自宅近くの斜面に,ホコリタケが一つだけポツンと出ていました。[写真1]~[写真3]
かなりの老菌です。
胞子を出しつくした後の孔が,大きく口を開けています。
成熟したホコリタケは,指で押したり靴で踏むと,煙のように胞子を吹き出します。
このことがホコリタケの名前の由来となっています。
自然の状態でも,動物や風などの物理的な刺激を受けないと胞子を放出することができないそうです。
[写真2]を見ると,外皮の表面は変化にとんだおもしろいマチエールをしていますね。
あばた状に幾何学模様が連続し(フラクタル?),下にゆくにつれ棘状の突起に変化しています。
この意匠のまま,陶器か鋳物にできれば立派な芸術作品です。
別名キツネノチャブクロ。
チャブクロは「茶袋」で,茶を煎じる時に茶葉をいれる袋のことです。
丸い形と,最初は白くて,すぐに茶色に変色することにかけているのでしょうか。
すぐに色が変わるたとえに茶袋を使うのは定番らしく,「小娘と茶袋」という言葉もあります。
どちらもあっという間に色気づくという意味だとか。
[写真4]~[写真6]は,2004年4月に写したホコリタケの若い菌です。
[写真6]のように,中身が白い幼菌は食べることができます。
軽くゆでてから皮をむき,お吸い物にいれました。
味は淡白で,生麩のような上品な食感。
特別においしいというものではありませんが,意外性のある食材としてはおもしろいと思います。
高級料亭でだせば,高級食材に化けそうです。
『原色日本新菌類図鑑(Ⅱ)』(保育社。1989年)には,ホコリタケについて次のように書いてありました。
子実体は洋ごま形で径2~6cm,高さ3~6cm。頭部は球形~類球形で,項部は中丘となり,下部には縦じわがあって発達する無性基部がつく。幼菌時は白色で,しだいに黄~黄褐色となり,外皮頂部は長短ある円錐状の刺に密におおわれ,側面や下部では粒状~疣状物におおわれる。また,柄部は疣状~粉状物が付着する。刺はしだいに赤褐色~暗褐色となり剥落して,内皮に明瞭な網目~あばた模様を残す。内皮の頂部に孔口が開く。基本体は最初白色であるが,しだいにオリーブ褐色となって臭気の強い液汁を出し,ついには暗褐色の粉状胞子塊となる。
梅雨から秋に,林地や草地に群生する