道にオニヤンマが死んでいました。
さすが日本最大のトンボだけあって,大きいですね。
のせた手のひらから,はみ出しています。[写真1]
頭から腹の先端まで11cmほどあります。

でも,眼が何だか変です。
左右の複眼の色が違います。[写真2]
左側が赤褐色,右側が灰色をしています。
色だけでなくて,左側の複眼の奥には泡のような模様が透けて見えていて,何か先天的な異常があったようです。
右側の複眼も白濁したような色をしています。
通常の成熟したオニヤンマの眼は深緑色です。[写真7](→2009年9月11日)

『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑』(1999年)には,オニヤンマの「成虫形態」について次のように書いてありました。

腹長♂59~76mm,♀75~86mm(産卵器官の先端まで)。後翅長♂48~58mm, ♀54~66mm。
 日本産不均翅亜目中最大の種で,♀は特に大きい。みるからにがっしりしたすこぶる大型のヤンマ。一見ミナミヤンマ属に似るが,体形がひとまわり大きく太身なことと,黄色斑が大きくあざやかなこと,翅に特異な斑紋がないことで識別できる。
 体色は黒色の地に黄色い条斑がある。 ♂♀でほとんど差がなく,成熟してもあまりかわらない。頭部は顔面が黒く,前額頂と後額片に黄色条がある。上唇に2個の大きな黄色斑があって,大顎の基部前面が黄色。複眼は未熟なうちは灰褐色をしているが,成熟すると光沢の強い深緑色となる。胸部は翅胸前面が黒く1対の太い八の字形条がある。前肩条および襟条はない。胸側は中胸後側板と後胸後側板に2本の太い黄色条がって,ちょうどミナミヤンマ属の斑紋をひとまわり前へずらした位置が黄色い。翅はほぼ無色透明。しばしば翅端にごくわずか褐色斑が発現する。♀はごく薄く黄色みをおびることが多く,特に未熟個体では基部が淡い橙黄色で,前縁ぞいが淡橙褐色にけぶる傾向がある。翅脈・縁紋とも黒い。肢は黒い。腹部は黒く,第2~8節のやや前寄りにそれぞれ太い黄色環状斑があるが,第2節のもの以外は背面中央でわずかに切れている。♂の尾部上付属器は黒くてやや上反りした棒状で,基部近くの下面に2個の棘がある。♀では第9 ・10節が小さくて表面があまりキチン化せず柔らかい。産卵弁は太い針状で長く後方にのび,その先端が数mmほど腹端をこす。

まず,この個体には産卵弁があるので雌です。[写真5]
「♀では第9 ・10節が小さくて表面があまりキチン化せず柔らかい。産卵弁は太い針状で長く後方にのび,その先端が数mmほど腹端をこす。」
雄には[写真7]のように,腹端に付属器といわれる,交尾時に雌を捕まえる器官がついています。

雌の翅は,「ごく薄く黄色みをおびることが多く,特に未熟個体では基部が淡い橙黄色で,前縁ぞいが淡橙褐色にけぶる傾向がある」。
[写真6]を見ると,翅の付け根が色づいています。
複眼も「未熟なうちは灰褐色をしている」ので,案外この個体は生まれたばかりの未熟な個体だったのかもしれません。
[写真8]は,羽化直後のオニヤンマ。(→2006年6月28日
複眼は,この個体と同じ色をしています。