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ナズナとグンバイナズナ

2009年6月2日
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ナズナとグンバイナズナ。
よく似ていますが,果実の形が違うのですぐに区別がつきます。

ナズナの別名ペンペングサは,果実の形が三味線のバチの形に似ていることに由来します。[写真1]
一方グンバイナズナの名は,果実の形が軍配に似ていることからきています。[写真2]
両種とも果実の形が名前の由来になっているのですね。

英名でもShepherd’s purse(羊飼いの財布),Shepherd’s Bag(羊飼いのバッグ),Witches’ Pouches(魔女の袋)などと呼ばれ,いずれも果実の形から来ています。

ナズナの語源については,「愛でる草」を意味する「撫菜」からきたとする説があります。
また,正月七日に食べる「七草がゆ」にもナズナがはいっています。
花は地味ですが,昔から人々に親しまれてきたことがわかります。

『牧野富太郎植物記』(1973年)には,ナズナについて次のように書いてありました。

ベンペングサは,古いかやぶき屋根の上などにはえるといわれ,こんな草が屋根にはえるようでは貧乏たらしいといわれ,勇みはだの江戸っ子などが,しりをまくってタンカを切るときには,
「おぼえていやがれ,そんなことをすりゃ,てめんとこの屋根にペンペン草をはやしてやるぞ!」
といったものだといいますが,しかし,ベンペングサはじっさいには屋根の上などにはあまりはえないものです。農家などのかやぶき屋根によくはえているのはベンペングサは少なく,ノミノツヅリ,ノゲシ,オニタビラコなどがふつうです。
ナズナは,正月七日の七種がゆの時ばかりでなく,むかしは日常の野菜としてふつうに食べたもので,ゆてておひたしにしたり,ゴマあえにしたり,油でいためたりして用いました。
江戸時代には,ナズナは日常の野菜としてひろく用いられ,ナズナ売りという商売もあったほどです。ナズナ売りはたいていは貧しい老人や子どもたちで,こづかい銭かせぎにナズナをつんできては道ばたて売っていたもののようです。
このナズナ売りのことは江戸時代の川柳にも見られます。川柳には庶民の日常生活がよくうたわれいて,その時代の風物を知るにはよいてがかりとなるものです。
 江戸時代の文化年間の川柳に,
   ナズナ売り六十以上十五以下
というのがあります。つまり,ナズナ売りはたいてい六十歳以上の老人か,十五歳以下の子どもだということでしょう。
 安永年間の川柳には,
   ナズナ売り大(だい)の男で見苦しい
というのもあります。つまり,大の男がナズナなどを売っていてはみっともないというわけでしょう。
   ナズナ売りこの上値(ね)切るところなし
というのもあります。これをみると,ナズナはすこぶる安いものだったことがわかります。
 ナズナは安いものと相場が決まっていたので,高いことをいって買手にしかられたこともあったようです。別の川柳に,
   ナズナ売り掛値(かけね)をいってしかられる
というのもあります。
 ところが,しかられたナズナ売りもだまってひっこんではいられず,
   このごろの雪でときばるナズナ売り
というのも出てきます。つまり,このごろは雪が降ってナズナつみも容易ではないと反論したわけでしょう。こうした情景が江戸時代の川柳に歌われているのはおもしろいことだと思います。

『牧野新日本植物図鑑』(1970年)には,ナズナ(Capsella Bursa‐pastoris Medicus)と変種のオオナズナ(Capsella Bursa‐pastoris Medicus var.pinnata Makino)の2種が載っています。
解説には「葉の裂片に耳片のあるものをナズナとし,裂片が長楕円形のものをオオナズナと区別することがある。」とあります。

オオナズナは「var.pinnata Makino」となっているので,牧野博士が名付けたもののようですが,両種を「区別することがある」というのもあやふやな表現です。

『牧野富太郎植物記』(1973年)には,両種を区別する必要はないと書いてありました。

 ナズナの葉には二通りの形があって,一つは葉の形が単に長だ円形をしているものです。このような葉のものをオオナズナとよぶこともあります。も一つは,葉が細長く,深い切れこみがあって,葉のもとのところにいちじるしい形の耳がついていて茎をだいています。これがふつうのナズナです。
 しかし,葉の形はかなりちがいますが,花も実もまったく同じなので,この二つの形は別の種類ではなく,どちらもナズナで,別に区別する必要はありません。

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