アカハライモリの過去投稿を一つにまとめました。
2024年11月6日
見慣れない,まっ黒なヤモリ?
逃げないようにそっと写真を撮っていると,尾が平たいことに気づきました。
イモリです!
この場所で見るのは初めてです。
写真を撮りながら近づいていっても,ぴくりとも動きません。
だんだん大胆になって,触れそうなぐらいカメラを近づけて撮りました。
イモリは背中は黒色の隠蔽色,腹部は赤色の警告色をしています。
隠蔽色をしている生き物はじっと動かないことがよくあります。このイモリも動かないことが最良の方法だと思っているのでしょうか。
それとも寒くて体が動かない?
イモリにはニホンイモリ,アカハライモリなどの別名があります。
正式な和名は何なのか調べてみると,日本爬虫両生類学会の『日本産爬虫両生類標準和名リスト(2024年3月11日版)』には,「アカハライモリ」となっていました。
平凡社『日本動物大百科』(1996年)には,腹部の赤色について次のように書いてありました。
初めてイモリを見た人が,もっとも強く印象づけられるのは,その腹の赤さだろう。イモリの呼び名として,アカハラ,アカバラといった腹の赤さを直接の名前としている地方が多いこともそのことを物語っている(鹿児島県や宮崎県南部では,狭い地域ごとに,ナケンベ,ナケンベシ,ゴンゾレ,アカメンジヨ,シシャムシャなど独特な名前が使われている)。腹の赤さは,個体差が大きく,黄色に近いオレンジ色から赤みの強いオレンジ色,そして朱色や濃い赤色までさまざまで,1カ所にすむ個体のなかでも色合いには違いがある。また,ある池には赤みが強い個体が多く,数km離れた池には黄色みが強い個体が多いと
いうように,ごく狭い地域内でも集団間の変異が大きく,全国的に見た場合には明瞭な地理的傾向は認められない。
2019年5月4日
(9)水路の傍にニホンイモリがいた。以前に見た場所と同じところ。
・ニホンイモリについて→2013年7月9日
»»拡大
[写真8]ニホンイモリ
2013年7月9日
今回はすぐにニホンイモリだとわかりました。
昨年とまったく同じ場所で,道の真中に,悠然と立ち止まっていました。[写真6](→2012年6月24日)
黒い体色はアスファルトの路面でも保護色になっているのですが,逆に気づかれずに人に踏みつぶされかねませんね。
前回は雨上がりだったせいで道に出てきたのだと思っていましたが,今回は晴天の日が続くなかでの出現です。
昨年が6月22日,今年が7月8日と時期的にも近いので,繁殖行動に関係があるのかもしれません。
『山渓ハンディ図鑑9 日本のカエル+サンショウウオ類』(2002年)には,ニホンイモリの繁殖行動について次のように書いてありました。
繁殖 4~7月。本種は基本的に夜行性だが,繁殖期のオスは,日中でもメスの前で尾を曲げて盛んに求愛をしている。オスは精子の入った精ほうをメスの前に落とし,メスがこれを総排泄孔から取り込んで受精が行われる。卵は, 1粒ずつ,落ち葉や水草にはさむようにして産みつけられる。 1回の産卵数は数個~40個ほどだが,繁殖期間中に数回産卵を行うため,総産卵数は100~400個になる。ふ化した幼生は,最大で50mmほどに成長し,夏から秋にかけて変態して上陸する。
時期としては,今が繁殖期です。
近くの水路を探索すれば,卵がみられるかもしれません。
ニホンイモリは別名アカハライモリと呼ばれるように,腹部に鮮やかな赤い模様があります。
前回は腹の下を見ることができなかったので,今回は持ち帰って腹部の模様を観察してみました。
[写真1]は,スキャナーで腹部を撮影したものです。(動き回らないよう,冷蔵庫にしばらく入れて動きを鈍らせました)
前書には,ニホンイモリの腹部の模様について,次のように書いてありました。
国内に広く分布し,求愛行動や体の色などに地域差が見られる。現在は遺伝の研究から,東北,中部,西日本,九州の4つの集団に大きく分けられている。また,各集団の中でも外見のちがいが見られ,隣りあった2本の川でも,模様や色が異なる場合もある。腹部の模様は,東日本が太い網目模様,西日本が細かい網目模様であることが多い。しかし外見だけで,その個体がどこの集団のものかを判断することは難しい。
[写真1]の模様は,「細かい網目模様」か「太い網目模様」か。
ネットの画像検索で他のニホンイモリの模様と見比べてみると,どちらかというと「太い網目模様」の方のような気がします。
体長は80mmほど。尾が細長い[写真5]ので雌ではないかと思います。
2012年6月24日
雨上がりの朝,道に黒っぽいヤモリのような,トカゲのようなものがいました。
イモリ?
イモリなら,実際に見るのは初めてです。
近くに水路があるので,そこから這い出てきたのでしょうか。
しゃがんで写真を撮っていると,横を通り過ぎたお婆さんが,「ここにも,同じもんがいるえー」と教えてくれました。
見ると,すぐそばにもう1匹います。[写真4]
[写真1]の個体は体がぬれているのに,[写真2]の個体はぬれていませんね。
イモリかどうか自信がなかったのですが,横から撮った[写真2]を拡大して見ると,腹面に鮮やかな赤い斑紋があります。
イモリで間違いないようです。
京都府レッドデーターブックでは,今後の動向を注目すべき「要注目種」となっています。
次のように書いてありました。
選定理由 かつては普通に見られたが、近年著しく減少している。環境指標性が高い。
形態 全長はオス99mm、メス113mm程度。背は黒褐色、腹は赤~橙色で黒斑がある。
分布 本州、四国、九州に分布。
◎府内の分布区域
北~南部地域。
生態的特性 低地から山地の水田や河川に生息し、4~6月に卵を1粒ずつ水草に産みつける。
現状・脅威・保全 都市近郊で減少が著しく、1970~80年代に各地で激減ないし、絶滅した。止水環境と周辺の陸環境を、一括して保全していく必要がある。
その他 日本固有種
形態として,「腹は赤~橙色で黒斑がある」とあります。
「黒い腹面に赤い斑紋がある」と思っていましたが,「赤い腹面に黒い斑紋がある」というのが正しいようです。
しかし,この腹面の赤い色も上から見ると,背中の黒い色しか見えません。
こうした赤色と黒色の使い分けは,イモリの生存戦略のようです。
朝倉書店『知られざる動物の世界』(2011年)には,次のように書いてありました。
アカハライモリは,隠蔽色と警告色の両方をうまく身につけることに成功している。上から見た場合(たとえば鳥からの目線),暗い背面の色は,生息環境である岩や泥からなる池の底,水田,または緩やかな流れにとけ込んでしまう。しかし下からは(捕食者である魚類からの目線),毒腺で生産される強い毒があることを警告する鮮やかな色が見える。本種はさらに防御行動も行う。すなわち外敵に対して,顎と尾をもち上げて,鮮やかな腹面を見せる。