ケンポナシの過去投稿を一つにまとめました。
2024年11月19日
前夜に降った雨のせいか,黄色い落葉が路上に散らばっていました。
ケンポナシの葉です。
果実をつけた小枝もたくさん落ちていました。
持ちあげるとズシリと重く,甘い匂いがしています。
奇妙な形に膨らんだ花柄は肉質で甘く,動物たちを引き寄せます。
動物が甘い花柄と一緒に果実を食べ,未消化の種子が糞と一緒に排出される仕組みです。
本種は正確にはケンポナシ近縁の「ケケンポナシ」になります。
本州,四国には本種の方が普通だとか。
果実や葉の下面に毛があります。
果実の中には,種子が3個入っていました。
枝に果序がついている様子。
葉は広卵形。
2011年11月29日
[写真1]ケケンポナシの果実
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[写真2]ケケンポナシの葉
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[写真3]ケケンポナシの果実
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[写真4]ケケンポナシの花柄(断面)
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[写真5]ケケンポナシの種子
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[写真6]ケケンポナシの果実
2011年8月12日 »»拡大
ケンポナシの樹下に,果実をつけた小枝がたくさん落ちていました。[写真1]
ひろいあげると,甘い匂いがします。
森のなかであれば,きっとタヌキやテンといった動物を惹きつけていることでしょう。
この甘い匂いは,果実ではなく,果実を付けている枝(花柄)の部分から発しています。
[写真4]は,肉厚になった花柄を縦に切ったところ。
かじってみると,干しブドウやなつめといったドライフルーツ系の味がします。
平凡社『世界大百科事典』(2005年)には,ケンポナシについて次のように書いてありました。
丸い大きな葉をもつクロウメモドキ科の落葉高木。晩秋に花序の先端部がふくれて肉質になり,果実とともに落ちる。これは甘くて食べられる。ケンポナシはテンポナシ(手棒梨)がなまったもので,ふくれた花序の柄に由来するという。
果実はほぼ球形で,革質の果皮に包まれ,中に光沢のある平たい3種子がある。北海道(奥尻島),本州,四国,九州,朝鮮,中国に分布する。本州,四国ではケケンポナシ H. tumentella Nakaiが普通で,果実に毛があり,葉もやや厚い。ケンポナシは果柄が子どもや野生動物の食用となり,時には売られることもある。また果柄や果実には利尿作用があり,漢方薬や民間薬として利用される。
「ケンポナシは果柄が子どもや野生動物の食用となり,時には売られることもある。」そうですが,フルーツとしてたくさん食べるものでもないので,売られているのは果実酒や民間薬用でしょうか。
「本州,四国ではケケンポナシが普通」で,本種も正確には「ケ(毛)ケンポナシ」です。
[写真3]では,果実の毛はわかりにくいですが,8月に撮った[写真6]を見ると,果実に毛が生えている様子がよくわかります。
「果実はほぼ球形で,革質の果皮に包まれ,中に光沢のある平たい3種子」があります。
[写真5]は,果実から取り出した3個の種子。
4~5mmの大きさで,堅くて,表面はつるつるしていています。
ケンポナシは,果実が動物に食べられ,糞と一緒に未消化の種子が排出されることによって種子を散布する,被食散布型の植物です。
小さくて,堅くて,つるつるした種子は,いかにも消化不良をおこしそうですね。
くねくねと曲がった太い花柄に,果実がひと固まりとなるようにからまっている,奇妙な形も,動物に甘い花柄と一緒に種子も飲み込んでもらう工夫なのでしょう。
人が果実を味わう時,実際に食べている部分は,例えばカキは中果皮,ミカンは内果皮,偽果であるナシ,リンゴは花床部と様々ですが,枝の部分が変化して果実の役割をするというのはかなり変わっています。
他にそんな例はないだろうと思っていましたが,意外なことにイチジクも,枝が変化して果実の役割をしているそうです。
小林正明著『花からたねへ』(2007年)には,次のように書いてありました。
花を支える枝が変化して,果実の役割をするようになった種類がある。この役割をする種類にはケンポナシ型とイチジク型の2つがある(図)。枝が果実の役割をするという意味では,花托が変化するノイバラなどや,さらに子房下位の仲間もこれに近い。
2011年6月30日
ここ数日,ケンポナシの花にたくさんのハチが集まっています。
(正確には,この花は「ケンポナシ」ではなく「ケケンポナシ」です。ケケンポナシの花について→2007年6月24日)
花にはよい香りがします。
小さな花を一度にたくさん開花させ,甘い蜜と香りにより,虫たちを効率よく誘う作戦のようです。
見ていると,訪れる虫は,みごとにハチの仲間ばかりです。
チョウは全く訪れていません。
花の形状が,チョウの長い口吻(こうふん)に適していないのでしょうか。
花から花へせわしなく飛び回るハチたちを見ていると,花粉の媒介者としては,チョウよりずっと優秀だとわかります。
2007年12月13日
[写真1]2007年12月13日
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[写真2]果柄切断面
2007年12月13日 »»拡大
[写真3]2007年9月12日
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[写真4]2007年8月7日
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[写真5]花
2007年6月23日 »»拡大
ケケンポナシはすっかり葉を落とし,樹下には落ち葉とともに実をつけた小枝が落ちています。
ケケンポナシとは変な名前ですが,毛のあるケンポナシという意味です。
ケンポナシとケケンポナシの違いは,保育社「原色日本植物図鑑」(1989年)によると
『ケケンポナシ
果実は有毛,葉はやや厚く,下面は花序と共に毛があり,鋸歯は低平で時に一部不明となる
ケンポナシ
果実は無毛,花序および葉の下面も通常毛がない。鋸歯は斜3角形で鋭頭』
ケンポナシの分布域は「北海道奥尻島,本州,四国,九州,朝鮮半島,中国中・西部」なのに対し,ケケンポナシの分布域は「本州,四国」です。
分布域から見てケケンポナシはケンポナシよりマイナーな種類なのかと思っていましたが,ケンポナシの説明に次のように書いてありました。
『山では前種(ケケンポナシ)に比してごくまれである。』
山ではケケンポナシのほうがメジャーな存在であるようです。
丸い実の中には,3個の黒い種子が入っています。
この実は食べられませんが,くねくねと曲がって,ぷよぷよとしている果柄は甘くて食べることができます。
鼻に近づけると甘い匂いがします。
[写真2]は,果柄の切断面です。
名前に「ナシ」がついていることから,「ナシのような味」と書いてあることが多いのですが,(昔のナシはこんな味だったのかもしれませんが)私は黒砂糖とか干しブドウの甘みに近いと思います。
初夏に花が咲いて[写真5],8月ごろには果柄が膨らみはじめ[写真4],9月にはかなり肉質な感じになってきます[写真3]。
この頃にはまだ甘くありません。
葉が落ち,枝ごと実が落ちる時分になると,肉質な果柄の部分から甘い香りがします。
私たちが果物として食べているものは,花の色々な部分が太ったものです。
カキやミカンなど普通は子房の壁の部分を食べているのですが,ザクロは種子の皮の部分,パイナップルはいくつかの子房が融合したもの,イチゴは花床とそれについた子房,と意外な部分を食べているものも多くあります。
果柄の部分を食べるというのも,かなり変ですよね。
2007年6月24日
ケケンポナシの花が咲いていました。
[写真1]と[写真2]の2種類の花があるように見えたので,雌雄異花かと思いましたが,違いました。
[写真1」]の状態から花弁と萼が反り返り,[写真2]のようになります。
萼片5個,花弁5個,雄しべ5本。雌しべは1本,3花柱からなります。
雄しべは花弁につつまれ一緒に反り返るので,一見,花柱だけの雌花のように見えます。[写真3]
何とも奇妙な形ですが,この形に何か利点があるのでしょうか。
ケケンポナシとは別にケンポナシというものがありますが,ケンポナシが山にあるのはまれだそうです。
ケケンポナシとケンポナシの違いについて,保育社「原色日本植物図鑑・木本編Ⅰ」には次のように書いてありました。
ケケンポナシ…果実は有毛,葉はやや厚く,下面は花序と共に毛があり,鋸歯は低平で時に一部不明となる。
ケンポナシ…果実は無毛,花序および葉の下面も通常毛がない。鋸歯は斜3角形で鋭頭。
[写真4]は,8月の果実の状態。(2003年8月18日)
2006年1月15日
ケンポナシ。枝先に実が残っています。秋先の実(といっても太くなった花柄)はまだ渋いですが,今時分に噛み締めると濃密な甘さが広がります。花が咲くとあたりに甘い香が漂うそうです。しかし,毎日この木の横を通っていますが,それに気づいたことがありません。何か他の匂いと混同しているのでしょうか。
2003年8月18日
ケンポナシの実。食べられるのは実でなく,茶色い果柄のほうです。果柄がもっと太くなり,熟すと甘い味がするそうです。一度食べたときは,全然甘くありませんでした。実も落ち,冬になり,かなり熟さないと甘くならないそうです。
2018年6月4日
■ケケンポナシに花が咲いていた。(九条山)
ケケンポナシの花について→2007年6月24日
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[写真9]ケケンポナシの花
2018年5月25日
■ケケンポナシに花が咲いていた。(九条山)
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[写真71]ケケンポナシ
2011年7月5日
もう受粉が終わり,蜜が出なくなったのか,ケンポナシの花に集まるハチたちもほとんどいなくなりました。
そんな中で,ヒメバチのなかまと思われるハチだけはよく集まっています。
黒と黄色の精悍な姿に長い産卵管が印象的です。
ヒメバチのなかまは,腹部がくびれているので,シェイプアップしたアスリートのようで美しいですね。
1頭捕まえて,名前を調べたのですが,わかりませんでした。
ヒメバチのなかまは種類が多く,専門家でも簡単には同定できるものではないそうです
2003年11月14日
そろそろ甘くなっているかな,とケンポナシの果柄をかじってみました。甘い味が口の中に広がりました。アケビの実のあっさりした甘みと違って,黒砂糖のような濃密な甘さです。冬になったら,もっと甘くなるのでしょうか。