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ムラサキケマンの種子

2008年5月27日
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ムラサキケマンの種子。[写真1]

ムラサキケマンの種子にも,スミレの種子と同じようにエライオソームが付いています。(黒い種子についている白い部分)
エライオソームとはアリを誘引する物質を含む付属体のことで,甘い餌でアリに種子散布してもらおうという植物の生き残り戦略のひとつです。

エライオソームについて,中西弘樹著「種子(たね)はひろがる」(1994年)には次のように書いてありました。

スミレやキケマンのようにエライオソームとよばれるアリを誘引する物質を含んだ付属体がついた種子をつくる植物がある。このような種子が落下するとアリがすぐに見つけ,それを巣に運ぶ。運ばれた種子は巣の中でエライオソームの部分だけが食べられ,その後は,アリの種類によって異なるが巣の中のごみ捨て場に捨てられたり,巣の外に土といっしょにほうり出されたりする。いずれにしても種子は発芽能力を失うことなく,植物にとっては種子が運ばれることになる。アリの方でも栄養に富んだエライオソームを獲得できるので,双方が利益を得ることになり,アリとアリ散布植物はいわば相利共生の関係にあるといえる。これが真のアリ散布myrmecochoryであり,この方法で種子が散布される植物はアリ散布植物myrmecochoreとよばれ,広く分布している。

ここで「これが真のアリ散布であり」としているのは,アリによる散布にはエライオソームによるものの他に,収穫アリによる散布や甘い果肉をもつ種子がアリによって運ばれるケースがあるためです。

ムラサキケマンの種子散布は,純粋なアリ散布ではなく自動散布をあわせておこなう二重散布型です。
前著には,ムラサキケマンのアリ散布について次のように書いてありました。

ケシ科のキケマン属もアリ散布植物であることが知られているが,私はこの属の散布の適応と捕食者に対する防御の面からその形態と生態について調べたことがある。その結果,はっきり二重散布(アリ散布+自動散布)型,栄養繁殖+アリ散布型,純粋アリ散布型の3グループに分けられることがわかった。
 二重散布型はムラサキケマン1種で,多くのスミレ属植物で見られるように自動散布された後に,アリによって散布される。自動散布は種子を広くばらまくことによって種子捕食者を避ける効果があると考えられる。この型のエライオソームは小さく,種子は平滑で,種子が飛散するのに適している。種子生産量はふつうで,托葉(たくよう)は最も大きく,小果梗(しょうかこう)は長い。托葉が大きく,小果梗が長いことは捕食者に対する防御に効果的であると考えられる。

自動散布とは,外からの作用を受けて散布する受動散布に対するもので,果実が熟すると裂開して種子を飛ばす散布のしかたです。機械的散布ともいわれます。

ムラサキケマンの果実は熟するとはじけて,果実の壁が内側に巻き込まれます。[写真3]
この仕組みはツリフネソウの実がはじける仕組みと同じです。
前著ではツリフネソウ属の果実がはじける仕組みについて,次のように書いてありました。

ツリフネソウ属の果実の壁は2~3層からなり,内側は小さい厚壁(こうへき)細胞が並んでいるが,外側は細胞壁が薄く,大型の細胞からなる。果実の壁は膨圧(ぼうあつ)によって突然内側に巻き込み5つの心皮に分かれ,その時の力で種子が飛んでいく。

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