ネムノキの周りを数頭のキチョウがゆらゆらと飛び回っていました。
どういう訳か,どのチョウも枝に付いている1個の蛹をねらっているようです。
1頭が蛹にとまって,自分のものだとばかりに,抱きつきました。[写真1]
他のチョウは,羨ましいげにまわりを飛び回っています。
(といっても,攻撃的でなくて,のんびりとしたものです。)
以前に,羽化したばかりの雌と交尾している雄がいました。[写真6]
→2005年9月21日
このキチョウも雄で,雌が羽化するのを,待ち構えているのかもしれません。
この蛹が雌だとしたら,外見からは雌かどうかはわからないので,フェロモンか何かを放出しているのに違いありません。
羽化したばかりの雌に交尾している雄を見たときには,気の早い雄だと思ったのですが,蛹の段階で雌が誘引物質を出しているとしたら,羽化したらすぐに交尾する習性のようです。
この蛹が雌かどうか,持ち帰って羽化を待つことにしました。
しかし,寄生されていたらしく,しらない間にペシャンコになっていました。
翌日に付近で採取した,いかにも羽化直前といった蛹[写真5]も,カメラをセットして長時間待っていたものの,結局羽化しませんでした。
終齢と思われる幼虫[写真4]も,飼育を開始して2日後に死亡。
成虫も捕えて翌日に死亡[写真2]。
他のチョウでは,こんなに死ぬことはないので,キチョウはよほど弱いのかと,ネットで調べてみると,キチョウが特に飼育困難というわけではないようです。
保育社『原色日本蝶類図鑑』(1976年)には,キチョウについて次のように書いてありました。
〈生態〉多化性。発生回数について確実な観察記録はないが,年5~6回の発生と推定される。成虫越冬。通常第1化は5月中旬,寒冷地では6月にはいって姿をみせる。飛び方はゆるやかで,好んで低山地の草原,渓流ぞいの草地,路ぱたに棲息し,多くの花で吸蜜する。湿地や汚物に群れをなして集まる。
〈食草〉マメ科のネムノキをもっとも好む傾向があるが,地域によってはハギ類を好むこともある。そのほか,ハリエンジュ・エビスグサ・ナンパンサイカチ・ハマセンナなど。クロウメモドキ科のクロウメモドキ・ヒメクマヤナギでも卵や幼虫が採集されている。
〈雌雄の区別〉各季節の型を通じて,それぞれ♂の地色は黄色,♀は淡黄色。♂には前翅裏面下縁近くに性標がある。翅表外縁に黒帯のある型の場合は♀の黒帯が♂よりも発達する。