道脇の竹柵に,アオマダラタマムシがとまっていました。[写真6]
緑色の金属色をした,タマムシのなかまです。
緑色をした虫を「青」と呼ぶのは,野菜を青物と呼称することと同じく,日本人古来の感性のようです。

北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 甲虫篇』(2007年)には,アオマダラタマムシについて次のように書いてありました。

体長17~29mm。上翅に4個の陥凹紋があり,縦隆条は高く明瞭。色彩変化は少ないが稀に橙色または銅紫色を帯びるものがある。腹端は♀では円く, ♂では三角形に刳られる。幼虫はサクラ・ツゲなどの材を食べ,成虫は6~7月に出現する。

・体長17~29mm
この個体は体長20mでした。
[写真4]は,ヤマトタマムシと大きさを比較したもの。
(左側:アオマダラタマムシ 右側:ヤマトタマムシ)
並べるとヤマトタマムシがとても巨大に見えます。

・上翅に4個の陥凹紋
上翅にある紋は,その部分だけ釉薬がかかっていなかったかのように,凹んで生地の黄色い部分が露出しています。

・縦隆条は高く明瞭
上翅には,縦の筋が何本も盛り上がっています。
ウバタマムシの模様に似ています。(→ウバタマムシ

・腹端は♀では円く, ♂では三角形に刳られる
[写真5]は,この個体の腹端。三角形にえぐられているので,♂です。
腹板が金属色に輝いているこの写真を見ると,まるで金属板を打ち出して作られているみたいですね。

・成虫は6~7月に出現する
この個体を採取したのは,8月5日でした。
朝捕まえて,夜には動かなくなっていたので,寿命間近だったようです。
肢も一部なくなっています。

平凡社『日本動物大百科 第10巻 昆虫Ⅲ』(1998年)には,アオマダラタマムシについて次のように書いてありました。

アオマダラタマムシは,シーボルトがオランダに持ち帰った1個体のメスによって1864年に記載された美麗種である。福島県以南の本州,九州,対馬に分布するが,ふつう目にする機会は少ない。

あまり見かけない種類のように書いてありますが,京都府のレッドデータブックにはアオマダラタマムシについて特に記載はなく,希少種というわけではないようです。