雨上がりの朝,大きなエノキの幹上で,2匹のカタツムリが寄り添っていました。[写真1][写真2]
交尾するのかなとしばらく見上げていたのですが,なかなか交尾は始まらず,観察を諦めました。
かわりに,近くにいたカタツムリを持って帰り,色々と調べてみました。

この辺りでよく見かけるクチベニマイマイです。
殻の口のふちが紅色になっているので「口紅」の名がついています。
関西地方に多い種類だそうです。

保育社『原色日本陸産貝類図鑑』(1995年)には,カタツムリの体のついて次のように書いてありました。

軟体の前端に1対の大(後)触角があり,その先端は球状で黒色の眼がある。触角のある部分は頭部で,その背面で触角の中ほどに,少し隆起するのを頭瘤という。交尾現象の時,これは著しく盛り上がる。頭の前下方に1対の小さい小触角がある。前触角とか味触角ともいう。頭を前方から見ると,小触角の間の中央で,二分した弁が垂れ下がったような大唇弁がある。その奥に小唇弁がある。これを開閉する。即ちロである。ガラス板にカタツムリをはわして,ガラス板を通して見ると,口中には褐色のものが見えたり,かくれたりする。これが顎板(がくばん)である。

[写真5]の,大きな触角と触角の間にある隆起が頭瘤(とうりゅう)です。
交尾現象の時,これは著しく盛り上が」ります。
[写真6]は,8年前に撮ったクチベニマイマイの頭瘤。(→2007年5月2日
トサカのように大きくなっていますね。

クチベニマイマイについては,次のように書いてありました。

殻は中形で,殻高20~24mm,殻径26~37mm,5 3/4~6 1/6層。淡い黄白色で光沢があり,ややうすい。螺塔は低い円錐形。色帯は0234型(山地に多い), 0034型, 0204型(ヒラマイマイ模様), 0000型(無帯), 0030型, 0004型, (1~3)0型など多くの型がある。周縁は円く,殻口は下降して斜位,ほとんど円形。唇縁は肥厚してひろがる。外唇は淡紅色,内部は紫紅色。臍孔は中ぐらいの大きさで開く。軟体の背部は白色で,両肩部は黒い縦条である。その上緑は顕著,下縁は次第に消失する(山地性の個体に多い)。稀に軟体の背面は白色である型,さらにその中央部に黒色の細い縦条がある型もある。関西地方に広く分布する。

マイマイ属の殻には,基本的に4つの色帯があります。
模式的に,体層の上部(上周縁帯)を「1」,肩の部分(周縁帯)を「2」,腹の部分(底帯)を「3」,底部(臍帯)を「4」で表します。
色帯がない箇所は「0」で表し,例えば[写真9]の場合は,第1帯が消失しているので「0234」と記します。
0234型はクチベニマイマイの典型的な模様のようで,0234型を「クチベニマイマイ模様」というそうです。

[写真13]は,同じ場所で採取した別のクチベニマイマイで,第2帯がほとんど消失しています。
[写真14]は,色帯がない0000型の個体です。(→2007年7月14日