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[写真1]2015/8/3
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[写真2]
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[写真3]洗浄前
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[写真4]洗浄後
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[写真5]腹端(洗浄前)
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[写真6]腹端(洗浄後)
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[写真7]触角
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[写真8]前脚
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[写真9]頭部
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[写真10]中脚
南禅寺参道の擬木に,ニイニイゼミの抜け殻がくっついていました。[写真1]
ニイニイゼミの抜け殻は,小さくて丸っこくて泥だらけなので,すぐにわかります。
アブラゼミやクマゼミの抜け殻に比べると,見かける数はかなり少ないです。
学研『日本産幼虫図鑑』(2005年)には,ニイニイゼミの幼虫について次のように書いてありました。
体は半球形で,光沢のない黄褐色。複眼,腹部腹面以外の体表は全体的に泥で覆われている。触角は8節からなり,第3節は第2節より長い。前脚腿節下面の歯列では,中歯が前歯列と後歯のほぼ中間にある。水分の多い土中に生息し,こねた泥を体で擦りつけて孔道の内壁に塗る。幼虫の動きはきわめて緩慢。幼虫期間は約3年といわれる(卵期間は約40日)。近年の乾燥化で減少する傾向にある。
体についている泥をとると[写真4]のようになります。
体表にはすこし艶があり,アブラゼミの抜け殻と同じような質感です。
「触角は8節からなり,第3節は第2節より長い」とありますが,[写真7]を見ると,触角は9節あります。
ネット上でみつけた,2014年の「神奈川県の都市近郊に産するセミ科6種における脱皮殻形態の数量解析」という論文には,次のように書いてありました。
泥が付着していることが多く,節数が判別しにくいニイニイゼの触角節数は,「8節」であるという報告(加藤,1931;林・石川,2005)がある一方,林(1991)で示されている図では,「9節」と読み取ることができるが,本研究では,双眼実体顕微鏡による観察において,ほぼすべての個体が9節であることが確認された。
一体これはどういうことでしょう。
ニイニイゼミのようなありふれた種の基本的な形態について,つい最近まで誤った知見が広まっていたとは。
セミの研究をする人はあまりいないのでしょうか。
セミの幼虫の雌雄は,腹端に産卵管があるかどうかで判定します。
もちろん産卵管がある方がメスです。
ニイニイゼミの抜け殻は腹端が泥に覆われているため,どちらか見分けがつきません。[写真5]
泥を取り除くと産卵管がありました。[写真6]
メスですね。
[写真8]は前脚。
極端に太くなった腿節,鋭い大きな歯,がっしりしたつくりは,いかにも強力な土掘りマシーンといった感じです。
腿節の中央にある歯が中歯で,「中歯が前歯列と後歯のほぼ中間にある」。
検索表では,中歯がやや前歯列寄りにあるのが「クロイワニイニイ」となっています。
ニイニイゼミの幼虫が,どうして泥まみれなのかという理由が書いてあります。
「水分の多い土中に生息し,こねた泥を体で擦りつけて孔道の内壁に塗る」
こねた泥を自分で体に擦りつけていたのですね。
そうするためには,生息する場所の土は水分を多く含んでいる必要があります。
近年,都市部でニイニイゼミが減少しているのは,土地の乾燥化が原因ではないかといわれています。