ウスバキトンボの過去投稿を一つにまとめました。
2026年9月7日
岡崎の歩道にウスバキトンボが死んでいました。
昨夜の雨で翅に水滴がついています。
体はアリに食べられて空洞になっていました。

ウスバキトンボは南方から海を渡って飛来し、世代交代を繰り返しながら北上することが知られています。
この個体は翅がきれいなので、海を渡ってきた個体とは考えられません。
お盆の頃に疎水の上を群舞していた1頭だと思います。
北隆館『日本昆虫図鑑』(1956年)には、ウスバキトンボについて次のように書いてありました。(旧字体を新字体に変換しています)
頭部は大きく,翅広大な種類.体は橙黄色であるが,成熟雄では腹背に赤色を帯びることがある.頭部胸部は殆んど無斑,腹背には図の如き黒斑がある.雄の尾部上附属器は細長く黒色,肢は淡黄色,腿節の下面,脛節以下は黒色である.翅透明後翅基部に近く橙黄色部がある.縁紋も同色又は鮮黄を呈し,その外縁は著しく斜位をなしている.腹長30mm内外,後翅40mm内外.飛翔力強く,一定の空中に群翔し,又海上に出で移動することありと考えられる.本種は地球を一週して世界の熱帯及び亜熱帯並びに温帯の各地に広く分布し,東亜ではカムチャーツカ・樺太・南千島・北海道・本州・四国・九州・琉球・台湾・小笠原・ミクロネシア・朝鮮・満洲・中国その他南方諸地域に知られる.本州中部にては8,9月頃多く出現する.
・頭部は大きく,翅広大な種類.体は橙黄色


・頭部胸部は殆んど無斑,腹背には図の如き黒斑がある.肢は淡黄色,腿節の下面,脛節以下は黒色である.

・翅透明後翅基部に近く橙黄色部がある.縁紋も同色又は鮮黄を呈し,その外縁は著しく斜位をなしている.

・飛翔力強く,一定の空中に群翔し,又海上に出で移動することありと考えられる.
『船と海上気象 26(1)』(気象庁1982年)に、1967年7月に発生した台風10号の台風の眼の中でウスバキトンボの大群に遭遇した記録が載っていました。
“のじま”が台風中心域に入った時刻は,24日1110ころであることはすでに述べたが,ウスバキトンボを初めて見たのは1100ころで,1220から1230の間に最高に達し,空が暗くなるくらいの大群が船の廻りを飛び交い,観測甲板で腕を振廻すと数頭が腕に当たるくらいの密度で群飛し,操舵室にも飛び込んできた。そのころ船首方向には青空が見られた。“のじま”は台風の進行方向(北西~西北西)に大体直角(60°の方角)に航行しており,船速は12ノットで,トンボの大群の幅は約2海里くらいと考えられる。その後1230船は北に変針した。トンボは1240~1245ごろから,何かに吸込まれるように急に減少して100頭ぐらい,1300~1400ごろには数10頭となり,14時すぎに見られなくなった。
この際、1頭も船に止まらなかったそうです。
2018年8月12日
(13)ウスバキトンボがとまっていた。お盆のころによく見るトンボ。(岡崎)
・ウスバキトンボについて→2014年9月28日

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[写真13]ウスバキトンボ
2016年9月3日
・ウスバキトンボ。歩道上にとまっていた。[写真13]

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[写真13]ウスバキトンボ
2014年9月28日
動物園北側の仮設塀に薄茶色のトンボがとまっていました。[写真1][写真2]
寿命間近なのか,気温が低いせいなのか,近付いても逃げようとしません。
手で簡単に捕まえることができました。
今,動物園はリニューアル工事中で,北側のレンガ塀は撤去され鉄製の仮設塀に変わっています。
鉄板は朝方かなり冷たくなっていると思いますが,そのせいでしょうか。
朝6時の京都の気温は20.9度でした。
ランニングの途中だったので,バッグに入れて走ったところ,家に帰ってみると悲惨なことになっていました。
両方の複眼がつぶれてしまっています。
大丈夫なように入れたつもりだったのですが。
図鑑で名前を調べたところ,ウスバキトンボでした。
名前のとおり,翅が薄く,体も柔らかく華奢です。
季節風にのって海を渡るそうなので,できるだけ体を軽くしているようです。
北海道大学図書刊行会『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑 』(1999年)の検索表で検索した結果は次の通りです。
1.前翅と後翅が違う形。三角室がある。[写真5]
……不均翅亜目
2.前翅と後翅の三角室の向きが違う。[写真5]
……エゾトンボ科,トンボ科
3.頭部複眼後側縁に屈曲部がなく,なめらか。[写真6]
……トンボ科
4.体長32mm以上。[写真3]
5.腹部の色は,黒色でないか,黒色でも第3,4節に乳白色部も黄色部もない。[写真3]
6.後翅の肛角部が内側に広がる。[写真5]
7.肛角部が内側に大きく広がる。[写真5]
8.翅の色はほぼ無紋。[写真5]
……ウスバキトンボ属(1種)ウスバキトンボ
ミナミヤンマ・クラブ『近畿のトンボ図鑑 』(2009年)には,ウスバキトンボの生態について次のように書いてありました。
卵期3~4日。幼虫期約40日。 1年多世代型。春に少数の個体が見られるが,多くは初夏に低気圧や台風に伴って南方から若い個体が多数飛来するものと考えられる。先住の捕食者がいない,できたばかりの水域にいち早く産卵し,干上がるまでの1ケ月ほどの間(夏季)に急速に成長して羽化する。ただし,気温のそれ程高くない春季や秋季は成長がかなり遅くなる。幼虫は水温約10℃以下では死滅するため,毎年,世代交代を繰り返しながら北上を繰り返している。
ウスバキトンボはお盆の頃によく見る普通種のトンボですが,これを読むと随分不思議な,普通でない生態をしています。
夏のはじめに南方から,北の新天地をめざして,たくさんの若い個体が海を渡ってきて,卵を産んで,卵は短期間に羽化し,羽化した若い個体はさらに北を目指し,卵を産み,羽化した個体がさらに北を目指し,北へ北へと進んで,冬の訪れとともに,寒さに耐えられずに全滅する。
何世代にも渡る物語は,必ず破滅的な最後を迎えるという訳です。
全てが破滅へと向かって進む,こんな理不尽を大昔から繰り返していることに,意味があるのかと思えますが,多分意味があるのでしょう。
種として繁栄しているのですから。
しかし,そこに生物学的な教訓を読み取ろうとするのは,怖い感じがしますね。
2007年10月19日
道の真中でウスバキトンボがじっとしていました。
とまっているのか,死んでいるのか。
指でつつくと脚が動いたので,生きているようです。
手にひらに乗せ写真を撮りました。
「ウスバ(薄翅)」の名前のとおり,薄く透明な翅をしています。
翅は体の割には大きく,とくに後翅が幅広くなっています。
体はうすいオレンジ色。頭部胸部はほとんど無班で,腹部の背中側に黒い縦線があります。
福岡に住んでいた子供のころ,お盆の時期に群れをなして飛んでいた「赤トンボ」は,今から考えるとこのウスバキトンボだったようです。
黄色いのにどうしてアカトンボというのか不思議でした。
アキアカネやナツアカネは秋になると赤く色づきますが,ウスバキトンボは赤くはなりません。
山内りゅう著「田んぼの生き物図鑑」には,ウスバキトンボについて次のように書いてありました。
『亜熱帯から飛来 体長は45~52mm。複眼が大きく体色は薄いオレンジ色。全体に翅は大きいが,後翅はとくに幅広い。故郷は沖縄以南の亜熱帯地方で,本州へは4~5月頃に飛来し,その後各地で世代交代を繰り返しながら日本全国に広がっていく。幼虫の成長は早く,そのため水溜まりのような一時的な水域でも生育できる。夏以降に,利用されない学校のプールなどで発生することもある。しかし,寒さに弱く,本州以北での越冬は困難である。
夏に多い「盆トンボ」 本種が田んぼでとくに多く発生する時期は,ちょうどアキアカネがいっせいに羽化して高地に移動し,田んぼが一時的に空白になる時期と重なる。おそらく,外から飛来する本種にとって,在来種と競合せずに利用できる時期をうまく選んでいるのだろう。本種も「アカトンボ」と呼ばれることがあるが,体色は赤くはならない。地方によっては「盆トンボ」と呼ばれることもあり,群れをなして田んぼや池などの上ゆっくりと飛ぶ姿がちょうどお盆の頃に目につくようになる。秋になると,水辺と関係のない空き地やグラウンドなどでも目にする機会が増える。』
写真を数枚撮ったところで,翅を震わせ,手のひらからふわりと浮きあがると,元気に飛んでゆきました。
翅を震わせたときに手に伝わってきた震動が,しばらくの間ここちよい感触として残っていました。








