動物園の塀にトタテグモがいました。[写真5][写真6]
触肢が大きいため脚が10本あるように見えます。
何となくタランチュラに似ていますね。
それもそのはずで,アメリカやアフリカに生息する大形のトタテグモ類をタランチュラと呼んでいます。(タランチュラと呼ばれるクモには,数種類あるそうです)

それから1週間後,同じ場所に同種のクモがいました。
[写真3][写真4]が,2012年9月24日に見つけたもの。
[写真1][写真2]が,2012年10月1日に見つけたもの。

どちらもキシノウエトタテグモの雄だと思うのですが,微妙に違います。
[写真1][写真2]が成体で,[写真3][写真4]は幼体でしょうか。

2007年にも同じ場所でキシノウエトタテグモを観察しています。(→2007年10月2日
この時に見つけたのも,10月1日でした。
キシノウエトタテグモの雄は,今の時期に活動するようです。

小野展嗣著『日本産クモ類』(2010年)には,キシノウエトタテグモ属について,次のように書いてありました。

体長雌12~25mm,雄10~17mm。林床,崖地,人家や社寺の庭などの地中に管状の住居を造り,入り口に扉を付ける。東アジアから20種が知られる。日本産の種は互いに非常によく似ており,特に雌では分類がきわめて困難な群で,台湾や大陸の種も含めて再検討が必要である。

「日本産の種は互いに非常によく似ており,特に雌では分類がきわめて困難な群で,台湾や大陸の種も含めて再検討が必要である」と書いてあります。
「キシノウエトタテグモ」は,「オキナワトタテグモ」の亜種とする説が有力なようです。

同書,「オキナワトタテグモ」の解説中に,次のように書いてありました。

本属中,日本で最初に記載された種で,原記載はP.A.Holstによって1892年に沖縄島の本部半島近辺で採集された雄に基づく。Haupt&Shimojana (2001)は広範囲の標本を検討し,沖縄本島から本州に至る本類を同種とみなし,各地の個体群を亜種として,
クメトタテグモ Latoucha swinhoei kume Haupt&Shimojana,2001 (久米島),
トナキトタテグモ Latouchia Swinhoei tonaki Haupt&Shimojana,2001 (渡名喜島),
ケラマトタテグモ Latouchia swinhoei kerama Haupt&Shimojana,2001 (阿嘉島),
イゼナトタテグモ Latouchia swinhoei izena Haupt&Shimojana,2001 (伊是名島),
アマミトタテグモ Lalouchia swinhoei xena Haupt&shimojana,2001 (奄美大島,徳之島),
シロヤマトタテグモ Latouchia swinhoei crypta Haupt&Shimojana,2001 (鹿児島県,宮崎県)
および
キシノウエトタテグモ Latouchia swinhoei typica (Kishida, 1913) (本州)
として整理した。しかし亜種としての特異性の記載がなかったために, Platnick (2008)はこれらの新亜種を有効学名として認めていない。今後は再検討のうえ,亜種と認められる個体群については再記載することが望まれる。

キシノウエトタテグモは環境省の準絶滅危惧種に指定されています。
両個体とも,写真を撮った後,元に場所へ放しました。