ミョウガの葉にクロセセリの幼虫がいました。[写真1]
クロセセリの幼虫は,ミョウガなどショウガ科の植物の葉を糸で綴り合せて巣をつくります。[写真5]
閉じてある葉を開くと,急いで糸を吐き出し,葉を綴りあわせます。
頭を左右に大きく振るたびに,細い1本の糸がしだいに太くなり,徐々に葉同士が引き寄せられてくっついてきます。[写真2][写真3][写真4]
一昨年,昨年と幼虫を採取して,羽化までの飼育を試みているのですが,幼虫が越冬できずに死んでしまいます。
年3回ほど発生するそうなので,もっと早い時期に幼虫を採取したいと思うのですが,昨年も今年も今の時期まで発生しませんでした。
(5~6年前には夏に幼虫を見たことがあります。お盆前に草取りをしているとき,ミョウガの葉にくるまっている幼虫がいました。その時は何の幼虫か気にしなかったのですが,今考えるとクロセセリだったと思います。)
学習研究社「日本産幼虫図鑑」(2005年)には,クロセセリの幼虫について次のように書いてありました。
『特徴:体色は白緑色で透明感があり,オスでは背面に精巣が透視できる。巣は1枚の葉全体を縦に筒状に閉じたもので,葉柄に噛み傷をつけるために下垂している。老熟幼虫はそれまでの巣を出て,食草の葉裏やほかの植物の葉裏に簡単な巣を作るか,造巣しないで蛹化する。蛹は半透明の淡緑色。卵は葉表ときに葉裏に1個ずつ産卵され,プリン形で底の縁がつば状に突出している。弱い縦条があり,次種に比べて高さが高く,半球形に近い。
食物:ショウガ科ハナミョウガ,アオノクマタケラン,ゲットウ,タマタケラン,シュクシャ,ミョウガ,ショウガなど。
分布:九州,南西諸島には古くから分布。近年本州(近畿地方まで)と四国(愛媛県まで)に侵入し,北上中。』
「分布」のところに書いてあるように,元々は南方系のチョウで,近年北へ分布をひろげているようです。
クロセセリの分布域拡大に関して,学習研究社「日本産蝶類標準図鑑」(2006年)には次のように書いてありました。
『本種は分布の東北進が目立つチョウである。本州で最初に見つかったのは下関市内で1978年のことであるが1999年には山口県のほぼ全市町村に発生が確認された。1991年島根県に侵入し,現在は六日市町まで生息。広島県には1997年に侵入し,呉市まで生息している。四国では2000年に初記録,おそらく2000年以前に上陸したと思われ,現在は愛媛県大洲市,八幡浜市,三瓶町,宇和町,松山市,丹原町などに生息している。九州からの分散と思われるが,中国地方から分散した可能性もある。それから飛び離れて,1986年京都府亀岡市で採取され,現在までに大阪府高槻市,京都府八木町,京都市,滋賀県大津市で記録されているが,自然分布とは考えにくく,人為的な移入と思われる。』
分布図をみると確かに,中国地方から遠く離れた京都,大阪に飛び地的に分布しているのは不自然な感じがします。
しかし1,2頭放したくらいでは定着するはずもありません。
「人為的な移入」とは何なのでしょうか。