歩道へとび出したサクラの枝先に,ミノムシがぶら下がっていました。[写真1]
紡錘形をしたミノに,短い小枝や葉っぱが張り付いています。
オオミノガのミノのようです。

幼虫を観察するためにミノを切り開いたところ,驚いたことに寄生バエの羽化殻がぞろぞろと出てきました。[写真3]
家主の幼虫は食い尽くされて,皮だけになっています。[写真5]
羽化殻は37個もありました。

いわゆるミノムシといわれるものは,ミノガ科のガの幼虫の総称です。
日本には20種以上いるといわれています。
その中で一番大きなミノを作り,昔からなじみ深いのがオオミノガです。
しかし20年ほど前にオオミノガに寄生する外来種のハエが侵入して以降,西日本各地で急激に数を減らしています。
寄生バエの最初の上陸地と思われる福岡では,1年余りでほぼ絶滅状態となったそうです。
学研教育出版『日本産蛾類標準図鑑3』(2013年)には,オオミノガの減少について次のように書いてありました。

本種は1995年に福岡県や大阪府でオオミノガヤドリバエNearsomyia rufellaによる寄生が発見され,この寄生は1~2年のうちに急速に本州四国,九州のオオミノガ分布域のほぼ全域に広がったと考えられ,各地で本種の個体数を激減させてしまった。この状態は現在も継続し,比較的寄生が弱い場所は四国高知県や関東地方北部などである。中国山東省での研究では,この地に移入されたこのヤドリバエは,オオミノガより低温に弱く,オオミノガの分布北限では寄生が低下するといわれている。関東地方北部でオオミノガが依然として観察されるのは冬季の低温の影響が考えられる。高知県で寄生が弱い原因は明らかではない。なお,このヤドリバエがチヤミノガに寄生することはきわめてまれである。

ネットを探すと,次の文書に寄生バエ拡散の状況がまとめられていました。
日本列島におけるヤドリバエの一種の寄生によるオオミノガ の絶滅危惧状況について

一時は絶滅も危惧されていましたが,最近は何とか減少に歯止めがかかりはじめているようです。
滋賀県で行われた「ミノムシ調査」結果報告(第2回調査 2011年度)(→フィールドレポーターだより)に,次のように書いてありました。

初めての「ミノムシ調査」から5年がたち、オオミノガは県内から消滅したのかどうかを調べるために2回目の調査を行いました。5年前に寄生バエの侵入が見られ、また西日本の生息状況から推測して、滋賀県でも絶滅に近いのではと想像したのですが、寄生バエのオオミノガへの寄生率は前回と同程度で、オオミノガは絶滅を免れていました。しかし、5年前にはオオミノガヤドリバエが確認されていない湖北からも発見され、寄生バエの分布が滋賀県全体に拡大していることが判明しました。
 一方、北関東以北においては、まだまだオオミノガは見られるようです。これは、オオミノガヤドリバエの原産地が中国南西部の暖かい地域であることによります。また、高知県内ではオオミノガヤドリバエに寄生する8 種類の寄生バチが確認されているそうです。今回の調査では確認されていませんが、滋賀県からも寄生バエに寄生する寄生バチが発見されるかもしれません。自然界では長い時間をかけて食う食われるの関係が出来上がり、片方だけが増え続けることはありません。

現在の京都の状況がどうなっているのか,ネットで色々と探したのですが,分かりませんでした。
少なくとも,京都府レッドデータブックには危機状況のランク指定はされていません。
翌日,あらためて周りの木を見て回ったところ,ミノムシは一つも見つけることができませんでした。
これから少し気をつけてミノムシを探したいと思います。