• テングチョウ
  • テングチョウ
  • テングチョウ

飼育ケースの中でテングチョウが蛹になっていました。

葉裏に,緑色のものと褐色のものが1頭ずつぶら下がっています。
両方ともテングチョウだと思うのですが,私は緑色をした蛹しかみたことがありません。
保育社「原色日本蝶類生態図鑑」によると,テングチョウの蛹の体色は3種類あるそうです。

『蛹の体色には緑色,褐色,白黒まだらのおおよそ3タイプが見られるが,第2回目の成虫として羽化する蛹には,白黒まだらの色彩をもつものは知られていない。第1回目の成虫として羽化する蛹の期間が12日前後であるのに対し,第2回目の成虫として羽化する蛹の期間は,わずかに7日前後である。』

チョウの蛹は,帯で身体を枝にくくりつける帯蛹(たいよう)型とお尻を枝にくっ付ける垂蛹(すいよう)型があります。
アゲハチョウやシロチョウのなかまなどは帯蛹型,タテハチョウのなかまなどは垂蛹型です。

テングチョウはというと垂蛹型なのですが,一見すると帯蛹型のように見えます。帯蛹型なのに,体をくくりつけている糸がないという感じです。
保育社「原色日本蝶類生態図鑑」には次のように書いてありました。

『尾端を強く屈曲させて被蛹化物体の表面に対し,ほとんど平行になるような姿勢をとる。シジミタテハ科の種の中にも垂蛹のものに混じって,シジミチョウ科と同様に葉の表面などで帯蛹になるものがあるが,テングチョウのこの一見きわめて特異な蛹の姿勢も,シジミタテハ科との共通性を示すのであるのかもしれない。垂蛹姿勢をとる日本産蝶類の蛹のなかで,本種のように極端な屈曲状況を表すのは,ギンボシヒョウモン,アサヒヒョウモン,コムラサキ亜科とクロヒカゲモドキがある。』

「写真3」は1週間前の幼虫だった時のものです。シロチョウ科のような青虫です。
体の前半分を持ち上げたポーズをとっていますが,これはテングチョウ独特のもののようです。
保育社「原色日本蝶類生態図鑑」には次のように書いてありました。

『中齢以降の幼虫は腹脚をほぼ中脈上に置き,体の前半部を持ち上げた独特の姿勢をとっている。幼虫を驚かすと,さらにこの姿勢を強めるので,これは一種の威嚇であろうと推定されるが,一方,草本を食べるタテハチョウ科の幼虫の転落前の姿勢にも似ており,糸を引いて落下する行動の準備ではないかという見方もできる。』