水路にコサギがいました。
水の中を歩きながら,せわしなく石垣の隙間をのぞいています。
カメラを構えているとどんどん近付いてきて,私の横を通り過ぎてゆきました。
さすがにこちらを気にして,少し小走りになりましたが。

[写真1]~[写真5]は4月4日のもの。
目先が少し赤く色づいています。
[写真6]は9日後の4月13日に写したもの。
同じ個体だと思いますが,目先の赤みが増し虹彩の色が変化しています(普段のコサギの虹彩の色は黄色です)。

これは繁殖期に限ってあらわれる婚姻色といわれるものです。
『山渓ハンディ図鑑7 増補改訂新版 日本の野鳥』(2011年)によると,コサギの婚姻色について「虹彩は青みがあり,目先は赤くなる。足の指も赤みが出ている」とありました。
(この個体はまだ足の指の赤みはでていないようです。)

小学館『日本大百科全書』(1994年)には,「婚姻色」について次のように書いてありました。

動物において主として繁殖期に際だって現れる体色のこと。魚類,両生類,爬虫類などの色素胞によっておこる体色変化の場合に普通用いられる。特定の種の成熟した雄に現れることが普通で,雌に現れる場合でも顕著でないことが多い。

例として挙げられているのは,

アユ(魚類)の雄やウグイ(魚類)の雌雄では腹部が鮮赤色になり,アカハライモリ(両生類)の雄は尾の側面が紫色になり,二ホントカゲ(爬虫類)の雄は頬・のどから腹部にかけてが赤くなる。一度に多くの色彩が現れることもあり,繁殖期のヤリタナゴ(魚類)の雄は’背面が緑青色,腹部は最下部が黒色のほかは桃色,頬から胸びれ後方は紅色で,背びれと臀びれの先端部は赤色である。

鳥類はあげられていませんが,鳥ではサギ類が代表的なもののようです。
その他の鳥類の例としてはネットで探してもウ(カワウ,ウミウ),ベニスズメくらいしか見当たりませんでした。
カワウの婚姻色→2009年3月17日

「特定の種の成熟した雄に現れることが普通で,雌に現れる場合でも顕著でないことが多い」とありますが,サギ類の婚姻色は雌雄どちらにも同じように現れます。
また,繁殖期の鳥の雄には特別な飾り羽や羽軸を生やす種類が多いですが,サギ類では雌雄どちらも飾り羽が生えます。
コサギの体色は雌雄同色で,繁殖期の飾り羽,婚姻色も同じように現れるとなると,外見では雌雄の判別のしようがありませんね。