エゴノキの過去投稿を一つにまとめました。


2025年5月21日

疎水のレンガ敷に,白い星型の花殻が散らばっていました。

エゴノキ
エゴノキ[ in南禅寺福地町 on2025/5/18 ]

しばらく歩くと安養寺の石段にも,同じ白い花殻が落ちています。

エゴノキ
エゴノキ[ in粟田口山下町 on2025/5/18 ]

見上げると,長い花柄をつけた花がたくさん垂れ下がっていました。
エゴノキです。

エゴノキ
エゴノキ[ in粟田口山下町 on2025/5/18 ]

花弁が5枚あるように見えますが,落ちていた花を切り開くと花弁は筒状で,雄しべの基部が合着しています。

エゴノキ(花殻)
エゴノキ(花殻)

ツバキの花に似ていますね。
ツバキと同じように合弁花と見えて実は離弁花だろうと思ったのですが,エゴノキ科は合弁花でした。
紛らわしいですね。
合弁花も発生の過程では5枚の花弁が伸び,花弁の間の組織が伸びて一つに融合するそうです。

北隆館『牧野日本植物図鑑』(2017年)にはエゴノキの花について次のように書いてありました。

5~6月,小枝の先端に総状花序を出し,1~6個の白花を開く。花は長さ2~3cmの柄の先端に垂れ下がってつき,がくは緑色,5裂して杯状をなし,花冠は5深裂し,径約2.5cm,裂片は細長い卵形で外面に細かい毛を密生する。雄しべは多数で葯は黄色。

・小枝の先端に総状花序を出し,1~6個の白花を開く

エゴノキ(花序)
エゴノキ(花序)

・花は長さ2~3cmの柄の先端に垂れ下がってつき,がくは緑色,5裂して杯状をなし

エゴノキ(花断面)
エゴノキ(花断面)

・花冠は5深裂し,径約2.5cm,裂片は細長い卵形で外面に細かい毛を密生する。

エゴノキ(花弁・表)
エゴノキ(花弁・表)
エゴノキ(花弁・裏)
エゴノキ(花弁・裏)

花を水に乗せると浮きます。
落ちた花が水に浮き流される様は,古くから歌に詠まれています。
「えごの花 ながれ溜れば にほひけり」 中村 草田男

エゴノキ(水に浮いた花)
エゴノキ(水に浮いた花)

葉は長さ3~7mmの柄があり,互生,卵形で先端は尖り,わずかに先の鈍いきょ歯がある。

エゴノキ(葉・表)
エゴノキ(葉・表)
エゴノキ(葉・裏)
エゴノキ(葉・裏)

2013年5月26日

疏水わきの道に,小さな白い花がたくさん落ちていました。[写真1]
花のかたちのままに,ぽとりと落ちています。
上を見上げると,他の木々と競うように伸びた細い幹の上の方に,白い花が咲いていました。[写真2]

どこかで見た花のような気がするのですが思い出せず,図鑑をめくっているとありました。
エゴノキの花です。
エゴノキは公園樹や街路樹としても植えられ,街中でも目にすることがある木です。
コーヒー豆のような種ができます。(→2003年10月11日

[写真4][写真5]は,植栽の花を写したもの。
やはり今の時分はもう大部分の花が落ちて,残った雌しべだけが突き出ています。

エゴノキの花は咲いている様子よりも,散る風情の方が印象的なようで,おおくの句に詠まれています。

子に跔(かが)む妻をみてをりえご散れり(千代田葛彦)
そよぎてはそよやみてはえごこぼれ(亀井糸游)
えごの花鹿に池みちありにけり(岡井省二)

平凡社『日本の野生植物 木本Ⅱ』(1999年)には,エゴノキについて次のように書いてありました。

山麓や山の谷間に多い落葉性の小高木,高さ7~8m。若枝は緑色で星状毛があるが,のちに無毛となり,枝は暗褐紫色,幹の樹皮は淡黒色で比較的平滑。

花は5~6月に開き,長さ2~3cmの小花柄があって下向きに咲く。萼は倒円錐形で長さ4~5mm,縁には低い5歯がある。花冠は白色,径約2.5cm, 5深裂し,裂片の背面には星状毛がある。雄蕊は10本で,花冠筒部に着生する。花柱は直立し,雄蕊よりすこし長い。花が水面に落ちると, 5裂した花冠の中央に雄蕊が直立して水に浮かぶ。

「花が水面に落ちると, 5裂した花冠の中央に雄蕊が直立して水に浮かぶ。」とあります。
街中で見かけるエゴノキの花は水面に浮かんでいることはないので,どうしてわざわざこんなことが書いてあるのか不思議でした。

どうやらサクラの花筏と同じように,えごの花が川に浮かぶ様子は定番の情景のようです。
水面に浮かぶえごの花を詠んだ句が数多くありました。
もともとが谷間に多い木なので,落ちた花が谷川を流れるのではないかと想像します。

えごの花遠くへ流れ来てをりぬ(山口青邨)
えご散りて渚のごとく寄らしむる(皆吉爽雨)
えごの花散り敷く水に漕ぎ入りぬ(大橋越央子)


2003年10月11日

エゴノキ
エゴノキの下に実がたくさん落ちていました。二つに割れた茶色い実は,コーヒー豆にそっくりですが,食べることはできません。エゴノキの名前は,実を食べると「えぐい」ことからきています。エゴサポニンという毒があり,昔はつぶした実を川に流して魚を捕まえるのにも使っていたそうです。