動物園の塀にキイロゲンセイがいました。[写真1]
カミキリムシに似ていますがツチハンミョウ科で,カミキリムシとは系統的に異なる種類です。
他のツチハンミョウのなかまと同じように,体液に有毒なカンタリジンを含みます。
皮膚につくと,水泡性皮膚炎をおこします。

[写真3][写真4]は,上面と下面をスキャンした画像です。
肢の形などもっときれいに整えたかったのですが,体液が付くのが心配であまり触ることができず,少々だらしない格好になってしまいました。

「キイロゲンセイ」の「キイロ」は「黄色」だとわかるものの,「ゲンセイ」は聞きなれない名前です。
「ゲンセイ」は「芫青」の音読みで,<芫花(フジモドキ)を食べる青い虫>の意だとか。
本来はミドリゲンセイを指すそうです。
小学館『日本大百科全書』(1994年)には,「ゲンセイ」について,次のように書いてありました。

本来は甲虫目ツチハンミョウ科に属する昆虫のミドリゲンセイ(一名アオハンミョウ)Lytta vesicatoria をさす。ヨーロッバ産で,体調15~30ミリ。体は長く背面は金緑色。体内にカンタリジンを含み,乾燥して薬用(皮膚刺激剤,発泡剤)にする。ゲンセイはツチハンミョウ科の甲虫のうち,ツチハンミョウ属Meloe ,マメハンミョウ属Epicauta の類を除くものの総称で,科の別名ともいえる。

キイロゲンセイについては,北隆館『原色昆虫大圖鑑 甲虫編』(2007年)に次のように書いてありました。

体長9~20mm。黄色,生時はクリーム色を帯びるが死後黄褐色に変化することが多い。複眼,第1節を除く触角の全節,脛節と付節などは黒褐色。触角第3節は第2節より僅かに長く,第4節は第2節の約2倍。前胸背は微細な点刻を散布し,中央部又は後縁部で最広。体は全体に黄色の短毛を密生する。雌雄の相異は明瞭ではないが,腹部末節端の刳れは♂の方が強い。幼虫はオオハキリパチの巣に寄生し,成虫は7~8月に出現。野外ではイヌザンショウの花に好んで集まり,灯火にもよく飛来する。

・体長9~20mm
この個体の体長は20mm。[写真3][写真4]

・複眼,第1節を除く触角の全節,脛節と付節などは黒褐色
黄色ずくめのなかに,黒い複眼が目立ちます。[写真2]
細長い顔に黒いサングラスをかけているようで,どう見ても悪役顔です。
毒を持ってるという先入観がそう思わせるのでしょうか。

・触角第3節は第2節より僅かに長く,第4節は第2節の約2倍
[写真5]

・前胸背は微細な点刻を散布し,中央部又は後縁部で最広
[写真5]

・幼虫はオオハキリパチの巣に寄生
ツチハンミョウのなかまは,ハナバチ類の巣に寄生する習性があります。
幼虫がどうやって特定のハナバチ類の巣にたどり着くのか不思議ですね。

跗節の数を数えてみると,前・中脚が5節,後脚が4節で,カミキリモドキと同じ数でした。[写真6]
(→アオカミキリモドキ