南禅寺の北隣にある野村美術館の前庭に,トサミズキの花が咲いていました。[写真1]
さすがに茶道を基本に収集している美術館だけあって,植えられている木々も茶花が中心です。

『朝日百科 植物の世界』(1997年)には,トサミズキについて,次のように書いてありました。

トサミズキは,その名のとおり土佐(現在の高知県)の蛇紋岩地にだけ自生する日本特産種である。高さ2~3メートルとあまり大きくならず,花が葉に先だって咲いて美しいことから,ウメなどとともに庭木として広く植えられているほか,盆栽や生け花の花材としても利用されている。

3~4月ころ,下垂する穂状花序に, 7 ~10個の両性花をつける。がく片は5枚で長さ約2ミリ,基部で合着して鐘形のがく筒をつくる。花弁は黄色で, 5枚あり,長さ約1センチ。雄しべは花弁と同数の5本あり,長さもほぼ同じで,短い仮雄しべと互生する。葯は暗紫色になる。

未熟な花では,暗紫色の葯の間から2本の雌しべが突き出ています。[写真3]

「短い仮雄しべ」があるはずなのですが,花の中をルーペでのぞき込んでも,どこにあるのかはっきりしません。
[写真4]は,花を真上から見たもの。
雌しべを取り巻くように,根もとに小さな突起が並んでいます。
これではないかと思うのですが。

[写真5]はがく,花弁,雄しべを取り外したもの。
[写真6]は,花を縦に切った断面です。