窓の隅っこに,赤トンボがじっとしていました。
閉め切られた窓で行きどまって,外に出れなくなったようです。
同時に,別の窓からも,カサカサという音が。
もう1頭いました。
オスとメスです。[写真1]~[写真4]
交尾中に迷い込んだのでしょうか。

鼻の穴のように見える,特徴的な眉斑は,マユタテアカネです。[写真6]
9月になってから,家の周りでも,赤く色づいたマユタテアカネをよく見るようになりました。
[写真5][写真6]は,9月4日に写したオスです。
[写真7][写真8]は,9月9日に写したメスです。

マユタテアカネのオスは,成熟すると腹部があざやかな赤色になります。[写真1][写真5]
メスは成熟しても赤色になるものとならないものがいます。
[写真2]の個体は腹部の背側が赤く色づいていますが,[写真7]の個体は赤くなっていません。

また[写真2][写真7]のメス個体は,翅端が褐色になっていますが,個体によっては褐色帯が現れないものもいます。
『原色日本トンボ幼虫・成虫大図鑑』(1999年)には,次のように書いてありました。

未熟なうちは♂♀であまり差がないが,成熟すると♂では顔面が白く,翅胸は褐色が濃くなって前面の黒色斑が不鮮明になり,腹部があざやかな赤色になる。 ♀では腹部背面が橙褐色になる程度で,両者は著しく異色となる。しかし♀には腹部背面の一部が♂のように赤化するもの(赤化型,赤色型)がある。♀の両者出現頻度は地域によって一定でないが,赤化型は概して東北日本に多い傾向がみられ,釧路湿原の塘路湖畔では約40%におよんだ。

翅は♂ではほぼ無色透明で基部がごくわずか橙黄色をおびるが,まれに翅端がうっすらと淡褐色をおびる個体もある。♀には無斑の個体(無斑型,翅端斑消失型)と翅端に顕著な褐色帯が発現する個体(翅端紅型またはツマグロ型:forma fastigiata Selys)の2型がある。マユタテアカネの♀には上記のように体色と翅斑にそれぞれ2型ずつあって計4通りの組合わせが知られているが,それぞれの出現頻度はまだ調べられていない。

マユタテアカネによく似た,マイコアカネとヒメアカネとの違いについて,同書の検索表には次のように図示されていました。
マユタテアカネ

♂の尾部上付属器の「先端が反り返る」のは,[写真1]から確認できます。
♀の産卵弁が「円形の板状」なのは,[写真4]から(小さいですが)何とか確認できます。
翅胸部前面の「帯状紋が不明瞭」とは,「翅胸全面中央の黒い三角斑とこれをはさむ太い淡色条の境界がやや不鮮明」なことを指すのだと思いますが,[写真3]を見る限りでは,それほど不明瞭という感じがしません。