サネカズラの過去投稿を一つにまとめました。


2026年8月14日

見上げると、濃い緑の葉に隠れて白い小さな花が咲いていました。
サネカズラの花です。

サネカズラ(雄花)
サネカズラ(雄花)[ in夷谷町 on2026/8/7 ]
サネカズラ(雄花)
サネカズラ(雄花)[ in夷谷町 on2026/8/7 ]

白い肉厚の花びらに囲まれて、中心が紅い球状の塊になっています。
見ただけでは花の構造がどうなっているのか分かりません。

サネカズラ(雄花)
サネカズラ(雄花)
サネカズラ(雄花)
サネカズラ(雄花)

見た印象では、この紅い球状のものが成長して、秋にあの紅い実になりそうです。

サネカズラ(果実)
サネカズラ(果実)[ in夷谷町 on2015/11/20 ]

しかし、そうではなくて、これは雄花でした。
サネカズラの花は雌雄異花で実にややこしい構造をしています。
雄しべも雌しべも通常の花とは随分異なります。

雄花の紅い塊は、球状の花托の周りに雄しべが集まったものです。
白い斑点のように見えるものが葯です。
紅い部分は2個の半葯を隔てる葯隔といわれるものです。
葯はふつう2個の半葯からなり、半葯の間には花糸の延長部が伸びていいます。
これを葯隔といい、細い線状に見えるものが多いです。

オニユリの雄しべ
オニユリの雄しべ

サネカズラの葯隔は異常に大きく発達し、両端に白い小さな葯(半葯)があります。

サネカズラ(雄しべ)
サネカズラ(雄しべ)

横に切断した断面です。

サネカズラ(雄しべ・断面)
サネカズラ(雄しべ・断面)
サネカズラ(雄しべ・断面)
サネカズラ(雄しべ・断面)

雌花も雄花と同じような形をしています。
黄白色の肉厚な花被片に囲まれ、中心にたくさんの淡緑色の雌しべが球状にぎっしり集まっています。

サネカズラ(雌花)
サネカズラ(雌花)[ in夷谷町 on2005/9/1 ]
サネカズラ(雌花)
サネカズラ(雌花)[ in夷谷町 on2026/8/9 ]

淡緑色の塊から飛び出している白色の突起が柱頭です。

サネカズラ(雌しべ・断面)
サネカズラ(雌しべ・断面)

雌しべはそれぞれが独立した雌しべ(離生心皮)です。
個々の子房は丸みのある4~5角形で、多角形状に並んでいます。

サネカズラ(雌しべ)
サネカズラ(雌しべ)

子房の側面から白い半透明状の花柱・柱頭が伸びています。

サネカズラ(雌しべ)
サネカズラ(雌しべ)

2015年11月28日

アラカシの茂みに,赤く色づいたサネカズラの実が生っていました。[写真1]
常緑樹の濃い緑色の葉のなかで,鮮やかな赤い色が目を引きます。

サネカズラの枝葉はアラカシとよく似ていて,どの部分がサネカズラでどの部分がアラカシなのか見分けがつきません。
赤い実もアラカシがつけたもののように見えます。
あまりにもアラカシに溶け込んだ様子は,昆虫の擬態に似たものを感じてしまいました。

平凡社『世界大百科事典』(2007年)には,サネカズラについて次のように書いてありました。

 地面をほふくしたり灌木におおいかぶさったりするマツブサ科の常緑のつる性木本。つるのからまる様から,〈さねかずら〉は“逢う”や“来る”の枕詞である。学名のKadsuraは日本語の葛(かずら)よりついた。古くは茎を煮て得た粘液を整髪に用いたので美男葛の別名がある。
 夏に黄白色の小さな花を葉腋(ようえき)から出す。多くは単性花,時に両性花をつける。秋に多数の赤い果実が果托について丸い集合果を形成する。

 樹皮にキシログルクロ二ドを含む粘質物があり,水で抽出して整髪に用いたり製紙用糊に使ったりした。樹皮からは繊維をとる。

・マツブサ科
科の名前になっている「マツブサ」は見たことがありません。
ぶどうの様な房状の実がなる,蔓性木本らしいです。
見たことがないのはもっともで,京都府レッドデータブックでは準絶滅危惧種になっていました。
選定理由として「自生地,個体数ともに少ない」とあります。

・〈さねかずら〉は“逢う”や“来る”の枕詞である
2013年1月6日

・学名のKadsuraは日本語の葛(かずら)よりついた
2013年1月6日

・古くは茎を煮て得た粘液を整髪に用いたので美男葛の別名がある
2013年1月6日

・夏に黄白色の小さな花を葉腋(ようえき)から出す。多くは単性花,時に両性花をつける。
[写真8]は雌花です。(→2005年9月1日
たくさんの子房が球形に寄り集まった形は,果実の原形を示していますね。

・秋に多数の赤い果実が果托について丸い集合果を形成する
[写真3]は実の断面です。
大きくふくらんだ花托のまわりに,球形の果実がくっついています。
花托(かたく)とは花床(かしょう)ともいい,雌しべや雄しべを支えている部分です。

花托が大きく膨らんだ実は意外に多くて,ナシやリンゴ,イチゴなど果物にも多くあります。
例えば,イチゴの食用にしている果肉部分は花托が肥大化したもので,本当の果実は赤い実のまわりについている,黒い粒々一個一個です。
サネカズラの実も同じような構造をしていて,肥大した花托のまわりについている,赤い果実一個が,イチゴ表面の黒い粒一個にあたります。

上書では「花托」ではなく,「果托」の文字が使われています。
花ではなく,果実を支える部分ということで,「果托」が使われたのでしょうか。
花の「花托」が膨らんで,果実の「果托」になった?


2013年1月6日

藪のなかの木にからみついたサネカズラに,紅い実がなっていました。[写真1]
ゼリーのような質感をした花托のまわりに,5mmほどの大きさの丸い果実が,球状にくっついています。[写真2]
それぞれの果実の中には2個の種がはいっていました。[写真5]
腎臓形をした,意外なほど艶々した種子です。[写真6]
この光沢のある表面は,実を食べた鳥が種子を消化してしまわないように,保護する役目をしているのかもしれません。

お正月に「サネカズラ」の名を聞くと,どうしても百人一首を思い出しますね。

名にし負(お)はば逢坂山(あふさかやま)のさねかづら 人に知られでくるよしもがな<(三条右大臣)

この歌に出てくる「逢坂山」は,九条山から三条通りを東へ7キロほど行ったところにあります。
国道一号線を使って京都から琵琶湖へ行くときには必ず通るのですが,今ではただの峠道で,ほとんどの人は,そこがあの有名な「逢坂山」だとは気付かないようです。

古典に出てくる植物や虫の名前は,時代によって別の種類と入れ替わることがあり,ややこしいのですが,サネカズラは万葉集の時代から,「さねかづら(さなかづら)」で変わっていないようです。
「さねかづら」の「さね」を「さ寝」(「さ」は接頭語。「ね」は下二段動詞「ぬ」の連用形の名詞化。男女が一緒に寝ること。)との掛詞として,男女の恋歌によく使われています。
また,「逢う」「来る」の枕詞ともなっています。
小学館『日本国語大辞典』(1980年)によると

はいまわった蔓が末で逢うということから「逢う」「のちに逢う」にかかる。また,蔓をたぐるということから,「繰(く)る」と同音の「来る」にかかる。

サネカズラの語源については,牧野富太郎著『植物一日一題』(1953年)には次のように書いてありました。

サネカズラは実蔓(サネカズラ)の意でその実が目だって美麗で著しいから,それでこのような名で呼ばれるようになったのだ。

このサネカズラは昔それをサナカズラといったとある。そしてその語原は滑(ナメ)りカズラの意で,サは発語,ナは滑りであるといわれ,このサナカズラが音転してサネカズラとなったとのことであるが,私はその解釈がはなはだややこしく,かつむつかしく,そしてシックリ頭に来なく感ずる。

小学館『日本国語大辞典』(1980年)には,語源説として次のように書いてありました。

(1)サナカヅラの音転〔大言海〕。(2)ナメリ(滑)があるところから,サネはサナメ(真滑)の約〔古事記伝〕。マヌル(真滑)の義〔雅言考〕。(3)サはサ(五),ネはナメ(味)の反〔名語記〕(4)サネカツラ(実蔓)の義〔名語記・言元梯・名言通〕。(5)サネ,またはサナという名の蔓草の義〔万葉集講義=折口信夫〕。

要は,冬になる赤い実に着目して「実(さね)」と呼んだと考えるのか,茎からとれる粘液に着目して「滑(なめり)」と呼んだと考えるのか,の二つに集約できるようです。
現代ではサネカズラの茎から粘液がとれることはすっかり忘れられていますが,昔は髪油や製紙用の糊料として一般的に用いられていたようです。
髪油として用いられたことから,サネカズラには美男葛(ビナンカズラ)の別名もあります。
『植物一日一題』には,次のようにあります。

サネカズラには美男蔓の名がある。これにこんな名のあるのはその嫩(どん=若い)の枝蔓の内皮が粘るから,その粘汁を水に浸出せしめて頭髪を梳(くしけ)ずるに利用したからである。これは無論女が主もにそうしたろうから,美女蔓の名もありそうなもんだがそんな名はなく,美人ソウの名のみがある。

また,サネカズラの学名 Kadsura japomica の Kadsura は日本語のカズラからきています。
この学名がつけられた経緯に関して,『植物一日一題』には次のように書いてありました。

 このサネカズラの属名をKadsuraと称するが,これは西暦1713年に刊行せられたケンフェル(Kaempfer)氏の著『海外奇聞』 (Amoenitatum Exoticarum) にSane Kadsura(サネカズラ)とあるのから採ったもので,これへズナル (Dunat) 氏がjaponicaなる種名〔種小名〕をつけてKadsura japomica Dunalの学名をつくったものだ。


2006年11月27日

サネカズラの実
  サネカズラの実。本来は花托の周りにぐるっと実がついて球状になるのですが,これは十分に実が成長せず,いびつな形になっています。
  サネカズラの語源について,牧野新日本植物図鑑には次のように書いてあります。「実葛は,多分,果実の時に美くし目立つからであると思う。また一説にサネカズラは古名のサナカズラの音転で,サナカズラは滑り葛(ナメリカズラ)の意味。このサは発語で,ナは滑(なめ)のナだという。美男葛は枝の皮の粘汁を水に浸出してその液で頭髪を整えたからである。」


2006年2月11日

サネカズラ の実
サネカズラ の実。秋には表面に美しい実をつけていた,丸い花托もしぼんでいます。今日の最低気温は5.4度。暖かい朝でした。


2005年12月12日

サネカズラの実
サネカズラの実が熟し,みずみずしい赤い色をしています。おいしそうですが,食べたことはありません。実は鎮咳,滋養強壮薬になるくらいですから,食べて毒になるものではないと思います。でも漢方名は「南五味子」といい,五味子とは「酸,苦,甘,辛,鹹(カン)」の五つの味を持つ果実の意だそうなので,おいしいものではないようです。


2005年11月12日

サネカズラの実
サネカズラの実。まだ青いままのものもありますが,大部分の実は赤く色づいています。


2005年10月25日

サネカズラの実
サネカズラの実が,ほんのりと赤くなりかけています。薬用になるくらいですから,食べることはできると思うのですが,味見をしたことはありません。赤く熟した実を,細かくくずして日干しにしたものを,南五味子(なんごみし)というそうです。滋養強壮,鎮咳に効くとか。


2005年9月1日

サネカズラの雌花
サネカズラの雌花。雄花か雌花か確かめよう触れると,花びらがポロリととれてしまいました。雌しべが球状に集まっています。雌雄異株のものと雌雄同株のものがありますが,この株には雌花しかないようです。


2005年8月30日

サネカズラの花
サネカズラの花。実葛の名のとおり,やはり花より実の方が美しいですか。目立たない花です。


2005年1月3日

サネカズラ
冬枯れのこの季節に,ツヤツヤとした緑色の葉を付けた蔓がありました。サネカズラです。実が落ち,ゼリーのような花托が現れています。子供が冬休みの宿題に百人一首を覚えていますが,百人一首の中にもサネカヅラを詠んだ歌があります。名にしおはば逢坂山のさねかづら人に知られでくるよしもがな。私がこの歌を覚えた子供の頃は福岡に住んでいたので,「サネカヅラ」も「逢坂山」も違う世界のことでしたが,京都に住むようになって百人一首の世界が随分身近になりました。


2003年11月25日

サネカズラの実
サネカズラの実。実が美しいので「実葛(サネカズラ)」の名がついています。美男葛(ビナンカズラ)の別名もあります。これは,枝を刻んで水につけておくと出てくる粘液を,びんつけ油の代わりに整髪に使ったことによるそうです。


2002年12月16日

サネカズラの実
サネカズラの実。表面の実がとれて丸い花托が見えています。不思議な形ですね。「実葛」と書きますが,やはり昔から実が特徴の葛なのでしょうか。
枝が二つに分かれた後又絡み合うので,「逢う」の意で歌によく詠まれている。万葉集では十首の歌が詠まれているそうです。


2002年12月12日

サネカズラの実
ラズベリーをいっぱいのせたプチケーキのように写っていますが,これはサネカズラの実です。樹液を水で薄めて頭に塗っていたことから,美男葛(ビナンカズラ)の別名もあります。百人一首に「名にし負わば、逢坂山のサネカズラ、人に知られで来るよしもがな」とあります。