• ショカツサイの花

ショカツサイの花。ハナダイコン,オオアラセイトウ,ムラサキハナナなど多くの名があります。私が持っている昭和45年版の牧野新日本植物図鑑には,いずれの名前も載っていません。 外来植物だからでしょうか。
牧野富太郎はオオアラセイトウと名づけたそうです。しかし,現在オオアラセイトウの名はあまり一般的ではないようですね。私としては,数ある名前のうちではショカツサイ(諸葛菜)が気に入っています。「諸葛菜」は本種の中国名で,諸葛孔明が出陣した先々で食用にするために種をまいて育てたことに由来するそうです。
しかし吉川英治の『三国志』では,諸葛孔明が育てたのは蕪ということになっています。兵糧とするには本種より蕪の方が説得力があります。諸葛菜と諸葛孔明の故事は本当なのでしょうか。そもそも中国では本当に本種を諸葛菜というのでしょうか。
中国語でGoogle検索してみました。中国版ウィキペディアに,諸葛菜として本種の写真が載っていました。十字花科諸葛菜属となっています。二月藍の別名も載っています。確かに中国では本種を諸葛菜と呼ぶようです。
中国版ウィキペディアには名前の由来については載っていなかったので,他のページをあたってみると,それらしき事を書いたページがありました。中国語は分からないのですが,文面を眺めているとそれとなく意味がわかるような気がします。
『太平廣記 蔓 菁
諸葛所止,令兵士獨?蔓菁者,取其才出甲可生啖,一也;葉舒可煮食,二也;久居則隨以滋長,三也;棄不令惜,四也;回則易尋而采之。五也。冬有根可?食,六也。比諸蔬屬,其利不亦博哉?劉禹錫曰:“信矣。”三蜀之人也,今呼蔓菁為諸葛菜。江陵亦然。(出《嘉話?》)
  諸葛亮命令兵士在駐地專?蔓菁的原因,取它剛長出來的嫩甲可以生吃,這是其一;葉子長大之后,可以煮著吃,這是其二;如果在此久住,它就繼續生長,這是其三;?掉也不讓人感到可惜,這是其四;回來的時候容易找到,繼續食用,這是其五;冬天可以食用它的根,這是其六。与其它蔬類相比,它的好處不也是很多的??劉禹錫?:“的?是這樣。”三蜀的人現在叫蔓菁是“諸葛菜”。江陵也是這樣。 』
「三蜀的人現在叫蔓菁是“諸葛菜”」は,「三蜀的人」は現在「蔓菁」を「諸葛菜」と呼んでいるという意味でしょうか。蔓菁はカブのことなので,諸葛孔明の故事による諸葛菜はカブということになります。
他のカブを紹介したページに『蕪菁  別名: 青蘿卜、青蘿蔔、蔓菁、諸葛菜、大頭芥、大頭菜。』 とあるので,中国では今でも諸葛菜はカブの別名としてあります。ということは中国では現在,諸葛菜といえば本種のショカツサイとカブの両方をさすようです。
また日本では本種を食用としていませんが,中国では『是北京地區早春常見的野生花卉。嫩莖葉亦可作野菜食用。』とあり,食用として栽培されているようです。よく分かりませんが,同じアブラナ科なので諸葛菜の名がいつの間にか混用されるようになった,と私は勝手に解釈しました。