ハマクサギタマゴタケ(仮称)の正体がわかりました。 Amanita chepangiana (アマニタ・チェパンギアナ)のようです。既にナンヨウシロタマゴタケという和名が付されていました。

● Amanita chepangiana
『ネパールのキノコとキノコ栽培 改訂版』(渡辺和夫 2024年)に、ネパールで食用にされているAmanita chepangiana という白いテングタケの仲間についての記述がありました。

ネパールには食用キノコに Amanita chepangiana という白いテングタケの仲間がある。この白いキノコはツバおよびツボを持ち、傘には明瞭な条線があるのが特徴だが、本菌に酷似した猛毒のキノコがあり、誤食される可能性が高い。本菌は標高の低い沙羅双樹(Shorea robusta)の森に発生するそうだが、残念ながら見る機会はなかった。

● 白條蓋鵝膏
この「Amanita chepangiana という白いテングタケの仲間」が気になって調べたところ、中国では白條蓋鵝膏といわれるキノコで、食用にされていることがわかりました。
鵝膏はテングタケ属を指す中国語で、白條蓋鵝膏は「白い、スジのある傘を持つテングタケ」の意味になります。
中国雲南省の多くの地域の松林や樫林で見られるそうです。
ネパールで初めて食用キノコとして記載され、地元の先住民によって食用として利用されています。

台湾でも一般的なキノコのようで、『艾~台灣的真菌手札』というサイトに白條蓋鵝膏の解説と写真が載っていました。
写真を見るとまさしくハマクサギタマゴタケそのものです。
『艾~台灣的真菌手札』に掲載されていた写真
『艾~台灣的真菌手札』から引用
解説文を訳すと次のようになります。

【No.940】 Amanita chepangiana(白條蓋鵝膏)
夏から秋にかけて、一般的な林地や針広混交林の地上に単生または散生し、樹木と外生菌根を形成する。

子実体は大型。中国の文献によると傘の直径は8〜15cm(「Family Amanitaceae-amanitaceae.org」の記載では13〜19cm)。形状は扁半球形から、次第に平展へと変化する。色は白色で、中央部は淡い乳黄褐色を帯びる。表面は滑らかで、湿っている時はやや粘性がある。傘の縁には条線(長さは傘の半径の0.2〜0.3倍)があり、まれに白色のツボの破片が残る。

菌肉は白色または汚白色で、中央部がやや厚い。

ヒダは白色または乳白色。離生から、やや離生に近い。密度はやや細かく、通常は途中で断ち切られたような形の短いヒダがある。

柄の長さは9〜20cm、太さは1〜2cm(太いものは3.5cmに達する)。
円柱形で白色。表面は滑らか、または微細な鱗片があり、基部は膨らむ。
ツバは白色で膜質。柄の上部または頂生の近くに付き、縁は綿毛状で、脱落しやすい。ツボは汚白色から淡灰褐色。表面はよくひび割れ、やや厚みがある。大型の袋状で、高さは4〜8cm、直径は2.5〜5cm。

● 解説文との照合
採取した個体と解説文とを照らし合わせてみました。

・夏から秋にかけて、一般的な林地や針広混交林の地上に単生または散生し、樹木と外生菌根を形成する。
当地では7月~9月にシイやカシの落葉が堆積している地上に発生します。

・中国の文献によると傘の直径は8〜15cm(「Family Amanitaceae-amanitaceae.org」の記載では13〜19cm)
採取した個体の、傘の直径は15cmです。過去投稿を見ると大きいものは20cmありました。(解説文よりやや大きいか?)

ナンヨウシロタマゴタケ
ナンヨウシロタマゴタケ[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]

・(傘)形状は扁半球形から、次第に平展へと変化する。

ナンヨウシロタマゴタケ
ナンヨウシロタマゴタケ[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]

・(傘)色は白色で、中央部は淡い乳黄褐色を帯びる。表面は滑らかで、湿っている時はやや粘性がある。
確かに、湿っている時はやや粘性があります。

ナンヨウシロタマゴタケ(傘)
ナンヨウシロタマゴタケ(傘)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]

・傘の縁には条線(長さは傘の半径の0.2〜0.3倍)があり、まれに白色のツボの破片が残る。
この傘の縁にある条線が最大の特徴です。

ナンヨウシロタマゴタケ(傘)
ナンヨウシロタマゴタケ(傘)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]

・菌肉は白色または汚白色で、中央部がやや厚い。ヒダは白色または乳白色。離生から、やや離生に近い。密度はやや細かく、通常は途中で断ち切られたような形の短いヒダがある。

ナンヨウシロタマゴタケ(ヒダ)
ナンヨウシロタマゴタケ(ヒダ)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]
ナンヨウシロタマゴタケ(ヒダ)
ナンヨウシロタマゴタケ(ヒダ)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]

・柄の長さは9〜20cm、太さは1〜2cm(太いものは3.5cmに達する)。
円柱形で白色。表面は滑らか、または微細な鱗片があり、基部は膨らむ。

この個体の柄の長さは17cm、太さは1.8cm。

ナンヨウシロタマゴタケ(柄)
ナンヨウシロタマゴタケ(柄)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]

ツボの外被膜を取り除いた基部

ナンヨウシロタマゴタケ(柄)
ナンヨウシロタマゴタケ(柄)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]

・ツバは白色で膜質。柄の上部または頂生の近くに付き、縁は綿毛状で、脱落しやすい。

ナンヨウシロタマゴタケ(ツバ)
ナンヨウシロタマゴタケ(ツバ)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]

・ツボは汚白色から淡灰褐色。表面はよくひび割れ、やや厚みがある。大型の袋状で、高さは4〜8cm、直径は2.5〜5cm。
この個体のツボは高さ7cm、直径4cm。

ナンヨウシロタマゴタケ(ツボ)
ナンヨウシロタマゴタケ(ツボ)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]
ナンヨウシロタマゴタケ(ツボ)
ナンヨウシロタマゴタケ(ツボ)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]
ナンヨウシロタマゴタケ(幼菌)
ナンヨウシロタマゴタケ(幼菌)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]
ナンヨウシロタマゴタケ(幼菌・断面)
ナンヨウシロタマゴタケ(幼菌・断面)[ in粟田口大日山町 on2026/9/18 ]

解説文には臭いについての記述がありません。採取した個体にも気になる臭いはありませんでした。
ハマクサギタマゴタケにはハマクサギによく似た臭いがすることが特徴の一つに上げられていますが、 Amanita chepangiana(白條蓋鵝膏)には臭いがないようです。
食用とされていることからも、気になる臭いはないものと思われます。(ビニール袋に入れて1日置いたところ少し臭いがしていました。この臭いがハマクサギに似ているのかどうかはわかりません。少なくとも新鮮な個体には臭いはありません。)

● Amanita chepangiana に関する新種報告論文

Amanita chepangiana を新種として報告した際の学術論文が ResearchGate(リサーチ・ソーシャル・ネットワーク・サービス)に掲載されていました。
→ネパール中部から発見された新種 Amanita chepangiana(アマニタ・チェパンギアナ)の報告書

AIで翻訳して読んだところ、ハマクサギタマゴタケは Amanita chepangiana ではないかという思いが一層強くなりました。

語源: ネパール中部のチトワン郡およびダーディング郡の僻地に居住する、チベット・ビルマ語系を話すチェパン(Chepang)と呼ばれる部族にちなんで名付けられた。Amanita chepangiana は、古くからこのキノコと深く関わってきたチェパンの人々の間で大変珍重されている食用キノコである。

傘(PILEUS): 直径130–190 mm、乳白色で、中央部(ディスク)は時にやや灰色がかった色からやや黄色がかった色(3A2〜4A3)、初期は半球形からまんじゅう形、やがて開いて平らになるか、老熟すると中央部がやや凹む。外苞膜の下はやや光沢があり、濡れると粘性を生じる。表皮は縁から中央に向かって剥がれる。縁は内曲し、傘の開大のかなり早い段階から明瞭な条線(0.1R〜0.15R)が現れ、時にやや疣状の条線となり、開大初期には附着物を伴うことがある。肉は純白または乳白色で厚く、変色や傷による変色を起こさず、中央部から縁に向かって均一に薄くなる。外苞膜の残片は密な白色の綿毛状物質として存在するが、成熟すると消失するか雨で洗い流される。

ヒダ(LAMELLAE): 離生し、密、薄くて脆い。ごく僅かにピンク色を帯びた白色で、乾燥すると2.5Y 8/4〜10YR 7/8、あるいは約10YR 8/3に変化する。幅最大15 mmで、縁は微細な綿毛状、一部で分岐する。小ヒダはかなり豊富で長さは様々であり、やや漸尖形から漸尖形。

柄(STIPE): 150–180 × 21± mm、上方に向かってわずかに細くなり、頂部でやや広がる。ツバより下は白色の綿毛状または繊維状〜小鱗片状の物質で覆われ、ツバより上は粉状、手で触れると淡黄色または灰色がかった色に変わる。肉は白色で傷つくと淡黄色になり、綿毛状の白色物質で満たされるか中空になり、中央の空洞は直径6–17 mm、基部の球根(塊茎)を欠く。
ツバは垂れ下がり、膜質、薄く、一時的で白色、頂部から上部に位置する。上面には条線があり、時にスカート状のツバの縁から柄に達する薄い内部縁(limbus internus)を伴う。
ツボは大型で、白色〜帯白色または淡黄色〜革色(4A4まで)の管状の袋であり、かなり厚く革質、袋の30%未満が地表下に埋まる。柄の基部からツボの先端までの距離は50–60 mm、幅35–50 mmで、ツボの縁はその長さの少なくとも3分の2が遊離している。においはない。味は穏やか。

「においはない。味は穏やか。」とあります。やはり臭いはないようです。

●ナンヨウシロタマゴタケ
仮称ハマクサギタマゴタケが Amanita chepangiana だとしたら、既にナンヨウシロタマゴタケという和名がつけられていました。
2016年発行の『南西日本菌類誌』に、西表島産のサンプルに基づいた新産種報告があり、和名をナンヨウシロタマゴタケとしています。
学名にcf.が付いているので Amanita chepangiana と確定したわけではないようですが。
妖菌図鑑というサイトに詳細が掲載されていました。

●結論
ハマクサギタマゴタケ(仮称)という名称は用いずに、これからはナンヨウシロタマゴタケという名称を使用しようと思います。
ハマクサギタマゴタケという名称はハマクサギという一般的でない植物の名を冠しているうえに、その匂いが必須の所見ではないからです。
一番的確な名称は中国語の白條蓋鵝膏(白い、スジのある傘を持つテングタケ)かもしれませんが。

ナンヨウシロタマゴタケという名称の「ナンヨウ」も南方系のキノコであることを明示していてよいと思います。
西日本各地で発見例が急増していることが、地球温暖化を暗示することになるからです。
オオシロカラカサタケが急速に分布域を拡大していることと通じます。