月開花)が分布している。そこで日本のものは有史前,縄文時代または弥生時代に救荒植物として大陸から持ち込まれたものと考える人が多い.鱗茎にアルカロイドを含む有毒植物だが,水でさらせば良質のデンプンがとれる。秋の彼岸ごろに咲き,墓地に多く咲くことから「彼岸花(ひがんばな)」「死人花(しびとばな)」「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」などとよばれる。
2022年5月26日
ヒガンバナの葉が枯れていました。これから秋の彼岸までは休眠に入ります。
2021年11月24日
(29)除草されて枯れた斜面に,ヒガンバナの葉が緑のかたまりとなって点在していました。他の植物と反対に冬に葉を茂らせるためよく目立ちます。(九条山)
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[写真29]ヒガンバナ
2021年10月20日
(12)ヒガンバナに葉が生えだしていました。これから葉を伸ばして,冬の間,鱗茎に栄養を貯えます。(南禅寺)
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[写真12]ヒガンバナ葉
2021年9月21日
(19)お彼岸に入ったばかりなのに,ヒガンバナがすでに盛りを過ぎています。これから花は枯れ,茎が倒れて,その後に地面から葉が出てきます。冬の間に鱗茎に養分を貯え,春になると葉は枯れます。(南禅寺)
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[写真19]ヒガンバナ
2020年10月4日
(12)ヒガンバナ。まだ咲いている。(南禅寺)
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[写真12]ヒガンバナ
2020年9月21日
(18)もうお彼岸に入っているのだが,まだヒガンバナが咲かない。今年は開花がかなり遅い。(南禅寺)
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[写真18]ヒガンバナ蕾
2019年11月5日
(5)ヒガンバナの葉が出ていた。(南禅寺)
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[写真5]ヒガンバナ
2019年9月20日
(26)お彼岸も近いが,ヒガンバナはまだ咲いていない。(南禅寺)
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[写真26]ヒガンバナ
2019年5月9日
(18)ヒガンバナの葉。枯れ始めている。
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[写真18]ヒガンバナ葉
2019年3月1日
(1)冬の間,繁茂していたヒガンバナの葉がしおれだした。5月中頃には枯れてしまう。(南禅寺)
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[写真1]ヒガンバナの葉
2018年12月10日
(8)南禅寺の地面を覆っていた敷き紅葉がきれいに清掃されていた。地面から生えている緑色の葉は,ヒガンバナ。
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[写真8]ヒガンバナ(葉)
2018年10月10日
(24)ヒガンバナの花茎が倒れ,葉がかなり伸びてきた。(南禅寺)
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[写真24]ヒガンバナ葉
2018年9月13日
(22)地面からニョキニョキと,ヒガンバナの花茎が出ている。もうすぐお彼岸か…(南禅寺)
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[写真22]ヒガンバナ
2018年9月16日
(27)ヒガンバナの花が開きはじめた。(南禅寺)
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[写真27]ヒガンバナ
2018年9月18日
(34)ヒガンバナが満開だ。明後日が彼岸の入り。まさに彼岸花。(南禅寺)
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[写真34]ヒガンバナ
2018年9月28日
(42)ヒガンバナの花もほとんど終わり。開花期間は1週間ほど。(南禅寺)
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[写真42]ヒガンバナ
2018年5月16日
■ヒガンバナの葉が枯れた。これから秋まで休眠し,秋のお彼岸の頃に花を咲かせる。(南禅寺)
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[写真37]ヒガンバナ
2018年2月6日
・冬のヒガンバナ。ヒガンバナは冬の間に葉を茂らせ養分を蓄える。夏の間は葉を枯らして休眠,秋に花を咲かせる。(南禅寺)
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[写真3]ヒガンバナ
2017年9月17日
・ヒガンバナが咲いていた。今年も彼岸が近いことを知った。(南禅寺)
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[写真14]ヒガンバナ
2016年9月30日
・美術館南側,約100mずらっと並んでヒガンバナが咲いていた。〔岡崎〕[写真4]
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[写真4]9/30 ヒガンバナ
2016年9月27日
・ヒガンバナがまだ咲いている。(南禅寺)[写真16]
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[写真16]9/27 ヒガンバナ
2016年9月16日
・ヒガンバナ。花を見て,お彼岸が近いことをしる。[写真20]
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[写真20]9/16 ヒガンバナ
2005年9月14日
ヒガンバナの蕾。お彼岸が近づくと,地面からスッと茎を伸ばし,蕾をつけます。
2004年9月11日
ヒガンバナ。1週間ほど前に開花が始まりました。お彼岸にはまだ間があります。今年はヒガンバナの開花が早いようです。
2003年9月25日
ヒガンバナ。きれいな花なのですが,なかなかきれいには写せません。
2002年10月27日
ヒガンバナの葉。ヒガンバナは花が咲いた後に葉が出てきます。ヒガンバナは美しい花なのですが,何かバランスが悪く感じるのは,葉が一緒に出ていないせいかもしれません。
2002年9月22日
秋のお彼岸のころに必ず咲くヒガンバナ。桜の花が咲く日を示したサクラ前線は南から北へ移っていきますが,ヒガンバナ前線は北から南へと移っていきます。1日の気温が18~20℃になると,花を咲かせるそうです。気温の変化により,一斉に花を咲かせるので,イットキバナの別名もあります。