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    [写真1]マガモの親子 (2013/3/22)
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    [写真2]マガモ♀ (2013/3/22)
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    [写真3]カルガモの親子 (2009/6/9)
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    [写真4]カルガモ♀ (2009/6/9)
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    [写真5]マガモ♀ (2012/3/25)
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    [写真6]マガモとカルガモの雛

動物園南の疏水にカモの親子がいました。[写真1]
カルガモだと思っていましたが,写真をみるとマガモのようです。
普段は穏やかな水面が,今の時期は疏水の水が激しく流れ込んでいて,水面が波立っています。
いつもいる水鳥たちも,姿が見えません。

[写真3]はカルガモの親子。(→2009年6月9日
カモのメスはどれも,全身が茶褐色の地味な似かよった羽色をしています。
生息場所の草地に似せた保護色になっているのでしょうか。

マガモ♀とカルガモ♀もよく似た羽色をしていますが,嘴の色で見分けることができます。
マガモ♀の嘴は橙色で上嘴の一部が黒くなっているのに対し,カルガモ♀の嘴は黒色で先が黄色です(さらに最先端はちょこんと黒くなっています)。
[写真2]マガモ♀と[写真4]カルガモ♀を見比べると,マガモ♀の頭部の方が黒っぽいですね。

[写真6]は,今回のマガモの雛とカルガモの雛を比べたもの。

(マガモの)雛の顔には,黒い過眼線の後方下に黒斑がある。カルガモの雛では,黒い過眼線の後方下に黒い線がある。

(『山渓ハンディ図鑑7 増補改訂新版 日本の野鳥』(2011年))
画像が荒くてはっきりしませんが,カルガモの雛の黒斑の方が細長いということのようです。

マガモをはじめ,多くのカモのオスは冬になると目立つ羽色に喚羽します。
その理由について,平凡社『日本動物大百科 第3巻 鳥類Ⅰ』(1996年)には,次のように書いてありました。

 このように,秋に冬羽への換羽を行なうのは,多くのカモの仲間で共通していて,それが繁殖習性と密接に結びついている。オスの方だけが目立つ羽色となっているのは,冬から春のあいだだけのもので,繁殖地に戻れば,全身の換羽をして,オスもメスと同じ地味な褐色の羽色となる。この羽色は保護色となっていて,捕食者から見つかりにくくするものである。では,オスは越冬地でなぜ目立つ羽色になるのだろうか。

 越冬地では,よく何種ものカモが同じ水辺ですごしている。オスの羽色は,そこで重要な役割をしている。すなわち,オスがその種特有の目立つ羽色をしているのは,メスが自分と同じ種のオスを,まちがいなくつがいの相手に選べるためのものだといわれている。

ここに書いてあるように,オスが目立つ羽色に変化するのはメスがオスの種を間違えないためならば,メスも繁殖期に種固有の目立つ羽色に変化すればよいように思います。
しかしそうすると,今度はメスが抱卵や子育て中に捕食者にねらわれやすくなる危険性が増えます。
やはりメスは繁殖期には,目立たない地味な体色をしている必要があるということですか。
でも,メスがみんな同じような羽色をしていれば,集団のなかでオスがメスの種を間違えるという危険性はありますよね。

一方で,カルガモのオスは繁殖期にもメスと同じような地味な羽色をしています。
どういう理由があるのでしょうか。
同書には,次のように書いてありました。

冬鳥として渡来するカモたちともっとも異なる点は,オスとメスが同じ羽色をしていることである。カルガモは,他種のカモがいない状態で繁殖するため,オスは目立つ羽色を必要としないのではないかという説明が考えられる。
 たしかに,大陸から離れた島に1種のみで定住するカモ類の場合には,もともと渡りをしてオスが特有の羽色をもっていた種に由来していても,雌雄同色となるから,オスの目立つ羽色がつがいの相手を選ぶのに役立つという仮説を裏づけている。しかしながら,カルガモの場合はつがい形成時に,他種のカモがいる場合もあり,オスが目立つ羽色をまったく必要としないわけではない。カルガモばかりでなく,低緯度の温帯から熱帯に定住するカモ類にはオスの羽色がメスに似る傾向があり,その理由はよくわかっていない。