岡崎の歩道にウスバキトンボが死んでいました。
昨夜の雨で翅に水滴がついています。

体はアリに食べられて空洞になっていました。

ウスバキトンボ
ウスバキトンボ[ in南禅寺草川町 on2026/9/5 ]

ウスバキトンボは南方から海を渡って飛来し、世代交代を繰り返しながら北上することが知られています。
この個体は翅がきれいなので、海を渡ってきた個体とは考えられません。
お盆の頃に疎水の上を群舞していた1頭だと思います。

北隆館『日本昆虫図鑑』(1956年)には、ウスバキトンボについて次のように書いてありました。(旧字体を新字体に変換しています)

 頭部は大きく,翅広大な種類.体は橙黄色であるが,成熟雄では腹背に赤色を帯びることがある.頭部胸部は殆んど無斑,腹背には図の如き黒斑がある.雄の尾部上附属器は細長く黒色,肢は淡黄色,腿節の下面,脛節以下は黒色である.翅透明後翅基部に近く橙黄色部がある.縁紋も同色又は鮮黄を呈し,その外縁は著しく斜位をなしている.腹長30mm内外,後翅40mm内外.飛翔力強く,一定の空中に群翔し,又海上に出で移動することありと考えられる.本種は地球を一週して世界の熱帯及び亜熱帯並びに温帯の各地に広く分布し,東亜ではカムチャーツカ・樺太・南千島・北海道・本州・四国・九州・琉球・台湾・小笠原・ミクロネシア・朝鮮・満洲・中国その他南方諸地域に知られる.本州中部にては8,9月頃多く出現する.

・頭部は大きく,翅広大な種類.体は橙黄色

ウスバキトンボ(上面)
ウスバキトンボ(上面)
ウスバキトンボ(下面)
ウスバキトンボ(下面)

・頭部胸部は殆んど無斑,腹背には図の如き黒斑がある.肢は淡黄色,腿節の下面,脛節以下は黒色である.

ウスバキトンボ(側面)
ウスバキトンボ(側面)

・翅透明後翅基部に近く橙黄色部がある.縁紋も同色又は鮮黄を呈し,その外縁は著しく斜位をなしている.

ウスバキトンボ(翅)
ウスバキトンボ(翅)

・飛翔力強く,一定の空中に群翔し,又海上に出で移動することありと考えられる.

『船と海上気象 26(1)』(気象庁1982年)に、1967年7月に発生した台風10号の台風の眼の中でウスバキトンボの大群に遭遇した記録が載っていました。

“のじま”が台風中心域に入った時刻は,24日1110ころであることはすでに述べたが,ウスバキトンボを初めて見たのは1100ころで,1220から1230の間に最高に達し,空が暗くなるくらいの大群が船の廻りを飛び交い,観測甲板で腕を振廻すと数頭が腕に当たるくらいの密度で群飛し,操舵室にも飛び込んできた。そのころ船首方向には青空が見られた。“のじま”は台風の進行方向(北西~西北西)に大体直角(60°の方角)に航行しており,船速は12ノットで,トンボの大群の幅は約2海里くらいと考えられる。その後1230船は北に変針した。トンボは1240~1245ごろから,何かに吸込まれるように急に減少して100頭ぐらい,1300~1400ごろには数10頭となり,14時すぎに見られなくなった。

この際、1頭も船に止まらなかったそうです。