朝の薄暗い路上にコガネムシがひっくり返っていました。
少し金属光沢があります。
いつものセンチコガネかと思いましたが,手に取って見ると背中に白い斑点があります。
ハナムグリの仲間のようです。

シロテンハナムグリ
シロテンハナムグリ[ in一切経谷町 on2024/10/26 ]

調べるとシロテンハナムグリでした。
学研教育出版『日本産コガネムシ上科標準図鑑』(2012年)には,シロテンハナムグリについて次のように書いてありました。

 体長:19.9~26.8mm.背面は暗銅色,緑銅色,赤銅色,まれに黒紫銅色.頭楯は縦横がほぼ等長,前縁は明瞭に上反し,中央で深く湾入する.前胸背板および上翅には点刻がやや密にあり,小楯板の点刻はまばら.前脛節には♂♀とも外歯が3本あるが,♂の第3歯は不明瞭.後脛節の外縁には2段刻をそなえる.中胸腹板突起はうちわ状,前縁はゆるやかに弧を描き,表面の点刻は大きくまばら腹部腹板は,♂では中央が凹圧され,横から見てゆるい弓状を呈するが,♀では直線的.

・体長:19.9~26.8mm
この個体は体長24mm。

シロテンハナムグリ(体長)
シロテンハナムグリ(体長)

・背面は暗銅色,緑銅色,赤銅色,まれに黒紫銅色
金属光沢のある虫は光のあて方によって色が微妙に変化します。写真に撮ると,肉眼で見たものと印象が異なりますが,この個体は緑色光沢を帯びた赤銅色といったところでしょうか。

シロテンハナムグリ(背面)
シロテンハナムグリ(背面)

・頭楯は縦横がほぼ等長,前縁は明瞭に上反し,中央で深く湾入する

シロテンハナムグリ(頭楯)
シロテンハナムグリ(頭楯)

・前胸背板および上翅には点刻がやや密にあり,小楯板の点刻はまばら

シロテンハナムグリ(背面)
シロテンハナムグリ(背面)

・前脛節には♂♀とも外歯が3本あるが,♂の第3歯は不明瞭
この個体の第3歯は明瞭にあるので,♀だと思います。

シロテンハナムグリ(前脛節の外歯)
シロテンハナムグリ(前脛節の外歯)

・後脛節の外縁には2段刻をそなえる

シロテンハナムグリ(後脛節の段刻)
シロテンハナムグリ(後脛節の段刻)

・中胸腹板突起はうちわ状,前縁はゆるやかに弧を描き,表面の点刻は大きくまばら

シロテンハナムグリ(中胸腹板突起)
シロテンハナムグリ(中胸腹板突起)

・腹部腹板は,♂では中央が凹圧され,横から見てゆるい弓状を呈するが,♀では直線的
この個体の腹部は直線的なので,この点からも♀だと思います。

シロテンハナムグリ(腹部)
シロテンハナムグリ(腹部)

最初,図鑑は保育社『原色日本甲虫図鑑』(1985年)で調べていたのですが,記述が不明瞭で戸惑ってしまう箇所がありました。

 16-25mm。唐金色,強弱の緑色光沢を帯び,ときに全体が緑色または赤銅色ないし黒紫色,白斑を散布するが,会合部中央後のものはつねに2点紋または小白斑となる。前脛節の外歯は2本であるが,第2歯はときには痕跡的または消失する。上翅の点刻は強く,翅端の突出は弱い。後脛節内側の長毛は灰褐色。中胸突起は杏形で点刻を疎布,腹部腹板は♂♀ともに中高。5~9月。樹液や熟果に集まり,花にくることもある。

・白斑を散布するが,会合部中央後のものはつねに2点紋または小白斑となる。
「会合部中央後のもの」とはどこを指すのか分かりません。斑紋は個体差が大きく,ネット上の写真を見比べてみてもよくわかりませんでした。
・前脛節の外歯は2本であるが,第2歯はときには痕跡的または消失する。
誤植でしょうか。外歯は3本のはずです。

シロテンハナムグリはシラホシハナムグリとよく似ていて,ネット上に両者の見分け方が多く載っています。
まとめると次のようになります。(私はまだシラホシハナムグリを見たことがありません)
① 頭盾の形
シロテンハナムグリ:前縁中央部で凹む
シラホシハナムグリ:前縁に凹みはない
② 中胸腹板突起の形
シロテンハナムグリ:うちわ状で前縁がゆるやかに弧を描く
シラホシハナムグリ:幅の広い楕円形
③ 翅端の形
シロテンハナムグリ:尖らない
シラホシハナムグリ:短く突出する

シロテンハナムグリ(翅端)
シロテンハナムグリ(翅端)

④ 脚の長さ
シロテンハナムグリ:相対的に長い
シラホシハナムグリ:相対的に短い

シロテンハナムグリ(腹面)
シロテンハナムグリ(腹面)

⑤ 後翅の色
シロテンハナムグリ:茶色
シラホシハナムグリ:黒色

シロテンハナムグリ(後翅)
シロテンハナムグリ(後翅)