• ハスの花
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南禅寺のハスが満開です。

ハスの花というのは,多くの花の中で別格の趣があります。
極楽の池に咲き乱れているイメージであったり,仏様が蓮華座に座っているイメージであったりして,犯しがたい高貴な花の印象があります。
花をこっそりと切り取って,部屋に飾るといったことは,できそうにありません。

ハスの花について,「朝日百科 植物の世界」(1997年)には次のように書いてありました。

 インドの最高神のひとりであるヴィシュヌは,原初の水の中で,大蛇を寝台として眠っていた。四千ユガ(宇宙世紀)の眠りの後,彼は創造の志を起こした。その意欲はハスの形(世界蓮・ローカ・パドマ)をとって彼の臍から成長し,そのハスが花開くとそこにブラフマー(梵天)が生じ,花の台(うてな)に座して天地万物を造化した。
 この壮大な世界蓮の神話において,ハスは生命発生いや世界創成の神秘的ポテンシャルをもつ原初の植物である。仏教芸術で仏が蓮華座に座し,また日本の信心深い仏教徒が死後は浄土におもむいて「蓮の台に生まれる」ことを切に願った背景には,こうした古いインド神話があることを忘れてはならない。

 ところで,なぜ,蓮華なのか。
 原初の世界蓮にせよ,母胎としての蓮華にせよ,三千大千世界である蓮華にせよ,また心臓としての蓮華にせよ,花あまたあるなかで,なぜハスがこれほどまでに奥行きの深い,力強い象徴となり得たのだろうか。
 泥土の中から,汚れなく美しい花を咲かせるから,とはよくいわれる。だから肉に対する魂,現世に対する永遠の象徴となり得るのだ,と。それもあろう。しかしそれだけではない。ハスの花弁が著しく数多く,しかもそれが整然と並び重なって,ある確かな秩序,美しいひとつの総体,要するにひとつの「宇宙」の印象を与えるからである。しかもこの完壁に美しい秩序は,それ自体ひとつの生きものであって,硬い蕾の状態から,徐々に幾葉もの花弁を広げて開花する。収縮した心臓が膨張するように,宇宙がいくつもの劫(カルパ・非常に長い時間)を経て収縮から膨張へ向かうとされるように,未敷蓮華は人類の若かりし日の神話と宗教の形而上学のすべてのみずみずしい朝露を含んで開敷する。その花芯は大字宙の中心であり,宇宙発生の母胎であり,森羅万象を流出せしめるエマナティオ(根源的流出)の源にほかならないのである。

う~ん,何かハスってすごいな,という気がしませんか。

またその高貴な花の根が,庶民的なレンコンだというところに大きな落差を感じると同時に,ただの根っこでないところに,また偉大さを感じてしまいます。