塀にアケビコノハが止まっていました。[写真1][写真2]
アケビコノハは木の葉に擬態していることで有名な,ヤガ科に属する大形のガです。
木の葉への擬態は木立のなかでこそ本領を発揮するのでしょうが,塀に止まっていても,木の葉がくっついているようにしか見えず,十分に役割を果たしています。
北隆館『日本昆虫図鑑』(1956年)には,アケビコノハについて次のように書いてありました。(原文は旧漢字)
体長35-39mm,開帳98-108mm,下唇鬚は著しく突出し,第3節先端の背面の鱗毛は盛り上がる。前翅の後縁は刳られる。体は灰褐色。前胸脚及び中胸脚脛節の基部には各々1個の銀紋が存在し,肩板の側部には暗緑色紋がある。腹部及び後翅は黄橙色。前翅は光沢ある暗緑色,翅脈に沿って微小な黒点をならべる。内横線及び外横線は暗褐色で,後者は翅頂から発して斜に後縁の中央に至り,その外側に沿って少し緑色を呈する。中室の中央には微小な暗緑紋があり,中室末端にはやや大きな緑紋がある。後翅は渦状を呈する太い黒帯を有する。裏面は黄色で,2個の太い黒帯を有し,前翅の外縁部暗灰色を呈する。成虫は8,9月に出現し,北海道・本州・四国・九州・台湾・中国・印度に分布する。幼虫はムベ・アケビの葉を食う。この成虫が静止しているときは全くムベの葉に似ている。
「下唇鬚は著しく突出」とあります。
下唇鬚(かしんひげ)とは,口器の一部で,頭部下面から対になって前方に突き出しているものです。[写真5]
アケビコノハの下唇鬚は特別に大きく突き出し,角のように見えます。[写真3]
[写真4]は真上から見たところ。
ぴたりと翅を合わせ,一枚の葉に見せようとしています。
アケビコノハは幼虫も不思議な形をしています。[写真6]
食草の蔓の上でいつも独特のポーズをとっているのです。
[写真6]の右側,頭のように持ち上げられている方がお尻で,左側が頭です。