動物園の西,疎水にかかる橋の上に,カモが横たわっていました。
死んでいると思って写真を撮っていると,頭を持ち上げたのでびっくりしました。
でもすぐにまた路面に頭をつけ,動きません。
チョウなどの虫だと気温が上がってくるにつれ元気になる場合もあるのですが,このカモはこの後も元気を回復しそうにありません。
渡りに力を使い果たしたのか,それともひょっとして鳥インフルエンザか。
持って帰ろうかなと思ったのですが,むやみに触らない方がいいかなと,思いとどまりました。
頭が茶褐色なのでヒドリガモだと思っていましたが,図鑑を見かえしていると,頭上が黄白色になっていない,くちばしの根元が黒いなどヒドリガモとは異なります。
どうやらこれはホシハジロのようです。
『山渓名鑑 日本の野鳥』(1996年)には,ホシハジロについて次のように書いてありました。
茶色い頭と黒い胸をした中形の海ガモ類。ユーラシア人陸のバイカル湖以西の亜寒帯で広く繁殖し,日本には主に冬鳥として数多く渡来する。1975年に北海道釧路の春採湖て初めて繁殖か記録され,その後も同地で記録がある。狩猟鳥。
生活 越冬地では湖沼,広い川.池なとで生活し,海に出ることは少ない。数羽から数十羽の群れて見られることが多い。ハジロガモ属,ホオジロガモ属などのカモを海ガモ類と呼ぶが.淡水ガモ類と比べると.水面に浮く時に尾を水面につけていること,採餌の時に全身で潜ること,飛びたつ時に水面を助走することなどが異なっている。ホシハジロは,潜水して水中で餌をとるが,他の海ガモ類よりは植物質のものをとることが多く,水草の葉や茎をよく食べる。キンクロハジロとともに, 市街地の公園で給餌される餌に集まる海ガモ類である。
市街地でもよく見かけるカモのようなので,今までヒドリガモだと思っていたものの中に,ホシハジロも混じっていたのかもしれません。
ホシハジロの「ハジロ」は,キンクロハジロの「ハジロ」と同じで,羽に白い模様があることからきているのでしょうが,「ホシ」はどういう意味なのでしょうか。
『図説 鳥名の由来辞典』(2005年)には,次のように書いてありました。
江戸時代中期から“ぼっちはじろ”“あかがしら”“たひがしら”(上方)の名で知られ,後期から“ほしはじろ”とも呼ばれるようになり,“かきはじろ”“くろほじろ”の異名がある。“ぼっちはじろ”“ほしはじろ”は背の細かい黒い横斑をいい,“かきはじろ”“あかがしら”“たひがしら”は頭の柿色を,“くろほじろ”は胸が黒いことから名づけたのであろう。
『山渓名前図鑑 野鳥の名前』には,別の説が載っていました。
「星」とは何か。菅原浩・柿沢亮三編著『鳥名の由来辞典』によると,江戸時代には「かきはじろ」(頭部が柿色であることから), 「くろはじろ」(胸が黒いことから)の別称があり,後期に「ほしはじろ」と呼ばれるようになった。そして「ほし」は,背中の細かい横斑から名づけられたという。つまりホシガラスの「星」と同じとする説である。
しかし,背中の細かい斑ではなくて,虹彩が赤い雄の眼を「赤いひとつ星」と見た名前だろう,と私は思う。
頭部のアップを見ても,目に膜がかかっていて,虹彩が赤いかどうかはっきりしません。[写真4]
この膜は瞬膜とよばれるもので,角膜とまぶたの間にあり,潜水時などに角膜を保護するためのものです。
しかし不思議です。
今回で,この場所には5羽の鳥が死んでいたことになります。
・2010年12月23日 ホシハジロ
・2010年2月5日 キンクロハジロ
・2009年4月16日 雛
・2007年1月8日 キンクロハジロ
・2006年6月5日 雛
みんな外傷もなく,引き寄せられるようにここへやって来て,息を引き取っています。
特に雛などは,周りに巣もないのに,どこからやってきたのか不思議です。