道にタマムシがとまっていました。[写真1]
逃げるかなと思いながら,ゆっくりと手を伸ばしさっと抑え込むと,意外なほどあっさりと捕まえることができました。

しかし,手の中であばれるタマムシを見て,ぎょっとしました。
胴体がないのです。
捕まえるときにちぎれてしまったのかと,あわてて道の上を捜しましたが,見当たりません(見つけても,どうしようもないのですが)。
どうやら飛んでいる最中に,胴体部分を鳥に食いちぎられたようです。

タマムシ本人は胴体がなくなっていることに気づいていない風で,いたって元気です。
手のひらに乗せると,飛び立とうと翅を力強く振るわせます。
さすがにバランスがとれなくて,地上に落ちてしまいますが。
しかしバランスさえとれれば,胴体がなくても飛んでゆきそうな勢いです。

カブトムシなども,ばらばらになって道に落ちていても,頭部につながっている前胸の足だけが動いていたりします。
頭を噛みきられたカマキリが飛んで逃げたという話もあり,虫の神経系は動物とは違っているようです。

無脊椎動物脳プラットフォーム』というサイトに,昆虫の神経系についての解説が載っていました。

 昆虫のからだは頭部,胸部,腹部の3つに分かれる.頭部,胸部,腹部はそれぞれ頭部神経節と食道下神経節,胸部神経節,腹部神経節に支配される分散構造をとる.頭部神経節は特に脳といわれる.このような分散的な神経節構造は昆虫の神経系の大きな特徴である.

脳以外の神経節は,体性感覚の処理に加え,胸部神経節では飛翔,歩行などの基本的な運動パターンをつくる.したがって,頭部と腹部を切り離し,胸部だけの状態でも,羽ばたきや歩行を起こすことができる.ただし,直進の歩行や飛行のパターンに限られる.歩行や飛行の開始,終了,方向転換などの行動指令は脳から胸部神経節に伝達される.

これによると,昆虫は頭や腹がなくても,胸の部分さえあれば,飛んだり歩いたりすることができるようです。
胴体のないタマムシも,バランスさえとれれば飛ぶことはできたのですね。

朝7時ごろに捕まえて,昼過ぎになってもまだ元気でした。
夕方になるとさすがに動きが少なくなり,夜9時ごろにはほとんど動かなくなりました。
このタマムシは自分の胴体がなくなっていることに,いつ気づいたでしょうか。