歩道上を,ハチがフラフラと歩き回っていました。[写真1]
黄色と黒色のバイカラーは,一見スズメバチのなかまのように見えます。
しかし,スズメバチのなかまに,翅の先が黒くなっている種類はいなかったと思います。
スズメバチに擬態したスカシバガでしょうか。

持ち帰って,家でじっくり観察してみると,腰がキュッと細くなっています。
スカシバガではなく,これはハチですね。
図鑑で調べてみると,ヒメバチのなかまのようです。

翅の先の黒い斑紋,黒い腹部からクロハラヒメバチではないかと思いますが,はっきりわかりません。

北隆館『新訂 原色昆虫大図鑑 第3巻』(2008年)には,クロハラヒメバチについて次のように書いてありました。

体長27mm内外。♀。体赤黄~茶褐色。頭頂,中胸側・腹板は前縁と上縁部を除いて,後胸背・側板,前伸腹節,腹部第4~7背板は黒色。腹部第1~3背板の基部は黒色を帯びる。触角は下面で黄赤色,背面と末端部は黒褐色。脚は赤黄色。中・後脚の基節,後脚の転節の基部と腿節は黒色。中脚の基節の末端部と後脚の腿節の末端は赤黄色を帯びる。翅は淡黄色,末端に顕著な褐色の曇紋あり。小盾板は円錐形。腹部第1~4背板は点刻を欠くが無数の微細毛に覆われ,無光沢。色彩は変異に富み,種々の変種が記録されている。

・体長27mm内外
……[写真5]から測ってみると,体長は29mmでした。

・体赤黄~茶褐色。頭頂,中胸側・腹板は前縁と上縁部を除いて,後胸背・側板,前伸腹節,腹部第4~7背板は黒色。
……[写真7]

・腹部第1~3背板の基部は黒色を帯びる
……基部は黒色を帯びているとして,基部以外の腹部第1~3背板は何色かは明確に書いてありません。図鑑の写真では赤黄色をしています。この個体の第2,第3背板は黒色です[写真8]。ネットの写真を見ると,この個体と同じように黒色をしているものもあれば,図鑑どおりの赤黄色をしているものもあります。この個体はクロハラヒメバチではないのでしょうか。それとも「色彩は変異に富み,種々の変種が記録されている」とあるとおり,色彩のバリエーションの一つなのでしょうか。

・触角は下面で黄赤色,背面と末端部は黒褐色
……全体の姿に何か違和感があると思ったら,この個体は長く伸びているはずの触角が両方とも根元で切れています[写真11]。何があったのかわかりませんが,そのせいで地上をウロウロとしていたようです。

・脚は赤黄色。中・後脚の基節,後脚の転節の基部と腿節は黒色。中脚の基節の末端部と後脚の腿節の末端は赤黄色を帯びる。
……[写真3][写真6]

・翅は淡黄色,末端に顕著な褐色の曇紋あり。
……[写真9]

・小盾板は円錐形。
……[写真10]本当に円錐形をしていますね。

・腹部第1~4背板は点刻を欠くが無数の微細毛に覆われ,無光沢
……[写真8]を見ても,無数の微細毛に覆われいるかどうかはっきりしません。(現物は既にないので確認できませんでした)