コクワガタの雄と雌。
どちらも町内の道を歩いていました。

スキャナーで読み取った画像を見ると,ユーモラスな顔をしていますね。[写真1][写真2]
まるで昆虫星人です。

コクワガタは,日本のクワガタの中ではもっとも普通な種です。
九条山でもよく見かけます。
『日本産コガネムシ上科標準図鑑』(学研教育出版・2012年)には,コクワガタの生態について,次のように書いてありました。

平野部では最も個体数の多い身近な種である。成虫は,5月下旬~10月に出現し,雑木林では,夜にクヌギやコナラ(以上,ブナ科)などの樹液に集まり,昼間は,根際の土中にひそんでいることが多い。河原や湿地周辺では,アカメヤナギやカワヤナギ(以上,ヤナギ科)などの樹液に集まり,初夏と秋は昼間にもよく活動する。山地では昼間に活動し,シラカバ,ヤエガワカンパ,ケヤマハンノキ(以上カバノキ科),ミズナラ(ブナ科),オノエヤナギ(ヤナギ科),オニグルミ(クルミ科)など多くの樹液に集まる。

「小クワガタ」の名前がついていますが,大きいものでは大あごを含めた体長は50mmを超えます。
日本産のクワガタ全体から見たら,中位の大きさです。

図鑑を見ると,日本産クワガタの中には,体の大きさが名前になっているものが4種類ありました。
大きい順にあげると,オオクワガタ,コクワガタ,チビクワガタ,マメクワガタ。
「チュウクワガタ」の名がありませんね。
コクワガタに「チュウクワガタ」の名がついていたら,少しは有難味が増していたかもしれません。

北隆館『新訂原色昆虫大図鑑Ⅱ甲虫編』(2007年)には,コクワガタについて次のように書いてありました。

体長♂, 16.5~45mm。♀, 20~28mm。黒~帯褐黒色,光沢はにぷいが,♀と小型の♂は後頭と前胸背の中央部に強い光沢がある。眼縁突起は眼の前半分を縁付け,前脛節の外歯の間に各2~4個の微歯がある。
♂ :頭盾は横長で,その前縁は広く彎入するが中央でにぶくまるく突出する。大顎は大形の♂ では中央の1内歯の外,先端近くに1小鈍歯があるが,中形の♂ では先端の鈍歯は消失し,小形の♂ では中央の内歯は基部に近づき殆んど消失する。前胸背の側縁はにぷい3彎状または2彎状で,側縁角は歯状に突出するが,後角はまるまる。上翅は細点刻を密布し列状にならない。後脛節の1外棘は小形の♂では痕跡的,大形の♂にはない。
♀ :頭盾は台形で前縁は彎入している。頭部中央の2小瘤は明瞭で間隔は眼と眼の間の約1/4。前胸背の側縁前方はゆるく曲がり,後方は斜に切られ,側縁角は角ばるか歯状にやや突出するが,後角はまるまる。上翅には小点刻を密布し,基部近くに数条の短い不明瞭な点刻列があらわれる。後脛節には1外棘がある。

・体長♂, 16.5~45mm。♀, 20~28mm。
ここに記されている「体長」は,大あごを含まない大きさです。(クワガタムシの「体長」は,図鑑によって,大あごを含めるものと含めないものがあります。)
この♂の個体は体長30mmほど。コクワガタの♂としては中くらいの大きさでしょうか。
♀の個体は体長21mm。かなり小さい方です。

・光沢はにぷいが,♀と小型の♂は後頭と前胸背の中央部に強い光沢がある。
♀の前胸背は,てかてかと磨いたような光沢がありました。

・眼縁突起は眼の前半分を縁付ける
クワガタムシの複眼には,眼縁突起と呼ばれる出っ張りが,眼を上下に分けるようにかぶさっています。
眼縁突起の出っ張り具合が,同定の重要な手がかりとなっているようです。
[写真4]を見ると,♂も♀も眼縁突起は「眼の前半分」を覆っています。

・前脛節の外歯の間に各2~4個の微歯がある
[写真8]を見ると,♂も♀も前脛節にはまばらな歯があり,拡大してみると,確かに歯と歯の間に小さな歯が並んでいます。

・♀:頭部中央の2小瘤は明瞭で間隔は眼と眼の間の約1/4
♀の頭部にこんな突起があるとは気づきませんでした。
[写真7]を見ると,明瞭な小瘤があり,間隔は「眼と眼の間の約1/4」です。

・♀:上翅には小点刻を密布し,基部近くに数条の短い不明瞭な点刻列があらわれる
[写真6]を見ると,上ばねには無数の点刻があります。
基部近くでは,点が連なって条になっています。

・♀:後脛節には1外棘がある
[写真8]を見ると,♀の後脛節に棘が一つあります。
「後脛節には1外棘がある」とは,これのことだと思うのですが。