動物園の塀際にセンダンの実が落ちていました。[写真1]

7年前にも,この場所にたくさんのセンダンの実が落ちていました。(→2005年1月14日
その時は周りを見回しても,それらしき木がなくて,どうしてセンダンの実がかたまって落ちているのか不思議でした。

今回,頭上を見上げると,張り出した枝にセンダンの実がついています。[写真2]
前回は実がすべて落ちしまっていて,わからなかっただけだったのですね。
センダンの名は「千団子」からきたという説があるように,大きく張り出した枝に黄色い実がたくさんついているのが特徴です。
しかしこの木はどういうわけか実つきがよくなくて,若干貧相な枝ぶりです。

多田多恵子著『身近な草木の実とタネハンドブック』(2010年)には,センダンの実について次のように書いてありました。

西日本の暖地に多い木で,ことわざの栴檀(せんだん)とは別物。冬枯れの梢に黄白色の実が目立つ。鳥が食べる実には人気順位があるが,これは不人気の部類で,年が明けて実も乾きかけた頃にやっとヒヨドリやムクドリが飛来する。白くべとつく果肉はかすかに甘いと同時に苦くてえぐく,有毒成分を含む。中には6稜のあるごつい核が1個あり,種子を6つ含む。初夏の花は美しい。

果肉は「かすかに甘いと同時に苦くてえぐ」いと書いてあります。
実際に舐めてみる気になりませんが,センダンの果実を苦楝子(くれんし)ともいうので,実際に苦いのだと思います。
「有毒成分」は薬にもなります。
平凡社『世界大百科事典』(2006年)には,次のように書いてありました。

生薬ではセンダンの果実を苦楝子(くれんし),樹皮を苦楝皮と呼ぶ。いずれもトリテルペノイドを含む。果実はほかの生薬を配合して,消化器疾患,肝炎,胆嚢炎などに鎮痛薬として,またカイチュウ駆除薬とする。樹皮は単独であるいは他の生薬と配合して,カイチュウ駆除に,またがんこな皮膚湿疹や疥癬(かいせん)などに外用する。

東京化学同人『化学辞典』(1994年)には,トリテルペン(トリペノイド)の解説の中に次のようにありました。

よく知られた化合物としては,ステロイドホルモン,ビタミンD,胆汁酸,コレステロール,昆虫脱皮ホルモンであるエクジソンなどのステロイド,種々のサポニン,アンブレイン,抗生物質フシジン酸,植物の苦味成分であるクワシノイドやリモノイド(limonoid),五環性トリテルペンであるオレアノール酸,フリーデリン,ルペオール,ホパン,タラキサステロールなどがある。

ステロイドは皮膚病の治療薬として,よく用いられていますよね。
センダンの実が,昔からひび,あかぎれ,しもやけの民間治療薬として用いられていたことと関わりがあるのでしょうか。

センダンの実については1年前にも取り上げています。(→2011年1月18日